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2016年05月15日

【入浴】 免疫力を高める入浴法(後編)


深部体温を上げると免疫力は高くなる。

深部体温を効率よく上げるには熱い温度よりもぬるめの温度の方が良い。

それは副交感神経を刺激することで一酸化窒素(NO)が産生され、血管が拡張し血流が良くなるためである。

熱い温度は皮膚表面(表面体温)は明らかな上昇を示すが、 交感神経を刺激して血管が収縮されるので血流が悪くなるために深部体温まで同じように上昇するわけではない。

仮に同じように深部体温も上昇したとしても、交感神経が優位すぎる状態では免疫力は高まらない。

という話を前回しました。

『【入浴】 免疫力を高める入浴法(中編) 』 参照


ただし、敢えて熱めの温度に浸かることで免疫力を高める入浴法も存在します。

それはHSP(ヒートショックプロテイン)入浴法

HSPとは、傷ついた細胞を修復するタンパク質で、ストレスを受けると産生され、免疫力も高まると言われています。

どんなストレスでもHSPは産生されますが、その名のとおり温熱による刺激が一番増加するらしいです。

「あれ?ストレスは免疫力を低下させるんじゃないの?」と思ったアナタ。

いい質問ですねぇ~。

ストレスは溜め込むと体に悪いものですが、適度なストレスはむしろ必要なものなんですよ。

『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑨ストレスは敵か? 』 参照


HSPの効果を得るには、体温を2℃上げるとHSPは産生されるらしいので、平熱が36度台だとすると38度台まで体温を上げる必要があります。

一般的には

40℃のお湯で20分間
41℃のお湯で15分間
42℃のお湯で10分間


で体温が2℃上がると言われています(炭酸系の入浴剤を使用すれば時間は短縮できる


ただし、気をつけなければいけないのは、HSP入浴法は危険を伴うこと。

40℃ならともかく、42℃のお湯は確実に交感神経を刺激しますので、 心拍数の増加や血圧の上昇を伴います。
心臓や動脈硬化に心配がある人にはとても勧められたものではありません。

また、疲れやストレスが溜まっている状態のときにHSP入浴をすると、
ただでさえ交感神経が優位すぎるところへさらに交感神経を刺激する行為となり、これでは自律神経のバランスを崩すことになります。

疲れやストレスが溜まっているときは、ぬるめのお湯でリラックスする方が効果的です。

HSP入浴法は休みの日とか良いかもしれませんね。
こんなの毎日するとかえって健康に良くないですよ。事実、HSP入浴法は4日に一度で良いと言われています(効果は3日持続する)



質の高い睡眠に繋げる


さて、入浴には質の高い睡眠に繋げることができるという効果もあります。

睡眠は自律神経を整えるのに大切な要素。

ヒトは体温が少し下がっている過程で眠くなる習性があります。
ヒトは体温が下がっていくと代謝も下がるため、エネルギーを調節しようと眠くなるんですね。

だから入浴で一度体温を上げることはとても有効です。
一度体温を上げないと下がる過程をなかなか得られないの眠くなりにくい(そのため冷え性の人は寝付きが悪い)


さて、ここで思い出して欲しいのが38℃のお湯で入浴した場合の体温の変化。

2016514162725.jpegのサムネイル画像


入浴時間が5分間と15分間のどちらの場合でも、出浴直後よりも出浴30分後の方が体温は上昇していますよね。
これは一般的にぬるいと言われる38℃のお湯でも湯冷めをしなければ体温は下がらないことを意味しますが、
そのため逆に「体温が下がる過程を得る」ことが難しそうです。

38℃のお湯は副交感神経に働きリラックス効果を得ることはできますが、入眠効果は弱いということになります。



40℃のお湯で15分間(入浴剤使用)がベスト?


では一体、免疫力を高める入浴法は何か?そろそろ答えを決めましょう。

ポイントは

 ●深部体温を上げる
 ●副交感神経を刺激して自律神経のバランスを整える
 ●HSP効果を得る
 ●体温が下がる過程を得る


これら条件を全てクリアするのはズバリ

炭酸系の入浴剤を使用した40℃のお湯に15分間入浴すること。


実は以前に紹介した研究のデータによると、
40℃のお湯に15分間入浴した場合、出浴直後で1.40℃、出浴30分後で0.63℃の体温上昇が計測されています。

2016515162037.jpeg


40℃であれば副交感神経を刺激する範囲内で、NO産生による血行促進が見込めます(深部体温の上昇)


また、HSP入浴法では、HSPを産生するためには体温は2℃上げなければならず、40℃のお湯の場合20分間入浴する必要があるが、これは炭酸系の入浴剤を使用することで幾分短縮できます(長湯することは個人的にはあまりお勧めしない)

仮にHSPが産生できなくても、そもそも毎日入浴するならばHSP入浴法にはこだわらなくても良いことになりますけどね。


そして、入眠効果を得るための条件である出浴直後から30分後にかけての体温下降の過程がはっきりとあること。


以上のことから、この入浴法を就寝30分前~2時間前に行うのが免疫力を高めるベストであると結論付けます。

とはいっても、あくまでも個人的な意見ですが・・・


(SHIBA)


参考資料 「入浴法および入浴習慣が心身に及ぼす影響に関する研究」 金沢大学


関連記事

『【入浴】 免疫力を高める入浴法(前編)』
『【入浴】 免疫力を高める入浴法(中編)』

 

【入浴】 免疫力を高める入浴法(中編)


体温が上がると免疫力は高まる。だから入浴は免疫力UPにはとても効果的。

しかしただ体温を上げれば良いというものではなく・・・

しかも具体的には何℃のお湯に何分間入浴すると体温が何℃上がるのか?

