• イベント情報
  • メールフォーム

2017年01月06日

【入浴】 「疲労感・全身倦怠感」の入浴法 ~疲れを放置しない~


倦怠感とは「だるい」「しんどい」「疲れやすい」などといった日常にありふれた症状のことです。

「疲労感」と「倦怠感」という2つの言葉は、しばしば違う意味として区別されたり同義語として扱われたりしますが、医学的には疲労感は倦怠感の内に位置づけられているようです。

ふだんは元気な人でも激しい運動長時間の労働睡眠不足などににより疲労感を感じることがあります。
このような生理的な理由による疲労(感)は十分な休息や睡眠をとることで回復します

入浴も有効で、適切な入浴をすることで疲れの取れ方が格段に良くなります。

一般的に倦怠感といえばこのような生理的疲労感を指しますが、全身倦怠感の原因には病的な疲労感が隠れている場合もあります

例えば何らかの悪性腫瘍が潜んでいる場合や感染症にかかっている場合、心臓や肝機能などに障害がある時やホルモンバランスの異常によることもあります。食欲不振や強い不安からくる精神的な理由による場合もあります。

同じ疲労でも、よく「肉体的な疲労と精神的な疲労」などと分けて考えられることがありますが、この一般的に言うところの精神的な疲労は病的疲労感に分類されます。

201716121746.jpg



全身倦怠感の分類

●生理的疲労感 ・・・ 
原因疾患なし (運動、労働、睡眠不足等) 
●病的疲労感  ・・・ 非器質的疾患(精神的・神経的な疾患)
            器質的疾患(感染症・循環器疾患・肝障害・内分泌疾患・代謝疾患・悪性腫瘍等)
            慢性疲労症候群(原因不明の疲労感が6か月以上続き、日常生活に支障をきたす疾患)



ここでは肉体的な疲れ、つまり生理的疲労感についての入浴法を中心に紹介します。 



◆生理的疲労感(肉体的な疲れ)の入浴法


主な原因は過度な運動・長時間の労働・睡眠不足など。

肉体疲労の蓄積は活動と休息のバランスの乱れが原因となりますので、この場合の疲労感を軽減するには効果的な休息や睡眠をとることです。

疲労に関係しているのは自律神経の中枢です。
ここから血圧や呼吸・体温など生命を維持するための調節をする指令が出ています。

自律神経の中枢の細胞は、過度の運動や長時間労働などがストレスとなって発生する活性酸素によって傷つきます

この細胞の傷が疲れの正体です。

しかしヒトの体はこの傷を修復する機能も持っているわけですが、この修復機能が最も働くのが睡眠中

ですので睡眠が不足すると修復が遅くなり疲れが取れないので、睡眠不足も疲労感の原因となるわけです。

この状態を放置すると、やがて自律神経の機能が低下するので様々な病的疲労感の原因となっていきます。

例えば血圧の調節機能が低下すると低血圧となって立ちくらみを起こしやすくなったり、呼吸の調節機能が低下すると心不全となって呼吸苦や頻脈を起こしやすくなったり、代謝機能が低下すると糖尿病の進行が進んだり肝障害を起こしたり・・・

そうならないためにも、疲労にはしっかりとケアをすることが重要です。

質の高い睡眠を得るには入浴はとても効果的です。


入浴法のポイント

①質の高い睡眠につなげること
②代謝を促進させる
③入浴によるエネルギー消耗を抑える
④心臓に不安のある人はサウナ浴
⑤入浴前にコップ1杯の水分補給



ここで言及しているのは全身倦怠感の入浴法なので、過度な運動による部分的な筋肉の疲労である筋肉痛や、事務系の仕事などによる肩の筋肉の緊張で起こる肩こりなど、局所的な疲労に対する入浴法については除外します。


『【入浴】 「筋肉痛」の入浴法 ~温冷交互浴とHSP入浴~』 参照

『【入浴】 「肩こり」の入浴法 ~炭酸ガス系の入浴剤やアロマで効果的に改善~』 参照



①質の高い睡眠につなげること

入浴は、疲労回復を目的とするならば睡眠の1~2時間前に入りましょう

入浴によっていったん深部体温が上昇しますが、入浴後に時間をかけて深部体温が下がりかけている過程でヒトは眠たくなる習性があります。
また、そうしたタイミングで入眠することが一番深い眠りにつけます。

目安となるお湯の温度と入浴時間は

39℃のお湯に20分間
40℃のお湯に15分間


深部体温が1℃上がると言われています。

入浴後はいきなり冷たいものを飲んだり、冷房や扇風機で火照った体を冷やさないようにして下さい。
手足の先から熱を放出することで徐々に深部体温が下がるようにしないと入眠効果はありません。


②代謝を促進させる

細胞に酸素や栄養が不足すると代謝が悪くなります。
それが皮膚の細胞であれば肌トラブルの原因になりますし、筋肉細胞であれば疲労の代謝産物である乳酸がたまりやすくなって疲労の原因となります。

