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2016年03月05日

【なるほど漢方】 漢方薬「葛根湯」 ~肩こりにも葛根湯~


風邪といえば葛根湯。と言われるほどの漢方薬「葛根湯」

風邪は風邪でも、悪寒、頭痛、肩から首筋のこり、関節痛などがあり、発熱はしても汗をかいていない初期症状の時に用いられます。

そして、かぜの初期症状なら誰でも効くかといえばそうでもなくて、体力が比較的ある人に向いています。
胃腸虚弱者に用いると稀に嘔心・食欲不振をきたすことがあるそうで、虚弱体質な人には葛根湯から麻黄と葛根を外した桂枝湯が用いられます。

桂枝湯にも血流を良くする作用がありますが、葛根湯に含まれる麻黄には、より血行を盛んにし発汗させる力が強い特徴があります。
なので、インフルエンザをふくむ重いかぜ症状には葛根湯よりも麻黄が主薬となっている麻黄湯が用いられます。

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葛根湯がかぜに効く理由


かぜをひいた時、西洋の薬(市販薬含む)では総合感冒薬をはじめ発熱には消炎解熱鎮痛薬、せきには咳止めなどいくつかの種類の薬を症状に合わせて使い分けしますが、かぜの原因となるウイルスや細菌などの病原体が体内にいる限り治りません

西洋の薬はいずれもかぜによる症状を緩和する薬であって治療薬ではありません。
病原体を退治するのは、あくまでも本来持っている体の免疫力

かぜをひいた時に体が発熱するのは、病原体が熱に弱く免疫細胞は熱に強い特性があるからです。
発熱は免疫細胞にとって有利な環境にして病原体を退治しようとする防御反応なんですね。


葛根湯も直接病原体を殺菌するわけではありませんが、葛根湯には血行を促進して熱を作り免疫力を高める作用があるので、一時的には発汗により悪化したように思えますが、結果的には早く治癒して回復します。

これは葛根湯に限らず、漢方薬には自己免疫力・自己治癒力を高める作用があります。
一時的に症状が悪くなったような現象は瞑眩(めんげん)作用といって、好転反応であり副作用とは違います。

また、葛根湯の作用機序が血行を促進させることにあるので、肩こりをはじめ、主に上半身の各症状、例えば神経痛頭痛炎症の類(結膜炎,角膜炎,中耳炎,蓄膿症,鼻炎等 )を軽減させる効果もあります。
この場合は悪寒や発熱などの所見がみられる必要はありません。

とりわけ肩こりへの効果は有名です。


肩こりにも葛根湯


肩こりはストレスやかぜが原因で肩の筋肉(僧帽筋など)が緊張し、血流が悪くなって痛みを感じる症状です。

ですから、痛み止め(消炎解熱鎮痛剤)で痛みを抑えても一時的な緩和に過ぎません。
肩こりを根本的に改善するには血流を良くする必要があり、そこに葛根湯が有効とされている理由があります

また葛根湯の葛根には肩から首筋の緊張を解く作用もあるそうです(作用機序は分からない)

なお、肩こりには別に薬に頼らなくても入浴でも血行促進はできます。

『【健康】 「肩こり」には痛み止め(消炎解熱鎮痛剤)よりも入浴の方が効く理由』 参照


ただし、肩の血流が回復する過程で、同時に痛みを感じる場合があります。
基本的に肩こりを感じる時は「肩の筋肉が痛い」と感じる時で、その痛みはプロスタグランジンという物質によるものです。

肩の筋肉が緊張して血流が悪くなると筋肉の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなります。
この状態が続くと体に悪影響を及ぼしますので、免疫細胞からサイトカインという指令が出てプロスタグランジンが発生します。
このプロスタグランジンは血管を拡張して血行を促進し、熱を作り免疫力を高めますが、痛みの感受性をも高めます

そのため、入浴により肩の血流が改善されると同時に、より肩こりを感じやすくなりますが、これは瞑眩作用であり、回復を早めるための好転反応なのでなんら心配は必要ありません。

そういう意味では入浴よりも葛根湯の方が効果があるかも

葛根湯にはプロスタグランジンの合成を阻害する生姜(ショウキョウ)が含まれているからです。
その一方で葛根湯に含まれる芍薬(シャクヤク)が血行を促進させ、桂皮・麻黄には発汗作用があります。
加えて主薬の葛根には肩から首筋の緊張を解く作用がある。

これらの作用が一体となったのが葛根湯で、プロスタグランジンの助けを借りることなく、つまり痛みを増強させることなく血行を促進して肩こりをとるわけです。

これからは「肩こりにも葛根湯」ですね。


なお、葛根湯にはドリンクタイプの物が普及しています。

これを冷蔵庫で冷やして飲む人は多いかもしれませんが、葛根湯の作用が体を温めることにあると知っていれば、冷蔵庫で冷やすのは間違っていると理解できますね。
保存は冷蔵庫でも使用する場合は早めに冷蔵庫から出しておきましょう。