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健康・入浴法

【入浴】 「糖尿病」の入浴法② ~糖尿病患者の場合~

 

現在の糖尿病の治療方針は、糖尿病を治すことよりも血糖値をコントロールし、進展を抑制したり合併症の予防を目標としています。
 
糖尿病の合併症には網膜症、腎症、神経障害のいわゆる3大合併症の他、脱水やケトアシドーシス、免疫低下に伴う皮膚感染や尿路感染、それに動脈硬化による心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、下肢動脈硬化症など様々な症状に及びます。
 
これらは、高血糖により血管が傷つき血流が悪くなることが主な原因となっています。
 
入浴には、インスリンの作用を促進し、血流を改善する効果があるので、
 
・インスリンの効きが良くなる
・血圧が安定する
・動脈硬化の予防になる
 
といった影響が期待できます。
 
 
境界型糖尿病(予備軍)の場合は
 



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◆入浴上の問題リスト◆
 
 
#1 薬理作用に伴う低血糖により意識障害を生じる危険がある
#2 皮膚が乾燥し、感染症にかかりやすい
#3 血圧が高く、動脈硬化のリスクがある
#4 自律神経障害と水分不足により便秘を起こしている
 
入浴には糖尿病の進展や合併症の発症を予防すると共に、生活の質(QOL)を維持する役割があります。
ただし、糖尿病をコントロールするためには注意事項を理解し、現在抱えている問題に合わせた入浴法を実践する必要があります。
 
 
 
◆入浴法◆
 
 
<入浴上の問題>#1 薬理作用に伴う低血糖により意識障害を生じる危険がある
 
<入浴目標> 低血糖症状の出現しないタイミングに入浴する
 
 
インスリンは副交感神経の支配を受けています(ちなみにインスリンの分泌を促す要因は副交感神経だけでなくインクレチンという消化管ホルモンによる影響もある )
 
そのため40℃前後のぬるめのお湯に入浴すると副交感神経が働き、インスリンが分泌されやすくなります。

全身の血行も促進されるのでインスリンの効きも早くなる傾向にあります。

しかし、糖尿病患者の症状には個人差があり、いくら副交感神経が優位になってもインスリンの分泌が弱かったりインスリンの効きが悪かったりします(インスリン抵抗性)

なので薬物療法によって血糖値を下げるようにしているわけですが、ここで注意しなければならないのは入浴によって薬理作用を高めてしまうということです。

場合によっては薬が効き過ぎて低血糖を起こしてしまうことがあるので、その点においては注意が必要です。
恐いのは高血糖よりもむしろ低血糖です。
 
 
入浴中に低血糖症状が生じると、意識障害により転倒や風呂で溺れる事故を起こしかねません
 
 
一般的に血糖値が70mg/dL以下になると、ヒトの体はこれを低血糖状態と判断し、生体反応として交感神経を介して血糖値を上げるので血糖値はすぐに正常値に戻ります。
しかし糖尿病の人は低血糖になっても、血糖値を上昇させるホルモンの分泌力が低下しています。

そうなんです。糖尿病ではインスリンの分泌能力も低下していますが、血糖値上昇ホルモンの分泌能力も低下しているんです。
だから糖尿病とは血糖値を下げられない病気というより、正確には血糖値をコントロール出来ない病気だと言えるんです。

また高血糖の状態から急激に血糖値が下がった場合、それが70mg/dLを下回らなくても、その急激な落差によって低血糖症状を引き起こす危険性も高くなります。

このようなことからインスリン注射や血糖値を下げる薬を服用直後に入浴すると、血流が良くなって薬理作用が効きすぎて低血糖を誘発するため、服用直後の入浴はご遠慮下さい。
また、食前の入浴も危険です。特にインスリン注射やインスリンの分泌を促すスルホニル尿素薬(SU薬)などを服用した場合はすぐに食事をしないと低血糖を起こすくらいです。


