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アラピア健康ブログ

炭酸泉のススメ

【入浴】 「脂肪肝」の入浴法 ~代謝機能を高める~


肝臓の細胞の約3割以上に脂肪がたまると脂肪肝と診断されますが、放っておくと肝炎や肝硬変、さらには肝がんに至る危険性もあり、油断のできない状態と言えます。


肝臓には代謝機能や解毒機能などいくつもの役割がありますが、脂肪肝になるとこれらの肝機能が低下すると言われています。



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◆入浴上の問題リスト◆
 
 
#1 血圧が高く、入浴すると疲労感を感じる
#2 血圧が低く、入浴すると疲労感を感じる
 
現在は脂肪肝の治療に直接作用する薬剤はないようで、ふだんの生活習慣に気を付ける必要があります。
入浴においても脂肪肝を改善するような入浴法はありませんが、肝機能に効果のある入浴を心がけると良いと思われます。
脂肪肝は代謝機能が低下している状態なので、入浴法のポイントとしてはその点を意識しましょう。
 
 
 
◆入浴法◆
 
 
<入浴法の問題>#1 血圧が高く、入浴すると疲労感を感じる
 
<入浴目標> 肝臓に負担をかける入浴は避ける
 

肝臓に負担をかけないために、「温度は熱くしない・長時間の入浴は避ける・食後や運動直後の入浴は避ける」といった注意を払いましょう。

・お湯の温度は38~40℃
・入浴時間は10~15分間
・食後や運動後の入浴は最低1時間は空けること


が目安となります。

負担をかけずに血流を良くすることで肝機能も高まります。
 
 
脂肪肝の人に多いのは肥満
食べ過ぎや飲み過ぎといった食生活の乱れにより脂肪が体内に蓄積されると、血液中にも脂質が多くなって血がドロドロになる可能性が高いものです。

そのため脂肪肝の人は高血圧を併発している場合が多く、心臓や動脈硬化に不安のある人には水圧の弱い半身浴をお勧めします。

さらに少しでも負担をかけない入浴法としては「反復浴(分割浴)」があります。

分割法(反復浴)とは、例えば5分入浴してから少し外気浴、また5分入浴してから少し外気浴を繰り返す入り方で、外気浴のタイミングで頭や体を洗うと良いでしょう。


『【入浴】 反復浴(中温反復浴)とは』 参照
 
 
水圧がかからないという意味ではサウナは肝臓に優しいといえます。

また、サウナに入ってしばらくすると汗腺から出る汗以外に、皮脂腺から皮脂が分泌されますので新陳代謝にも効果があります。

新陳代謝と言えば、体内の有害毒素である重金属(水銀、カドミウム、アルミニウム、鉛)は脂肪に溶けると肝臓や腎臓ではデトックスできず、皮脂と一緒に体外へ排出するしかないという点にも注目に値します。

サウナでかいた汗、それも皮脂腺から出たサラサラした汗(皮脂のこと)は肌の保護膜になるから拭かない方が良い、という風潮がありますが、この件に関してはしっかり洗い流した方が肌に良いと思われます。


『【健康】 サウナを科学する② デトックス効果(後編)』
 参照


 
肝機能の低下は肌荒れや肌のくすみの原因になったり、アトピー性皮膚炎の原因にもなると言われているのは、このようなことが関係している可能性があります。
 
 
 
<入浴上の問題> #2 血圧が低く、入浴すると疲労感を感じる
 
<入浴目標> 代謝機能を高めて体温を上げる
 
 
脂肪肝は高血圧ばかりでなく、低血圧とも大きく関係しています。
 
低血圧が脂肪肝を招く原因は冷えにあります。
 
体が冷えてくると体内の熱を外へ逃がさないようにするために、交感神経が作用して手足の血管が収縮され、血液を体幹部分(主に内臓)に集めて深部体温を維持しようと働きます。
 
