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2016年01月19日

【なるほど漢方】 漢方薬と生薬の違い


「漢方薬」と「生薬」は同じようなものだと思われるかもしれません。
 
ところが実際は別物。
 
いくつかの「生薬」を組み合わせたものが「漢方薬」です。
 
料理名と食材の関係をイメージすると分かりやすいかも。料理名が漢方薬でその材料となるのが生薬というふうに。
 
麻黄湯(まおうとう)を例に挙げれば、構成している生薬は麻黄(まおう)・甘草(かんぞう)・杏仁(きょうにん)・桂皮(けいひ)の4種類があり、それぞれには役割があります(生薬が甘草のみの甘草湯のような単一成分の漢方薬もある)

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ただ、生薬は料理の食材と違ってあらかじめ加工されています。
 
薬効を持つ薬草などが「生薬」になりますが、そのまま直接薬になるわけではなく、乾燥させたり加熱したりすり潰したりして薬効成分を凝縮させてはじめて生薬となります。
 
生薬によっては同じ性質や薬効を持っているものがあり、それらを組み合わせることで効果を増強出来たり、逆に異なっているものを組み合わせれば抑制し合っったり欠点を補い合ったりします。
 
どのような組み合わせが最大限に効果を引き出し、また副作用を抑えられるか。長年に渡って試行錯誤し、築き上げられた組み合わせによって今の漢方薬があるという歴史があります
 
漢方薬の魅力は、この長い歴史が作り上げた絶妙な配合にあるといっても過言ではありません。

 
症状に対してピンポイントで効くのが西洋の薬。しかし、同じ薬効のある薬を併用すると効き過ぎて危険だったり、副作用に対処するため別の薬を併用したりしなければならないことがあります。
漢方薬では最初からそうならないように、いくつかの生薬がバランスよく配合されている点で違いがあります。
(ただし漢方薬には副作用がないわけではありません)
 
 
 
また、漢方薬は使われる生薬の種類は同じでも、分量が変わると違う漢方薬になることもあります
 
例えば桂枝湯(けいしとう)という漢方薬があります。メイン成分の桂枝が体を温める作用があり、体の弱い人のかぜ薬として用いられています。
その成分は、
 
【桂枝湯】
 桂枝4.0g
 芍薬4.0g
 大棗4.0g
 甘草2.0g
 生姜1.0g
 
ところが、この中の芍薬の量を2g増やしただけで、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)という胃腸薬になってしまうから面白い。
 
【桂枝芍薬湯】
 桂枝4.0g
 芍薬6.0g
 大棗4.0g
 甘草2.0g
 生姜1.0g
 
芍薬の持つ便秘や下痢などの腸の具合を整える作用が主体の胃腸薬という全く別の作用の薬となってしまうんですね。
 

まさに配合の妙ですね。
 

【なるほど漢方】 漢方と西洋医学、どちらが優秀なのか


漢方と西洋医学、どちらが優秀なのか気になったことはありませんか?
 
薬局やドラッグストアでは一般の市販薬と一緒に漢方薬も販売されています。
 
例えば風邪気味の場合、総合感冒薬と葛根湯、どちらを買おうか迷ったことがあるかもしれません。
 

ただ、一般的には町医者や病院は西洋医学に基づいて診察・治療を行っていますからね。
 
西洋医学は科学的、漢方は非科学的。だから西洋医学の方が信用できるというのが普通でしょうか。
 
ところが一概にそうとも言えないというのが現実のようです。
 
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西洋医学と漢方医学の診断法の比較で、おそらくここが大きく違うだろうと思われるのが「病名」にもとづいているか否かではないでしょうか。
 
西洋医学ではまず診察や検査をして病名を特定します。
血液検査や画像検査などのデータや数値をもとに病名を治すというのが西洋医学の特徴です。
 
漢方医学では病名ではなく、患者の「証」にもとづき治療します。
「証」とは患者の身体にあらわれている症状のこと。

 
例えばある患者の主訴が「胃が痛い」だったとします。
 
西洋医学では診察や検査によって、その病名が「胃炎」だということが判明すれば、炎症を抑える治療をおこなうことになりますよね。
 
ところが漢方医学では、胃だけでなく体全体の変化を診て判断します。その原因が仕事や人間関係などのストレスにあると判断すれば、元気の出る薬や胃腸が弱くなった体質を改善するための薬を処方することになるでしょう。
 
これは漢方に限らず東洋医学全般にいえる特徴で、人間の身体を構成する要素の全ては関連し合うという整体観念という考え方です。
 

それから西洋医学では、科学で説明できないものは苦手で診断が下せない場合があります。
 
しかし漢方医学では、科学では説明はつかないことでも「こういう場合はこうすれば良い」というのが長い歴史から経験則で分かっていて、まるで先人の知恵みたいなところがあります。
 

ひとつ面白い例を紹介しましょう。
 
風邪をこじらせたときに発熱する場合がありますよね。
 
こんな時、かつては決まって解熱作用のある薬を飲んだりしたものですが、今では「簡単には熱を下げない方が良い」というのが常識です。
 
これは免疫細胞がウイルスと闘うために、敢えて体温を上げているということが分かったため。
 
「体温が1℃下がると免疫力が30%下がる」と言われているように、免疫力が低下しないために自分に有利な環境を作る行為が発熱というわけです。
 
でもこれ。西洋医学ではずっと勘違いしていた事実があるという。
 

テレビでもおなじみの丁宗鐵(ていむねてつ)先生の著書に、こういう記述があります。
 
「西洋医学ではここを長らく誤認していた。ウイルスの感染で熱が出るんだから熱を下げればウイルス感染の一部は治まったことになるんだという誤認です。
漢方はそうではなくて、発熱反応を見ていると元気な人ほどひどい。年寄りはあんまり発熱反応がない。ここに注目した。昔はウイルスの存在が分かっていないから病邪とよびましたが、この病邪と体が闘っている、その闘いの度合いをあらわしているのが熱なんだと、だからそれを下げてはいけないと」(『丁先生、漢方って、おもしろいです。』丁宗鐵 著より)


 
どうです?
漢方の世界ではウイルスの存在や免疫のメカニズムを知っていたわけではないけれど、発熱は体調が回復するための現象だということが経験則で分かっていたということです。
 
だから風邪のひき始めに漢方薬(葛根湯など)を飲むと、熱が下がるどころか逆に熱が上がってしまって。何も知らない人だったらビックリするかもしれませんね。
でもこれ、もうお分かりかと思いますが、漢方薬では敢えて熱を上げて免疫力を高め、回復を早めるという狙いがあるわけで・・・
 

現在、医師が処方する薬でも、直接患部を治すための治療薬は西洋医学に基づいた薬を処方し、なおかつ副作用対策や体質改善に漢方薬を併せて処方する場合が増えてきているそうです。
 
西洋と漢方の薬。どちらが優秀かということを考えるより、お互いの良いところを組み合わせて使うのが理想的なのかもしれません。