代謝を促進するには体温を上げること。

お風呂に入ると温熱効果が得られ血管が拡張されるので、細胞の代謝産物で出てくる二酸化炭素や老廃物をスムーズに回収できます。結果、疲労の回復を早めます。

ただし、体温を上げれば良いからといって42℃以上のような熱い温度は交感神経を刺激してしまい逆効果となりますのでご注意下さい。


代謝を促進して回復を早める入浴剤としてはクエン酸風呂をおすすめします。

クエン酸風呂には乳酸値の低下(回復)を促進することが認められていて、疲労回復効果があるとされています。


『【入浴】 家庭でできる「クエン酸風呂」』 参照


③入浴によるエネルギー消耗を抑える

入浴時間は長いとそれだけで体力を消耗します。
そのためできれば入浴時間は短縮したいものです。

お湯の温度を高くすれば早く深部体温が上がるので入浴時間を短縮できると思いがちですが、熱い温度では交感神経を刺激してしまい、お風呂でリラックスできなくなります。
疲れを感じているのに入浴でリラックスできないなんて本末転倒です。

そこで入浴剤に工夫をしてみることが有効です。

炭酸ガス系入浴剤は血行促進効果が高いので体温を上げやすい入浴剤です。
血行促進効果のある入浴剤を使用すれば、同じお湯の温度でも深部体温を1度上げるための入浴時間をおよそ5分程短縮できると考えられています。

また、家庭の風呂を炭酸風呂にする方法もあります。


『【入浴】 家庭でできる「炭酸風呂」』 参照


なお、入浴時間は短縮するためとはいえ、動作は急がなくても構いません。
ゆっくりとした動作は酸素消費量を少なくする効果があります。

浴槽に浸かっている時はゆっくりと深呼吸しましょう。
入浴時間は短くてもリラックスして副交感神経を優位にすると疲れが取れやすくなります。


④心臓に不安のある人はサウナ浴

浴槽浴は水圧がかかるので、少なからず心臓に負担がかかります。

心臓に不安のある人にはかえって疲れを増悪させてしまう可能性があります。

全身浴ではなくて半身浴するのも方法の一つですが、全身浴の場合と同じだけ温まるには少し入浴時間を増やす必要がありますので、これはこれで疲れやすくなってしまいます。

水圧がかからないという意味ではサウナ浴をおすすめします。

サウナにも疲労回復効果がありまして、高温サウナよりも低温サウナの方が負担は軽いです。


『【健康】 サウナを科学する③ 疲労回復効果』 参照


横になれる岩盤浴も負担が少なくていいですね。


⑤入浴前にコップ1杯の水分補給

入浴前に水分を補給しておくことで、余分な水分を押し出しやすくなります。
体内の水分が不足すると血流が悪くなって疲労が蓄積してしまいます。



◆病的疲労感の入浴法


全身倦怠感は、運動や仕事の疲れによる生理的なものでないとすると、何らかの疾患が原因となっている可能性があります。

生理的疲労感は休めば回復するのに対し、病的疲労感は休むだけでは解決しません。原因となる疾患に対する適切な治療・改善が必要です。

そのため、休んでも倦怠感が続く場合は、自分の倦怠感の原因が何なのか?という見極めが重要であり、重大な疾患が隠れている場合もありますから、簡単に「疲労のせい」と自分で決めつけないで医療機関を受診しましょう。

特に倦怠感の出現が急激である場合は、肝障害心不全などの可能性があります。もし原因が臓器にあるのならば緊急な対応が必要です。
全身倦怠感以外に随伴する症状として黄疸浮腫腹水などがあるならば肝不全。浮腫呼吸困難頻脈などを伴うようなら心不全が疑われます。


『【入浴】 「心不全」の入浴法 ~ぬるめ、浅め、早め~』 参照

『【入浴】 「肝炎」の入浴法 ~肝臓に負担をかけないこと~』 参照

『【入浴】 「脂肪肝」の入浴法 ~代謝機能を高める~』 参照



また、夏に多い急速な倦怠感の原因には脱水症電解質異常があります。
随伴する症状としては吐き気手のしびれ肌の乾燥が見られます。熱けいれんを起こす場合もあるので「ただの夏バテだろう」と甘く見てはいけません。
加齢とともに異変に気付きにくくなるので高齢者は特に注意が必要です。


『【健康】 高齢者が熱中症にかかりやすい本当の理由』 参照


このように、何らかの病因があるときは倦怠感以外にもその疾患に特徴的な症状を随伴するため、これら情報を見逃してはいけません。

休息をとっても状況が改善されず、また倦怠感以外に随伴症状がある場合は、病的疲労感と思われますので放置しないで診てもらいましょう。



関連記事

『症状別の入浴法』