ただし、自律神経の機能が低下していると血管の収縮が不十分になり深部体温を維持できず、体の中心部が冷えてきます。
これを「内臓型冷え性」といい、血管が収縮しないタイプ、つまり低血圧の人に多い症状です。
 
内臓が冷えるということは、肝臓も例外ではなく、肝臓が冷えると肝機能の低下につながります。
 
脂はお湯をかけると流れますが、冷たい水をかけると固まりやすい特性があるように、血液も冷えると血中の脂質がドロドロになり血流が悪くなります。
 
ただでさえ肝機能が低下すると中性脂肪の代謝が悪くなり、高血圧の場合と同様、血液中の脂質が多くなって血がドロドロになりやすい傾向にあるわけですから、低血圧による脂肪肝はもっと血液がドロドロになって血流が悪くなりやすいと考えられます。
 
 
このような場合、もともとの原因である冷えを改善しなければなりません。
 
ですが、内臓型冷え性は体の中心部は冷えていても手足はあたたかい場合が多いので、自分では気付かないことがあるようです。
 
手足があたたかくても、血圧が低く、疲労感があり、かつ肌のトラブル(肌荒れや乾燥肌など)がある場合は、内臓型冷え性による脂肪肝を疑ってみましょう。
 
 
通常は冷え性や低血圧に対しては、自律神経の正常化が期待できる「温冷交互(交代)浴」をお勧めするのですが、
 
 

 
疲労感を伴う脂肪肝の場合は、まず体を温めることと代謝機能を高めることを優先しましょう。
 
 
そこで、入浴剤として代謝機能を高めるクエン酸風呂をお勧めします。

家庭風呂でも市販のクエン酸を浴槽(180~200リットル)に大さじ3杯程度入れるだけで簡単に作れます。

クエン酸を多く含む食品としてレモンやお酢、梅干しなどがあるように、クエン酸には疲労回復の効果があるとして知られています。

これはヒトがエネルギーを生産するときにはクエン酸回路が中心的な役割をするからで、疲労の回復以外にも代謝機能の向上肌のトラブルにも効果があると言われています。

肝臓に中性脂肪を溜め込まないためにも代謝機能を高めることは大きな意味があります。

クエン酸は食品から経口摂取するだけでなく、嬉しいことに肌からも吸収できるようで、入浴によるクエン酸摂取は消化吸収をする過程がないので経口摂取よりも負担がかからないと考えられています。

加えてアロマ精油「ローズマリー・ベルベノン」「レモン」を数滴垂らすと肝機能に良いと言われています。


また、入浴により体内の水分が失われると、血液の粘度が増してドロドロになるので、入浴前後にはしっかりと水分摂取をしましょう。


なお、風呂上りの直前に背中の肝臓にあたる部分に温かいシャワーを当てると良いでしょう。
肝臓は右胸の裏あたりに位置し、ここにシャワーを当てることで代謝機能の改善が期待できます。
 




関連記事

『症状別の入浴法』

【入浴】 「蕁麻疹(じんましん)」の入浴法 ~原因が分からなくても大丈夫~


蕁麻疹といっても様々な種類(タイプ)の蕁麻疹があり、それぞれの原因も複雑でかつ発生機序が明らかになっていない部分も多いので、これぞ蕁麻疹の入浴法だと一概に特定するのは無理があります。

蕁麻疹は様々な種類(タイプ)があるといいましたが、それらを大きくカテゴライズするにも急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けたり、アレルギー性のものと非アレルギー性の蕁麻疹に大別したり、原因が特定できるものと特定できない特発性の蕁麻疹とに大別することもでき、見方の角度によって違ってくるので詳細を知りたい方は蕁麻疹の専門サイトを参照してみて下さい。


入浴法においては、蕁麻疹の種類や原因によって全然違ってきますので、それぞれの入浴法を紹介してもよいのですが、そもそも蕁麻疹の約70%は原因不明だと言われるくらいなので、ここでは入浴法を考慮するうえでのアプローチとなるポイントに絞ってみるとよいでしょう。

