入浴には、シャワー派を別にすれば、全身浴派と半身浴派の2つに分かれるかと思いますが、昔から全身浴と半身浴のどちらが体に良いか?という議論が絶えません。
しかし残念ながら、どちらが良いと言い切れるものではありません。
入浴にはリラックスや疲労回復など健康を維持する効果と体を清潔する効果がありますが、全身浴と半身浴のどちらが適しているかは目的によって異なるからです。
むしろ問題なのは、好んで半身浴をされている方は多いと思いますが、半身浴の効果を誤解している場合がネット上でも散見されることでしょう。
せっかく体に良いと思っていても、それが間違いだったとしたら・・・。
入浴習慣を見直す意味でも、半身浴の誤解を紹介します。
◆半身浴の誤解 その① 「たくさん汗をかくことでデトックス効果が期待できる」
半身浴における誤解の中でも、とりわけ多そうなのがこのデトックス効果。
半身浴にはデトックス効果があると考えている人の多くは「汗をかくことで体内の老廃物が排出される=デトックス」だと勘違いされているようです。
これはそもそもデトックスの意味すら勘違いしています。
デトックスとは、医学的にはアルコールや薬物の解毒のことを指しますが 、毒素を解毒するという意味であれば、それは肝臓の仕事であり発汗ではありません。
また、その毒素を排出するのも尿や便によるものが95%を占めており、汗による割合は3%しかありません。
効果的なデトックスを心掛けるならば、発汗よりも快調な排便を目標とするべきでしょう。
しかも汗に含まれる成分の99%は水分と言われていますので、発汗によって排出される毒素は微量すぎてデトックス効果は期待できません。
◆半身浴の誤解 その② 「長時間の入浴でダイエット効果が期待できる」
これもよくある誤解。
誤解の要因は2つありまして、一つは「全身浴よりも長く入浴することで汗をたくさんかくので、それによって体重が減少する」との勘違い。
言うまでもありませんが、失われた水分は入浴後の水分摂取によって補給されますのでダイエットにはなりません。
さすがに、汗をかいた分だけダイエットできると考える人は少ないかもしれませんね。
そもそも「体重減少=ダイエット」ですら正確ではなく、体脂肪を減らさなければダイエットになりません。
そういうわけで、「全身浴よりも長く入浴することでエネルギー(カロリー)を消費する」と考えるのが誤解のもう一つの要因。
これに関してもいくつかの研究論文が存在しますが、全身浴の2倍の時間を半身浴しても消費エネルギー量に変わりはないようです。
◆長時間の入浴はむしろデメリットしかない
上記の2つの誤解は、半身浴が長時間の入浴を可能にしているとこから来ているようですが、長時間の入浴はむしろデメリットしかありません。
たくさん汗をかくということは、それだけ脱水を招くおそれがあるわけで、血液の水分が失われれば、それだけ血流がドロドロになりやすいことになります。血行を促進させるはずの入浴が血流を滞らせては本末転倒です。
それから長時間の入浴はデトックス効果どころか、逆にお肌にも悪い影響があります。
これはいくらぬるいお湯だとしても、長時間入浴すればするほど、皮脂や角質の保湿成分が流されてしまうので、結果として乾燥肌を招きやすくなります。
半身浴であっても、どんなに長くても30分以上の長湯はやめましょう。
重要なのは水分の摂取です。入浴後の水分補給は当然ですが、入浴前にもコップ1杯の水分を摂りましょう。
◆正しい半身浴法
半身浴はもともと心臓に不安のある人のための入浴法です。
浴槽浴は水圧がかかるので、全身浴より半身浴のほうが心臓に対する負荷がかかりにくいからです。
では、心臓に不安のない人には半身浴は不要か?というと、そうでもありません。
ただし、「〇〇℃のお湯で〇〇分間の半身浴がベスト」と言いきれるものでもありません。
しっかりと目的に応じて半身浴をしましょう。
免疫力を高めて風邪予防したい場合
入浴で免疫力を高める方法として注目されているのがHSP入浴法。
体温を2℃上げるとHSPが産生されて免疫力が高まると言われています。
半身浴の場合、41℃で25分くらいが体温を2℃上げる目安となります。
『【入浴】 HSP入浴法(ヒートショックプロテイン入浴法)とは』 参照
肩こりを改善したい場合
肩こりを改善したいのであれば半身浴より全身浴が断然おすすめ。
それでも半身浴をするのであれば、40℃で20分が目安。
肩を冷やさないように、室内を暖めておくか、肩にタオルをあてるなど工夫しましょう。
『【入浴】 「肩こり」の入浴法 ~炭酸ガス系の入浴剤やアロマで効果的に改善~』 参照
夏バテを解消したい場合
夏バテの原因は、一言で言うと自律神経の乱れ。
交感神経が優位になりすぎて自律神経のバランスが乱れている可能性が高いです。
食欲が低下して胃腸が弱っているときは、副交感神経を優位にするのが望ましい(交感神経が優位になると食欲を抑制する)ですね。
具体的には38~40℃で15~20分が目安でしょう。
『【入浴】 「夏バテ」の入浴法 ~防止法と解消法は違う~』 参照
便秘、痔、夜間頻尿、過敏性腸症候群などを改善したい場合
腸周りの不調に対しても半身浴は有効です。
腸周りには副交感神経が張り巡らされているので、副交感神経を刺激すると良いでしょう。
じっくりと温めたいので目安は38~40℃で20~30分。
特に便秘にはマグネシウムが豊富なバスソルトで半身浴することをおすすめします。
冷え性、片頭痛を改善したい場合
「冷え性には半身浴は向いていない」という意見もありますが、のぼせやすい体質の人にはおすすめです。
39~40℃で20~30分が目安。
脂肪肝、肝炎、睡眠時無呼吸、閉塞性動脈硬化症、糖尿病など、血圧や心拍数に不安のある方
これらの症状は血圧や心拍数との関りが深いので、心臓の負担が軽い半身浴がおすすめです。
ただし熱い湯温は血圧を上げるのでぬるめにしましょう。また、ぬるくても長湯は動脈硬化のリスクが高まるので気を付けましょう。
そういうわけで20分以上の入浴はおすすめできません。入浴前後の水分摂取をお忘れなく。
入浴時間を短縮するために炭酸ガス系の入浴剤がおすすめです。