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2015年06月07日

【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(後編)

どうもSHIBAです。

インスリンの働きを良くすることで糖尿病の改善になることは言うまでもありませんが、
薬に頼らなくてもインスリンの分泌を促すことができたら・・・

その可能性があるのが腸内細菌たち。

インスリンの分泌を指令しているのはインクレチンという消化管ホルモンであり、
「GIP」と「GLP-1」の2種類のホルモンがあります。


『【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(前編)』 参照

その内、GLP-1にはGIP同様、すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促進する作用があり、
血糖値が低い時には働きかけないという特徴もあります。

さらにGLP-1には、胃の内容物排出速度を遅らせ、満腹感を助長することで食欲を抑制したり、食後の急峻な血糖上昇を抑制したりする作用もあるとか(ウィキペディアより)

ただ、なぜこのような下部の消化管から分泌されているのかが、かつては疑問視されていました。

そして近年の研究で明らかになったのは、腸内細菌たちが関与していたこと。

腸内細菌たちは我々と同様、生きています。

生きるために栄養を吸収し代謝をもしています。

腸内細菌にとっての栄養とは難消化性成分。

またこんな奥までは難消化性の栄養素ぐらいしか流れてきませんからね。

栄養素のほとんどは小腸で吸収されますから、下部消化管(回腸・大腸)まで流れてくるのは消化・吸収できなかった物に限られます。

腸内細菌の中でも善玉菌と呼ばれるバクテリアは、食物繊維やオリゴ糖、及び難消化性でんぷん(レジスタントスターチ、難消化性デキストリン)などを好みます。

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これら糖質由来の難消化性成分を総称してルミナコイドといいます。

『【健康】 食物繊維は誤解されすぎ!?本当の魅力』 参照


善玉菌は食物繊維などのルミナコイドをエサとして分解・吸収し代謝しているんですね。

この一連の働きを発酵といいますが、発酵によって乳酸や酢酸などの短鎖脂肪酸という有機酸を生成しています。

善玉菌によって生成された短鎖脂肪酸が、下部消化管(回腸・大腸)のL細胞と呼ばれる部分で受容し、
つまりこれがセンサーとなってGLP-1が分泌されることが分かっています。




・・・ということは。

毎日の食事で食物繊維をしっかりと摂ることで、善玉菌たちがGLP-1を分泌してインスリンを活性化させることに繋がるのでは?という期待が当然出てくるわけで、ここが注目されている所以となっております。

じゃあ消化できないものを食べれば良いのかというと何でも良いわけではありません。

腸内細菌は善玉菌ばかりではありませんからね。

糖質(炭水化物)の消化できなかったもの(食物繊維など)は善玉菌のエサに。

肉などのたんぱく質や脂質の消化できなかったものは悪玉菌のエサに。


悪玉菌が優位になると発がん成分が活性化されるというので気を付けたいところです。


今考えると、この腸内細菌たちは、我々の栄養を横取りすることなく、消化できなかったカス、
つまりおこぼれを頂戴していてるのかと思うと、何だか可愛い奴に思えてきました。

しかもインスリンの分泌を促進して血糖値の抑制に一役買っているわけですから、
なんとも愛おしい存在ですね。


(そういえば昔はインスリンのことインシュリンと呼んでたなぁ SHIBA)

【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(前編)

どうもSHIBAです。

最近の研究で、腸内細菌たちがインスリン分泌を促すことに関与しているとして注目を集めています。

インスリンは言うまでもなく、血糖値を下げるホルモンのこと。

糖尿病の主な原因は、インスリンの働きが弱くなることなので、
腸内細菌たちがインスリンの分泌を促進するのであれば糖尿病治療に役立つ可能性が出てきます。

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ではなぜ腸内細菌がインスリンと関係あるのか。

それを知るにはインスリンのことを知らなければなりません。

インスリンはすい臓から分泌されますが、別名「肥満ホルモン」と呼ばれています。

血糖値が上がるとインスリンにより肝臓や筋肉の細胞に血糖を取り込ませて血糖値を下げてくれます。

しかし、肝臓や筋肉の細胞に貯められる糖質(グリコーゲン)の量には限りがあります。

過剰に摂取してしまった場合、必要以上の余分な糖質は脂肪細胞に蓄えられ中性脂肪となります

これが肥満ホルモンと呼ばれる理由です。

健常者にとってみれば有難迷惑なホルモンですが、このホルモンの働きがなければ糖尿病になってしまうのがやっかいなところ。


さて、そんなインスリンに分泌を促しているものとは何なのか。

つまりインスリンに指令を出している黒幕。

これが研究され明らかになってきたことが、今回のテーマ。


口から摂取した食べ物に含まれる糖質は、小腸で吸収されますよね。

小腸で吸収された糖質は門脈(血管)から肝臓へ送られ、さらに肝臓から全身へ流れます。

この時、血管を流れるブドウ糖が増え(血糖値上昇)、各細胞に取り込まなければ血糖は高いままになりますよね。

そこでインスリンが分泌されるわけですが、実は血糖値が上がってから分泌されているわけではありませんでした。


これは、ブドウ糖を経口投与した場合と、静脈へ注射した場合と、どちらがインスリンの分泌が多いか調べた研究により明らかにされました。

一見すると、静脈へ注射した場合の方が、直接血糖値を上げるのだからインスリンが多く分泌しそうなものですが、実は逆で、口から飲んだ場合の方がインスリンの分泌が多かったんですね。

ということで、

ブドウ糖が小腸で吸収され血糖値を上げる前から、何者かがすい臓にインスリンの分泌命令を出しているのでないか?という推測がなされました。

そこで研究により発見された「すい臓へ指令を出している正体」が「インクレチン」という消化管ホルモン。


もともとインスリンの分泌は血管を流れるブドウ糖であるとされていたが、この研究により消化管にも分泌刺激を行う能力があることが分かったわけです。

インクレチンは食後数分~15分後ほどで作用するため、血糖に対して素早い対応ができるというわけです。

現在はこのインクレチンが、インスリンを分泌するための薬として利用されています。


さて・・・

インクレチンには「GIP」と「GLP-1」があります。


GIPは食事によって流入した栄養素を小腸の上部(十二指腸)で直接感知して、ブドウ糖の存在下にインスリンを出させる作用があります。

「ブドウ糖の存在下に」という妙な表現になっているのは、血糖値が低くなると作用しなくなるためで、
低血糖を起こさない優れたホルモンだということになります。


一方、GLP-1は下部の消化管(回腸・大腸)から分泌されているといわれています。

しかし、かつてはここで学者の間でも疑問とされていた謎がありました。

食事で摂取した栄養素の多くは下部の消化管まで流れてくる間に吸収されてしまうはず。

ブドウ糖がここまで到達するわけがない、と考えられてきたわけです。


そして最近の研究によって明らかにされたその謎の鍵を握っていたのが


僕たちと共存している腸内細菌たちでした。


・・・つづく

『【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(後編)』 


(なんだかドラマっぽくなってしまったぞ SHIBA)