そうすることで、原因が特定できなくても解決法がみえてきます。

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◆入浴上の問題リスト◆


#1 アレルギー体質である
#2 冷え性により血行不良で代謝が悪い
#3 慢性的なストレスがある
#4 入浴すると皮疹や痒みが出る
#5 入浴後に皮疹や痒みが出る


入浴で掻痒感が強くならないようにすることが優先されます。
お湯はぬるめにすることが鉄則です。
アレルギー性の蕁麻疹に対しては、アレルギーの素因を除去するのはもちろん、他の原因による蕁麻疹においてもその原因により症状が悪化することがないようにしなければなりません。
また、自律神経のバランスを整え、蕁麻疹になりにくい体質に改善することも効果的です。



◆入浴法◆


<入浴上の問題>#1 アレルギー体質である

<入浴目標> 自律神経のバランスを整え免疫機能を高める


もともと花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギー体質である人は、免疫機能のバランスが乱れているために蕁麻疹にもなりやすい傾向があると考えられています。

蕁麻疹には非アレルギー性のものもありますが、アレルギー体質の人はそうでない人よりもアレルギー性の蕁麻疹になる可能性は当然高くなります。

アレルギー性の蕁麻疹においては、その発症メカニズムは花粉症と類似していると考えてよいでしょう。

そのため花粉症によって蕁麻疹になる人もいるくらいです。

アレルギー性蕁麻疹の発生機序はこうです。
まず外部から体内に侵入してきた異物に対し、免疫細胞はこれら有害な物(抗原)であると認識し、その抗原に対する抗体を作ります。
その抗体がマスト細胞(肥満細胞)の表面に張り巡らされ、その抗体に抗原が結合するとマスト細胞からヒスタミンが放出されます。
ヒスタミンには血管を拡張させ血管透過性を亢進させる作用があるため、それが皮膚表面の浅い所で働くと赤く腫れる蕁麻疹の症状が出るわけです。

蕁麻疹の原因がアレルギー性のもので原因物質(抗原)が特定できている場合は、対処法としてはその原因物質を避けることであり、入浴法としては特別なことはありません。入浴と蕁麻疹にはなんら因果関係がないので、むしろいつも通りに入浴して構わないでしょう。


ただし、花粉症などにかかりやすいアレルギー体質の人は免疫機能のバランスを乱していることが原因ですので、免疫バランスを整える必要があります

免疫機能の乱れは自律神経の乱れでもあります(免疫と自律神経は密接な関係にある)


『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑦「自律神経のバランス」との関係(前編)』 参照

『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑧「自律神経のバランス」との関係(後編)』 参照


そこでお勧めなのは「温冷交互浴(温冷交代浴)」

温冷交互浴とは熱いお湯と冷たい水(温度差30℃くらい)を交互に浴びて身体を刺激する入浴法。

「冷水を浴びる ⇒入浴⇒冷水を浴びる⇒入浴⇒冷水を浴びる」を繰り返し、最後は冷水で終わること。

交感神経と副交感神経を交互に刺激することで自律神経がのどちらかに偏ることなくバランスが整われます。

「自律神経を鍛える」という意味もあります。

この温冷交互浴は、アレルギー疾患なら全般的に効果が期待できる入浴法なので覚えておいて損はありません。


なお、一番風呂は止めた方が良いと思われます。

例えばプールに入ると蕁麻疹になる人がいます(プールサイドにいるだけで発症する人もいる)

これは消毒に使用されている塩素に反応していることが原因で、入浴においても同じことが起こりえます。

ご存知のとおり水道水にも塩素が含まれています。

健康面には問題はありませんが、プールに入ると髪がパサつくことがあるように、髪や皮膚などの弱い組織は影響を受けることがあります。

ちなみに塩素の濃度は一番風呂より二番風呂、二番風呂より三番風呂と段々薄まっていきます。

ですので蕁麻疹になりやすい人だけでなく花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息などアレルギー症状を起こしやすい人は一番風呂を避ける方が賢明だと言えます。