さらに重要なのは表面体温ではなく深部体温を上げること(体温計で測るのは皮膚の表面温度なので深部体温とは違います)

それを知らずして効果的な入浴はできません。


深部体温が上がると免疫細胞が細菌やウイルスなどの病原体と闘う時に有利な環境になります。
細菌やウイルスは熱に弱いという特徴があるからです(例外もある)

また、入浴による温熱効果は、血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)が産生されることも関係します。
いや、入浴によるリラックス効果がNOを産生し、それが温熱効果に繋がると言った方が正確かな?

というのは、NOは血管を拡張させる作用があり、それにより血流が良くなるからです。

血流が良くなれば当然動脈硬化や糖尿病の予防など様々な効果をもたらしますが、今回の件でいえば血行促進により深部体温を上げやすくなるという効果が得られます。

NOが産生されるには副交感神経が優位のとき

※余談ですが交感神経優位だと血管が収縮し、副交感神経優位だと血管が拡張されるとよく言われているが、正確には血管に作用するのは交感神経だけであり、副交感神経は血管に作用しない。ただし副交感神経が優位になるとNOが産生され、このNOが血管の拡張に作用しますので結果的には副交感神経が血管拡張に作用していると思われている。

『【健康】 風呂でのぼせる原因と予防策』 参照


通常、深部体温は表面体温よりも高い傾向にありますが、NOが活発に産生されている方が深部体温が高いと考えられます(血行が良い状態だから)

ある研究によると「ぬるめの38℃に15分間入浴した場合の出浴30分後の体温」と、「熱めの42℃に15分間入浴した場合の出浴30分後の体温 」はどちらも一定の体温上昇が見られるが、 ほぼ同じだということが分かっています。

『【入浴】 免疫力を高める入浴法(前編) 』 参照


ということは・・・免疫力を高める湯温は38℃でも42℃でも効果は同じかといえば、おそらくそうではない。

体温計で測った数値(表面体温)は同じでも、おそらく38℃の方が深部体温は高くなっていると推測されます。

その根拠は自律神経にあります。

個人差はあるとしても、通常は38℃の入浴では副交感神経が優位になります。
逆に42℃の場合は交感神経が優位になりますよね。

42℃もあれば深部体温は上昇しますが、このとき体熱を放散しようと交感神経血管拡張神経が働いて皮膚血管の血流が増加します。
おそらくこの段階では38℃より42℃の入浴の方が深部体温は高いと思われます。

ですが、問題は入浴後。

入浴後を交感神経優位な状態で迎えれば、血液は皮膚血管に集結しているわけですから皮膚表面温度は高いが、身体中心部は交感神経により血管が収縮している状態ですから部位によって体温にムラができやすいと考えられます。

一方、副交感神経が優位な場合は全身に均一に血流が行き渡っているとすれば、38℃での入浴の方が深部体温も高いと考えられます。

まあ、理論上での話ですけどね。


これまでの話をまとめるとこうなります。

ぬるめのお湯に入浴 → リラックス効果 → 副交感神経が優位になる → NOが産生 → 血管が拡張(血行促進) → 深部体温の上昇 → 免疫力UP

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副交感神経を刺激すると免疫力が高まる


先にお断りしておきますが、副交感神経が優位であれば免疫力が高まるという意味ではありません。

基本的には自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスがとれた状態こそが、一番免疫力を高めます

日中は仕事などで交感神経が優位な状態(交感神経>副交感神経)が続いているという前提で考えるならば、
自律神経のバランスを取るならば帰宅後はリラックスして副交感神経を刺激することが大切ですよね。

熱めのお湯では交感神経を刺激してしまい、自律神経のバランスがとれなくなってしまいます。

仮に交感神経の刺激による血管収縮以上に熱による直接的な温度上昇が上回ったとしても、
自律神経のバランスが取れていない状態では免疫細胞は効率よく働けません

だからこそ入浴でリラックスすることは免疫力を高める効果的な方法になります。


副交感神経を刺激することの効果は血行を促進して深部体温を上げるだけではありません。

腸の活動は交感神経によって抑制され副交感神経によって促進されます。
免疫細胞のリンパ球は約7割が腸にあるとも言われているくらいですから、
腸の活動が促進されることは免疫力の活性化に繋がると考えられます。

また、単純に副交感神経を高めてリラックスすることはストレスの解消になりますよね。

ストレスの溜めすぎは免疫力の低下になりますから、その点からも副交感神経を刺激して自律神経のバランスを整えるための入浴にしたいものです。

『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑨ストレスは敵か? 』 参照


そのためにはお気に入りの入浴剤を入れたり、アロマを垂らすのも有効な手段となりますよ。


(SHIBA)


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