【健康】 糖尿病最新事情(後編) 運動が糖尿病改善に有効なワケ
どうもSHIBAです。
繰り返しになりますが、糖尿びょとは肥満や運動不足など何らかの原因でインスリンの働きが弱くなり、血糖を肝臓や筋肉などの細胞に取り込めなくなり慢性的に血糖値が高くなる状態のこと。
『【健康】 糖尿病最新事情(前編) がん細胞の増殖も合併症?』 参照
エネルギー源を必要とする身体の各細胞にブドウ糖(血糖)が取り込められなくなると、
上手く代謝が行われないので、だるくなったり疲れやすくなります。
しかし、そうは言っても人は生きていくためにはエネルギーを消費して活動しなければなりません。
別に運動しなくても基礎代謝は常に行われています。
そこで、ブドウ糖に変わるエネルギーを作り出すための原料となるのが、「脂肪」や「タンパク質」です。
糖尿病になると、インスリンが働かず、ブドウ糖がエネルギー源として使えなくなるので、次第に脂肪細胞も筋肉も分解して利用され、その結果として痩せていきます。
肥満になると糖尿病になりやすくなり、糖尿病になると痩せていくのはこういう理由によります。
さて、
生活習慣で改善するには食事と運動が基本となるのは言うまでもありません。
食事に関してはカロリーを抑えたり、よく噛むこと、それから食べる順番に気を使うだけでも効果がありますが、
最近の研究ではインスリンの分泌には腸内細菌の活躍による影響が大きいことが分かっています。
腸内細菌でもとりわけ善玉菌には食物繊維などをエサとし、発酵することでインスリンの分泌を促進する作用があることが知られています。
『【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(前編)』 参照
『【健康】 インスリン分泌を促す腸内細菌たち(後編)』 参照
・・・が、しかし!
インスリンの分泌を促進するだけでは不十分な場合があります。
それは同じ糖尿病でも、インスリンが働かない理由として「インスリンの分泌が弱い」場合だけではなく「インスリンの効きが悪い」場合もがあるからです
血中を流れるインスリンが、ブドウ糖を必要とする細胞のインスリン受容体と結合することでブドウ糖が摂り込まれます(血糖値が下がる)
効きが悪いということは「インスリンとインスリン受容体が上手く結合できない」という意味になります。
つまりインスリンの分泌量が足りていても作用しないので血糖値は下がりません。
そこで重要になってくるのが「運動」です。
運動により積極的にブドウ糖をエネルギー源として消費してしまおうというわけです。
しかし、冒頭に書いたように、エネルギー源としてブドウ糖が利用できないのが糖尿病なので、
運動をしても「脂肪」と「タンパク質」ばかり消費するのではないか?
という疑問があるかもしれません。
確かにね、インスリンが働いているのであれば筋肉をつけて基礎代謝力を上げるという意味で予防になるのは理解できるが、インスリンが働かないんじゃあ・・・
分かる分かる、その気持ち。僕も最初はそう思っていました。
でも実際は運動をすることで筋肉が減ってしまう…なんてことはありません。
ちゃんと筋肉がつきます。
実は!
筋肉にはインスリンとは関係なく、糖の調節機能があるんです。
筋肉には「AMPキナーゼ」という酵素が存在していて、
この酵素が活性化されることによりブドウ糖の取り込みが行われることが分かっております。
このように、運動によるAMPキナーゼ活性化のブドウ糖取り込みは、インスリンの働きに依存しません。
なのでインスリンの効きが悪い状況下においては運動が血糖を下げる有効な手段となるんですね。
現在、糖尿病の治療薬メトホルミンはAMPキナーゼを活性化し、血糖降下作用を発揮しています。
糖尿病の改善に遅すぎるということはない・・・ということですね。
(ときどき運動不必要説を見かけるけど全く納得できない SHIBA)
【健康】 糖尿病最新事情(前編) がん細胞の増殖も合併症?
どうもSHIBAです。
糖尿病の何が怖いって、その合併症の多さですよね。
血糖が毛細血管を傷つけることでおきる障害として網膜症。最悪失明することも。
それから腎不全含む腎症。しびれや傷みを伴う神経障害などがあります。
また動脈硬化が冠動脈で進めば心筋梗塞や狭心症、
脳血管で進めば脳梗塞などの脳卒中やそれに伴う認知症へと発展します。
足の血管が詰まれば壊疽(えそ)を患うことも。
とにかく、合併症の多さが糖尿病の特徴です。
そして、近年の調査では、
糖尿病によりがん発症のリスクが高まるという事実が確認されてきています。
糖尿病のある人はそうでない人と比べ、がんのリスクは1.2倍上がるらしく、
とりわけ大腸がん、すい臓がん、肝臓がん、腎臓がん、胃がん・・・て消化器系はおしなべて顕著かな?