『【健康】 一番風呂はアトピーや花粉症などのアレルギー性疾患の原因になる?』 参照


その他、気を付けることとしては体をゴシゴシ洗わないこと。

それから入浴剤の成分がアレルギーの原因となることもあるので、できれば入浴剤は使用しないというのもアリです。



<入浴上の問題>#2 冷え性により血行不良で代謝が悪い

<入浴目標> 血流を改善して代謝機能を高める


冷え性になりやすい人も要注意です。

冷え性とは体のどこかに冷えを感じている状態ですが、これは血行が悪くなっているという状態でもあります。

「体温が1℃下がると免疫力は30%下がる」と言われているように、まあ冷え性は低体温と違って本当に体温が下がっているわけではなく冷えを感じているだけかもしれませんが、それでも血行が悪いことで末端まで必要な栄養や酸素が行き渡らなくなるので、結果的には免疫力は低下します。

冷えとは余分な水分の代謝が悪くなることでもあります。そのため毒素を体外へ排出する機能も弱くなります。

つまり、冷え性になることで免疫力が下がり、その状態が続くことでアレルギー症状が出て毒素を出そうとしているのかもしれません。

蕁麻疹の種類の一つに、例えば冷たい水で顔を洗ったり、冷房へあたったり、かいた汗が冷えた時などに反応を起こす「寒冷蕁麻疹」があります。

寒さや冷たさを感じると起こるのが特徴ですが、なぜ蕁麻疹になるのかそのメカニズムは不明ですが、どうも冷え性による蕁麻疹発症の構図と関係があるように思えます。

ですので、冷え性を伴っている場合の入浴法は38~40℃のお湯にゆっくりと15分全身浴をお勧めします。

冷え性にも「温冷交互浴」は効果があるのですが、免疫力が低下していることと寒冷蕁麻疹が冷たさに反応することを考慮すれば冷水を浴びることはしない方が良いでしょう。



<入浴上の問題>#3 慢性的なストレスがある

<入浴目標> リラックスしてストレスを緩和する


気になるのは、その状態が慢性化している場合。つまり慢性蕁麻疹の場合です。

慢性蕁麻疹は原因不明である場合が多いものですが、

蕁麻疹の症状が続く慢性蕁麻疹においてはずっと何かに反応しているわけですから、食べ物(卵や小麦、エビ、そばなど)や花粉・ハウスダストといった何か外来抗原によるものとは考えにくいものです。
外因性の蕁麻疹であれば一過性であるのが普通だからです。

慢性蕁麻疹の発生機序は解明されていませんが、その原因は外来抗原によるものではなく、持続性の高い内因性のものであるとすれば、その最も背景にありそうなのはストレスによる原因でしょう。

精神的ストレスのみならず肉体的ストレス(疲労)もまた慢性蕁麻疹の原因と考えることができます。

ストレスが慢性蕁麻疹の原因となる理由には、ストレス防衛物質である副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が関係しているからだと考えられています。

ストレスにずっと晒されているとホルモンバランスは乱れます。自律神経も交感神経が優位な状態が続くことになり、結果として免疫機能のバランスが乱れ、マスト細胞の活性化を招きヒスタミンが放出されるようです。

このような場合の入浴法としては、もうお分かりですよね。・・・そう。リラックスすることです。

自分が心地良いと感じる入浴を試みてはいかがでしょうか?