ときに、「風呂に入ると逆に血糖値が上がる」という人がいます。

そのような人は熱いお風呂に入ってはいないでしょうか?熱い湯は血糖値を上げる要因となります。

例えば糖尿病の危険因子に「ストレス」があります。

ストレスの多い生活をしていると交感神経が過剰に働きます。
交感神経が活発化しているときは副交感神経の働きは抑えられています。
交感神経の支配を受けている血糖値上昇ホルモンが働き、副交感神経の支配を受けているインスリンの分泌は低下するので、 血糖値を下げることができなくなってしまうんです。

ストレスの多い人は糖尿病になりやすいのは、こうした理由によります。

 
そういう意味でもストレスを解消するためにリラックス効果を得るような入浴タイムにする必要があるんです。
 
 
 
<入浴上の問題>#2 皮膚が乾燥し、感染症にかかりやすい
 
<入浴目標> 感染の徴候を見逃さない
 
 
高血糖になると、自律神経のバランスが乱れて発汗が減少することによる皮膚の乾燥と、末梢の細い血管の血液の流れが悪くなる血流障害とによって、皮膚感染を起こしやすい状態になります。
 
皮膚の乾燥が感染症のリスクになる理由は、皮膚バリア機能が低下し、皮膚における有害菌の侵入を許しやすいことにあります。
末梢の血流障害が感染症のリスクになる理由は、酸素や栄養が十分に行き渡らず、感染した細胞において回復に時間がかかったり、免疫細胞や薬物の成分も届きにくい状態にあることが言えます。
 
また、高血糖状態になると、好中球(免疫細胞)の働きが低下すると言われています。
 
つまり糖尿病は、生体防機能が低下し、肺結核や尿路感染症、皮膚感染を生じやすい易感染状態になりますので、感染の徴候を見逃さないようにしなければなりません
 
皮膚の乾燥には特に入浴後の保湿ケアをしっかり行うことが重要で、入浴中においては角質を落とし過ぎないように気をつけなければなりません。
とりわけ、足の皮膚感染は潰瘍や壊死を生じる原因ともなるので、常に足を観察し、白癬、カンジダやタコ、うおの目などを発見した場合は医師に報告するようにしましょう。 
 
 
 
 

<入浴上の問題>#3 血圧が高く、動脈硬化のリスクがある
 
<入浴目標> 血行を促進し、血圧をコントロールする
 
 
糖尿病で気を付けなければいけないのは血糖値ばかりではありません。

その合併症の多さからも分かるように、常に合併症のことも意識しなければなりません。

合併症の中でも、特に注意しなければならない疾患のひとつに「脳梗塞」があります。
多くの場合は前触れもなく発症し、最悪死に至ることもあり、命は助かっても後遺症が残ることの多い恐ろしい疾患です。

問題は血圧です。

入浴でリラックスすると副交感神経を介して血管が拡張されますので血圧は安定します。

しかし熱いお湯は交感神経を刺激し、反対に血圧を上げてしまうので脳梗塞のリスクも高くなりますのでご注意下さい。

 
なお浴槽浴によって水圧がかかりますので、全身浴よりも半身浴をお勧めします。
 
 
また、糖尿病は動脈硬化になりやすく、脳梗塞含む脳卒中や心筋梗塞などの急性心疾患に注意しなければなりませんが、末梢血管においても同様に注意が必要です。

末梢血管はその細さのため、血糖にによって傷つきやすい傾向があります。
この場合の血管障害の多くは、血管内皮細胞が障害を受けることから始まると考えられています。

内皮細胞からは血管を弛緩させる一酸化窒素(NO)が放出されていることが知られており、NOの持つ血管拡張作用(降圧作用)が血管障害から守ってることになります。

そしてこのNOを作動させるのが副交感神経。というわけです。

よく「副交感神経は血管を拡張させる」といいますが、実は血管を支配しているのは交感神経だけであり副交感神経は直接血管に作用しません。
しかし副交感神経はNOを介して結果的には血管を拡張させる働きがあることには違いありません。

40℃のお湯に10分間の入浴でNOの産生が促進され、血管の拡張や血流の増加が認められている研究結果もあることから、入浴は末梢血管の障害を予防する効果も期待できます。


