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【入浴】 「夏バテ」の入浴法 ~防止法と解消法は違う~


夏バテといえば猛暑の時期に多そうなイメージがありますが、そんなことはありません。

暑くなり始めや残暑の時期にもなりやすい症状です。

猛暑に多いのは熱中症で、これは暑さによるものですが、夏バテは病名ではなく体調不良を示す表現です。

熱中症と夏バテは違いますからね。


『【健康】 夏バテは夏だけのものではない ~夏バテと熱中症の違い~』 参照


外の暑さと室内の冷房の温度差により体内の体温調節機能が乱れたり、夏の疲れが出てきたりすることで、体がだるくなったり食欲不振になったりするのが夏バテです。




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こんな夏バテを起こした時には、入浴はとても効果があります。

巷では、「夏バテには38~40℃のお湯に20~30分浸かってしっかり汗をかこう」というのが定説になっていますが、気をつけなければならないのは、「夏バテ防止」と「夏バテ解消」の入浴法は違うということ。

夏バテというのは本来汗をかくべき時に冷房に頼り過ぎるあまり、体温調節機能が低下してしまって体調がおかしくなる症状ですから、入浴でしっかり発汗して体温調節機能を働かせてやることはとても有効です。

しかし、すでに夏バテになってしまっている状態ではガッツリ発汗するよりも、血行促進に主眼を置かなければなりません。



◆「夏バテ防止」の入浴法


発汗機能を働かせることが重要です。

ヒトの体温調節中枢は脳内の視床下部にあり、そこから自律神経を介して全身の汗腺に発汗作用をもたらしますので、自律神経が乱れていると上手く発汗作用が機能しません。

そこで汗腺機能を鍛えることで自律神経のバランスを整え、夏バテを予防することが期待ができます。


夏バテを防止するための入浴の温度と時間は以下の2通りがございます。

① 38~40℃のぬるめのお湯で20~30分

② 41~42℃の熱めのお湯で15~20分



一般的には①のようなぬるめのお湯でじっくりと汗をかくことが夏バテ防止の入浴法とされていますが、実は②の熱めのお湯でサッと汗をかくことも同様の結果が得られます。

というのは、あまり知られていませんが汗腺は交感神経の支配を受けているからです(副交感神経の支配は受けていない)

緊張している時に手に汗握るのもそうですが、発汗は交感神経が優位な場合に起きるんです。

一般的に①のぬるま湯が推奨されるのは交感神経を刺激しないことを狙ってのことだと思われますが、直接交感神経を刺激しない38~40℃のお湯でも、長い時間浸かっていれば体が温まって体温が上がり、どのみち体温調節中枢が交感神経を刺激して発汗を促すので結果的に同じことなんです。

また、38~39℃では見込めませんが、

40℃のお湯で20分間
41℃のお湯で15分間
42℃のお湯で10分間


の入浴で体温が2℃上がり、HSP(ヒートショックプロテイン)が産生されると言われています。

HSPとは傷ついた細胞を修復するタンパク質で、ストレスを受けると産生され、免疫力も高まると考えられています。
熱がストレスとなりHSPが産生されるというわけです。

HSPは細胞レベルで疲労を回復してくれるありがたいタンパク質なんですよ。
疲れを溜め込んで夏バテになってしまう前に、時々HSP入浴法を試してみてはいかがでしょうか。


【HSP入浴法】

  1.入浴前に水分補給をしておく
  2.浴槽に浸かって体温を2℃上げる
体温を2℃上げるとHSPは産生される
     時間の目安は
     40℃のお湯で20分間
     41℃のお湯で15分間
     42℃のお湯で10分間

     ※炭酸系の入浴剤を使用すれば時間は短縮できる
  3.入浴後は10~15分間は保温に努める
(体を冷やさないこと)

  効果のピークは2日後といわれているので3~4日に1回の入浴で十分。



『【入浴】 HSP入浴法(ヒートショックプロテイン入浴法)』 参照


高ぶった交感神経によって自律神経の乱れが気になる人は、その後に、37~39℃の微温浴で半身浴をすると良いでしょう。
高温浴で優位になった交感神経を副交感神経に切り替えることが目的です。



◆「夏バテ解消」の入浴法


すでに夏バテを起こしている場合。これは自律神経のバランスが乱れていたり体力が低下して食欲がない状態です。

こうなると41℃以上のお湯は逆効果。ただでさえ自律神経が乱れているところに、さらに交感神経を刺激することになります。

また、HSP入浴法も体力のない時に行うと刺激が強すぎる可能性があります。

よって38~40℃の半身浴で15~20分が目安。

いくらぬるい温度でも、それ以上の長時間の入浴は逆に疲労を招きます。


そのため「夏バテ防止」の入浴法のように交感神経を刺激して発汗を促すことよりも、体の各組織に酸素と栄養を行き渡らせ回復に努める入浴法でなければなりません。

よって血行を促進することに主眼を置きます。


また、食欲が低下しているときは胃腸が弱っている状態です。
お腹をしっかり温め、消化器官の血行を促進させましょう。

そのため半身浴でも効果は得られます。

ぬるめの温度は副交感神経を優位にして血管を拡張させますので、結果として血流が改善され全身の組織に酸素や栄養が行き渡ります(交感神経優位は胃腸の働きを抑制し、副交感神経優位は胃腸の働きを促進します)

このように、胃腸が弱っている状態では副交感神経を優位にするぬるめのお湯でなければなりません。

それにより免疫力(免疫細胞の多くは腸に宿っている)も向上し、夏風邪をひきにくい身体になります。


ちなみに食欲低下に効果のある漢方薬は、弱った胃腸の機能を高める「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が知られています。

さらに発汗過多により脱水気味になると、補中益気湯から気を巡らせて体を温め発汗を促すような生薬を外し、代わりに水分の保持や火照りを抑える生薬を配合した「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」が効果的だと言われています。

そのため清暑益気湯は補中益気湯の夏バージョンと言われることもあります。


この漢方薬の考え方と、夏バテに対する入浴法へのアプローチは似ている部分が多いですね。



◆夏バテに効果のある入浴剤


「炭酸ガス系」

よくあるシュワシュワ泡の出る入浴剤ね。
お湯の中で炭酸ガスを発生させますが、効果を発揮するのはガスを出し切った後。
お湯に溶けた炭酸ガスが皮膚から血管へと浸透し、直接血管に働きかけ血管を拡張させます。
血行促進には最適な入浴剤です。

「薬用植物系」

俗に言う薬湯。
トウキ、センキュウ、ウイキョウ、チンピなど血行促進効果のある生薬が配合されたものをお選び下さい。


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『症状別の入浴法』