・音楽を聴きながら入浴する
・好きな入浴剤を使用する
・好きなアロマ精油(エッセンシャルオイル)を使用する
・湯船に浸かりながらストレッチをしてみる



方法はその人によって違ってくると思いますが、気持ちいいからといって長湯のしすぎで疲労を増悪させないように気を付けましょう。



<入浴上の問題>#4 入浴すると皮疹や痒みが出る

<入浴目標> 急激な温度変化に注意する


お風呂に入っていると赤いブツブツができる場合は、お風呂の中に原因があると考えるのが普通です(ただし、直前に食べた物にアレルギー反応を起こし入浴中に症状があらわれる可能性もあります)

お風呂に入るという行為は、血圧が乱高下しやすいことからも分かるように寒暖差の影響を受けやすいものです。

寒い所(脱衣場で裸になる)から温かい所(浴室または浴槽に浸かる)へ移動したときの温暖差に反応して発症するのが「温熱蕁麻疹」

逆に暖かい所(暖かい居間)から寒い所(冷えた浴室)へ移動したときの温暖差に反応して発症するのが「寒冷蕁麻疹」

寒冷蕁麻疹に対しては体を温めるのが有効なので浴槽浴は効果が期待できますが、風呂上りで体が冷えないよう気を付けなければなりません。

一方、温熱蕁麻疹の症状では、蕁麻疹部分の皮膚温度は40~50℃になることが特徴です。

ですので温熱蕁麻疹の予防法は熱いお風呂には入らないことです。

もし入浴中に温熱蕁麻疹が起こったら、冷水をかけるか冷たいタオルを当てて冷やすと良いでしょう。


さて、温熱蕁麻疹と寒冷蕁麻疹の入浴法ですが、

どちらも38~40℃のお湯にゆっくりと15分全身浴をお勧めします。

「あれ?これって冷え性を伴っている場合の入浴法と同じ?温熱蕁麻疹でも?」と思われるかもしれませんが、

意外なことに冷え性が温熱蕁麻疹の原因となっているかもしれません。

温熱蕁麻疹と寒冷蕁麻疹とでは対処法が真逆でなければならない気がするかもしれませんが、

大事なのは「どちらも寒暖差に反応している」ということ。


ややこしいのは「コリン性蕁麻疹」と診断された場合です。

コリン性蕁麻疹は発汗した時に発症しやすいのが特徴です。
運動や温熱の刺激によって汗腺支配交感神経からアセチルコリンが放出されて蕁麻疹になると考えられています。

汗腺支配交感神経から放出されたアセチルコリンが汗腺細胞のアセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)に結合することで発汗するわけですが、コリン性蕁麻疹になる人は結合できなかった過剰のアセチルコリンが肥満細胞(マスト細胞)を刺激し、ヒスタミンの放出を招いているとも考えられています。

何らかの理由で汗腺機能が衰えると汗腺細胞に存在するアセチルコリン受容体(ムスカリン受容体)の機能は低下します。
つまり汗腺機能が衰えている人ほどコリン性蕁麻疹になりやすいと考えることができるのです。


『【健康】 お風呂に入ると赤いブツブツができるのは蕁麻疹?それとも・・・』 参照


ですので、コリン性蕁麻疹の対処法としては「汗をかかないようにする」のではなく、逆に「しっかり汗をかく」ことだといえます。

しっかり汗をかいて汗腺機能を鍛えることで、アセチルコリンが受容体と正常に結合できるようにしてあげることが肝心です。

ということで、入浴法としては高温浴を試してみるとよいでしょう。

体験談によれば、入浴で温まって汗が出るころにコリン性蕁麻疹による刺激に襲われますが、そこをグッと耐えてやり過ごすとやがて開放感が待っているようです。

どうしても我慢できなくなった場合は冷たいシャワーを当てて発汗作用を鎮めるとよいでしょう。



<入浴上の問題>#5 入浴後に皮疹や痒みが出る

<入浴目標> 蕁麻疹を発症するパターンを理解する


風呂上りに遅れてやってくる蕁麻疹の原因は、遅れて反応があらわれる遅延性の温熱蕁麻疹か、体が冷えたことで起こる寒冷蕁麻疹、もしくは体を拭くときに使用したタオル、またはタオルで体を拭く行為が刺激となる機械性蕁麻疹であると考えられます。