厚労省によれば、今のところはまだ合併症のリストにがんはありませんが、
そのうち加わるかもしれませんね。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/tounyou/result.html
厚生労働省:糖尿病を放っておくとどうなるんだ?
がんが現時点で合併症として扱われていないのは、
糖尿病との因果関係が科学的に解明されていないからかもしれません。
しかし、調査の結果からは関係があることははっきりしているので無視はできません。
実際に僕の父親も糖尿病でありながらがんを発症しているので個人的にも関心の高い問題です。
さて、がんとの関係が科学的に解明されていないといっても、インスリンが関与している可能性が高いことは示唆されています。
インスリンとは血糖値が一定値以上に上昇しないように調節するためにすい臓から分泌されるホルモンのこと。
肥満や運動不足など何らかの原因でインスリンの作用が弱くなり、血糖を肝臓や筋肉などの細胞に取り込めなくなり慢性的に血糖値が高くなる状態が糖尿病なわけですが。
通常、糖尿病になる前に「高インスリン血症」の状態になります。
あ、今さらですが、ここで言う糖尿病とは2型の話ですよ。当たり前ですが。
肥満になるとインスリンの働きが低下するので、体はそれを補うためにインスリンの分泌量を増やして血糖値を下げようとします。
肥満になるとインスリンの働きが悪くなるのは、肥満細胞から分泌されているアディポサイトカインのため。
アディポサイトカインには善玉と悪玉があり、善玉の「アディポネクチン」はインスリンの働きを高め、悪玉の「TNAα」は逆にインスリンの働きを阻害します。
『【健康】 メタボと生活習慣病と動脈硬化の関係 ~内臓脂肪が溜まると怖い本当の理由~ 』 参照
肥満になると、つまり脂肪細胞が肥大すると善玉のアディポネクチンの分泌が減り、悪玉のTNAαの分泌が優位になるため、それでインスリンの効きが弱くなるんですね。
インスリンの効きが悪くなるというのは、単にインスリンの量が減るという意味ではありません。
ブドウ糖を必要とする細胞にはブドウ糖を取り込むための扉を持っています。
でも自力で血糖を取り込めるわけではなくて、インスリンの働きが必要になるわけですが、細胞にはインスリン受容体があって、インスリンがこのインスリン受容体と結合することでブドウ糖を取り込む扉が開くわけです。
インスリンの効きが悪くなるというのは、インスリンの量が足りていても上手くインスリン受容体を刺激できないために細胞にブドウ糖を取り込めないということなんです。
そのため体は血糖値を下げるために、更なるインスリンの分泌をします。
肥満になると高インスリン血症になりやすいのはそのためです。
で、
インスリンとがんと何の関係があるのか?というと。
インスリンとよく似た構造をしている物質に「IGFー1」と呼ばれるというものがあります。
これは、成長ホルモンの刺激にともなって肝臓から分泌される物質で、
筋肉や骨、内臓、神経など人体の多くの器官で細胞が成長するために必要不可欠なものなんですが。
困ったことにがん細胞の増殖をも促進しちゃうんですね。
しかも、
IGF-1受容体もまたインスリン受容体によく似た構造のタンパク質なので、
インスリンは間違ってIGF-1受容体に結合したりするからさあ大変。
なんと、過剰に分泌されたインスリンが次々と誤ってIGF-1受容体と結合してしまい、
がんの増殖を促進してしまうことに・・・
なんていう研究報告も出てきています。
高インスリン血症が続くと、インスリンを分泌しているすい臓は疲弊し、やがてほとんど分泌しなくなり、慢性的に血糖値が高い糖尿病となります。
正式に糖尿病になり、インスリンが殆ど分泌されないのであればIGF-1受容体を刺激することも減り、がん細胞の活性化は治まるのではないか?
と思いたくもなりますが、
がん細胞は、糖尿病によって溢れているブドウ糖を栄養にして大量に取り込むので結果的に増殖を続けるという。
なんともやっかいな存在です。
だからこそ、肥満改善のため、また血糖値を下げるために「運動」は有効な手段としてよく取り上げられます。
運動によるエネルギー消費には、そのエネルギー源としてブドウ糖を消費するので当然ですよね。
でも勘の良い人はこう気付く人もいるかもしれません。
「肥満の予防や糖尿病の予防という意味なら分かるが、すでに糖尿病になってしまっている場合には、インスリンが働かないわけだからいくら運動をしたって血糖値は下がらないのでは?」と。
確かに。ブドウ糖が細胞に取り込めなくては血糖値は下がりませんからね。
でもご安心ください。
運動によってブドウ糖が取り込める別の方法があるんです。
・・・つづく
『【健康】 糖尿病最新事情(後編) 運動が糖尿病改善に有効なワケ』
(インスリンを制する者、糖尿病を制す SHIBA)