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【入浴】 「熱中症(予防)」の入浴法 ~汗をかく習慣を身に付けよう~

夏の暑い時期の入浴はシャワーで済ますという人は多いのではないでしょうか。

確かにシャワー浴はさっぱりして気持ち良いし、浴槽浴のような入り方次第では入浴中にのぼせたり脱水を招いたりするといった熱中症のリスクがあるわけでもありません。

そういう意味ではシャワー浴には入浴中に熱中症になる心配はないでしょう。

しかし、熱中症にならないための身体作り(熱中症の予防)には浴槽浴の方が有効です。

その理由はヒトの体温調節機能と関係があります。

熱中症

 

◆体温調節機能◆

ヒトの体は熱を作る作用(熱産生)と熱を下げる作用(熱放散)によって体温が維持されています。
ふだんは平熱が保たれていますが、これは熱産生と熱放散のバランスがとれているということ。

ヒトには体温を調節する機能があって、暑い日や運動時に体温が上昇すると、熱放散により熱を体外へ逃がします。

体温は体温でも大事なのは深部体温。深部体温とは生命活動に重要な臓器などが多く集まる体幹部分(体の中心部)の体温のこと。

深部体温が上昇しすぎると危険なので、皮膚血管に血液を集めて発汗します。

この時のメカニズムはこうです。

交感神経が活発化 → 心拍数が増加(血流を増やすため) → 皮膚血管が拡張(※) → 血管の血液がろ過された水分は汗となる → 汗が蒸発する(気化熱)ことで体温を下げる

※交感神経は通常皮膚においては収縮に働くが、発汗に働く交感神経は皮膚血管を拡張させる。


■ 交感神経・・・ノルアドレナリンを放出
■ 副交感神経・・・アセチルコリンを放出

であるのが通常の自律神経ですが、体熱を下げるための発汗を司るエクリン汗腺を支配している交感神経は、一般の交感神経と異なり、ほとんどがアセチルコリンを放出するコリン作動性神経です。

■ エクリン汗腺支配交感神経・・・アセチルコリン放出

ですので、皮膚血管が拡張され発汗が促進されるというわけです。

汗は皮膚の汗腺という器官から出ますが、体のすべての汗腺から汗が出るわけではありません。通常機能している汗腺を「能動汗腺」といい、この能動汗腺が多いほど発汗による熱放散の能力が高くなります。

高齢者に熱中症が多いのは、能動汗腺が少ないために汗をあまりかかず、体内に熱が籠りやすいという理由が挙げられます。

ですから普段から汗をかく習慣を身につけることで能動汗腺の多い体にすることが、熱中症予防にも繋がると考えられています。

◆入浴法◆

まずは入浴前にも水分補給することが大事

発汗で失った水分の中には微量ながらナトリウムが含まれています。

ナトリウムは血液中に一定の濃度で保たれてる仕組みになっていますので、発汗で失った水分量だけナトリウムも排出しなければならないんですね。

ですので、入浴後に水分(水だけ)を摂取しても、体内のナトリウム濃度が薄くなってしまうためにそれほど飲めないようです。

例えば、発汗で失った水分量が300mlだった場合、入浴後に水分摂取しても300mlは飲めないものらしい(ナトリウムの血中濃度が薄まるから)

つまり、入浴後だけ水分摂取しても、発汗により失った水分を補給するには不十分だということになります。


さて。浴槽浴の湯温と時間ですが、これは40℃以下のぬるめの湯で5~10分が目安となります(暑い時期)

長湯は脱水の原因になるので気をつけましょう。長くても10分あれば汗はかけるはずです。

さらに炭酸ガス系の入浴剤を使用すると、お湯がぬるくても血行が促進されるのでおすすめです。

また、バスソルトにすると発汗が促されますから、汗をかきにくい体質の方は試してみると良いでしょう。


意外と落とし穴になるのは入浴後の過ごし方。

体温調節としての汗腺機能の役割は「汗が蒸発して気化熱で体温を調節するまで」が1セットです。

入浴後は体をタオルで軽く拭き(水分を完全に拭こうとしない)、ゆっくりと汗が蒸発して体温が下がるのを待ちます。

うちわで扇ぐぐらいは問題ありませんが、急に冷房の効いた部屋で体を冷やすと汗腺が閉じてしまい、せっかくの汗腺トレーニングが無駄になってしまいます。

なお、この汗をかく習慣作り(熱中症の予防)は夏本番を迎えてからでは遅く、最低でも梅雨の時期、できれば5月中から始める方が良いでしょう。少しずつ暑さに慣れていくこと(暑熱順化)が大事です。

残り湯は打ち水に使用するのもいいですね。


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