なお、糖尿病には
炭酸風呂に入浴する炭酸浴が有効です。

少なくとも糖尿病による合併症の末梢血管障害に対して効果を発揮すると考えられています。

血管拡張作用による血流改善もそうですが、炭酸浴には患部の組織に酸素の供給を促進する働きがあるため、血行障害の回復を早めるという報告があります。

自宅で炭酸浴をする場合は、一般的な浴槽(200リットル前後)のお湯に重曹を大さじ3杯、クエン酸を大さじ2杯入れて下さい。
これだけで炭酸風呂のできあがりです。



『【入浴】 家庭でできる「炭酸風呂」』 参照


ただし、水分補給は忘れずに行って下さい。

発汗により体内の水分が失われると血中の糖濃度が高くなるばかりでなく、血液粘度も高まり動脈硬化のリスクも高くなります。
 

 
<入浴上の問題>#4 自律神経障害と水分不足により便秘を起こしている
 
<入浴目標> 適切な水分摂取ができる
 
 
糖尿病になると、多量のブドウ糖を尿中に排泄するため脱水状態になりやすい傾向にあります。
 
水分が不足すると便秘になりやすくなりますが、糖尿病が便秘になりやすい理由はそれだけでなく、糖尿病により内臓の働きを整える自律神経の働きが低下するため、腸のぜんどう運動が鈍くなることも便秘の原因となります。
 
便秘に伴う排便時のいきみは血圧の急上昇を引き起こし、脳梗塞などの脳血管障害や目の網膜症といった合併症に及ぶことがあるため、便秘は合併症のリスクと考えられます。
 
便秘の症状があり、かつ著しい口渇感を生じている場合は、その原因が糖尿病と関係している可能性が強くなります。
 
入浴は特に体内の水分を失いやすいので脱水に気をつけましょう。

だからといって入浴をしないというのは違います。

入浴時にはしっかりと水分補給をして便秘の予防、改善に努めましょう

また、入浴により副交感神経を刺激することは腸のぜんどう運動を促進する働きがありますので、排便をコントロールするためにも入浴を有効に活用しましょう。
 
 
 

◆誤った入浴法


食後一時間以内に運動や入浴をすると、血糖値は抑えられるという話を耳にします。

これは入浴も汗をかくと、運動と同じようにエネルギーとして糖分が消費され、血糖値が抑えられるというわけです。。

しかし入浴は運動のような筋肉を動かすことによって消費される活動代謝とは違い、基礎代謝が活性化されるぐらいなので運動のような目立った変化は期待できないはずです。

 運動・・・筋肉を動かすのでブドウ糖の消費大
 入浴・・・せいぜい基礎代謝が活発化するだけ

ただ血糖値の上昇を抑えられるのは事実のようです。これはおそらく、入浴によって血液が体表面に集まり、代わりに胃腸の消化活動が低下しているために、食べた物がなかなかブドウ糖にまで分解されず、血糖値の上がり方が緩やかになっているのではないか?と考えることもできるのです。

つまりブドウ糖の吸収を緩やかにしていると・・・


では食後すぐの入浴は効果があるのか?

例えば糖尿病の治療薬にはインスリンとは関係なく、炭水化物が腸で消化吸収されるスピードを遅くし、血糖値の上昇を緩やかにするものがあります(炭水化物は吸収されるまでの過程でブドウ糖に分解される)

食後すぐの入浴は、それと同じように血糖値の上昇を緩やかにするかもしれません。

しかし薬は炭水化物のみをターゲットにしているのに対し、入浴による消化機能の低下は脂質やタンパク質も含めて消化不良を起こす可能性があります。
そこまでして血糖値の上昇を抑えるのはとても勧められたものではありません。

 薬 ・・・炭水化物の吸収のみ緩やかにする
 入浴・・・炭水化物以外の吸収も緩やかにする(単なる消化機能の低下)

なお、アルコールを飲んでの入浴は、糖尿病患者にとっては低血糖を招くリスクが非常に高くなります。

理由は肝臓がアルコールの代謝に働くため、グリコーゲンの分解がおろそかになって血糖値が上がらないために血糖値を下げる薬物療法が効きすぎる恐れがあるからです。そんな状態の時に入浴すればどうなるか。もう説明は不要でしょう。

というわけで飲酒後の入浴はやめましょう。



(最終更新日:2017/02/08)


 

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