毎回なる場合は、どの条件によって蕁麻疹があらわれるのか絞り込んでみると解決すると思われます。



◆おすすめのアロマバス◆



好きな香りのアロマ精油を使用するだけでもストレスの緩和になりますが、中には抗アレルギー作用や抗ヒスタミン作用のある精油もあります。

蕁麻疹に適した精油といえばカモミール・ローマンカモミール・ジャーマンが定番です。

ローマンには抗アレルギー作用が、ジャーマンには抗ヒスタミン作用があるので、これに不快感を鎮める作用のあるラベンダーを足して患部に塗布するのが一般的に行われていますが、どの精油も肌に優しいのでアロマバスにも向いています。


ちなみに抗アレルギー作用と抗ヒスタミン作用の違いは

抗アレルギー作用・・・ 脂肪細胞がアレルゲンに反応するのを抑制する(予防として有効)
抗ヒスタミン作用・・・反応した脂肪細胞から放出されるヒスタミンをブロックする(かゆみ止めとして有効)

このような違いがありますが、まあ薬と違って精油の場合は両方同時に使用しても構わないので、ブレンドして使用することをお勧めします。

ただし、ごく稀に、精油そのものに反応してしまう場合があるので、敏感肌の人はパッチテストを行ってから使用する方が良いでしょう。


●カモミール・ローマン
青リンゴのような香り。保湿作用があり、肌に優しく、子どもと一緒に入浴する場合にもお勧めです。抗炎症作用があるのでアレルギー症状全般に対して有効。心を落ち着かせる優しさがあり、安眠したい時にも適しています。

●カモミール・ジャーマン
カモミール・ローマンと似ていますが、ジャーマンに豊富に含まれているカマズレン(アレルギー症状に有用な成分)が綺麗な青色をしていることから、精油の色も青いという特徴があります。ハーブティーとして知られるカモミールティーとは通常このジャーマンのことを指す。


アロマバスの例


ローマンとジャーマン、そしてラベンダーをブレンドするとき、そのまま混ぜるよりも天然塩に希釈してバスソルトにすると良いでしょう。
というのは、バスソルトには高い発汗作用がありますが、蕁麻疹(特にコリン性蕁麻疹)は汗をしっかりかくことが重要だからです(上記参照)


蕁麻疹のファーストチョイスブレンド
 天然塩 大さじ2
 カモミール・ローマン 1滴
 カモミール・ジャーマン 1滴
 ラベンダー 2滴

 (ローマンがアレルギー抑制、ジャーマンがかゆみ止めとして作用します。ジャーマンの香りが苦手な場合はローマンを2滴、かゆみが強い場合はジャーマンを2滴にするなどして調整して下さい)
 ※妊娠中・授乳中の使用は控えましょう。キク科アレルギーの人は注意して下さい


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『症状別の入浴法』



 

【入浴】 「腱鞘炎」の入浴法 ~薬湯やバスソルトがお勧め~


腱鞘炎には、指を伸ばそうとすると痛みカクンとはねる「ばね指」と呼ばれる症状と、手首の親指側に炎症が起こる「ドケルバン病」があります。

どちらも発症時は痛みと腫れがみられるため冷やした方が好ましいですが、急性期(熱をもっているとき)を過ぎた数日後からは積極的に患部を温めてあげた方が血流が良くなって痛みを軽減するので良いとされています。

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◆中間期は漢方の薬用入浴剤がおすすめ


腫れはひいているがまだ痛みが残っている中間期における入浴には、鎮痛作用血行促進作用のある生薬が成分に含まれている薬用入浴剤を使用すると良いでしょう。

血行促進と鎮痛に作用する生薬としては、例えば当帰(トウキ)芍薬(シャクヤク)などが有名です。



◆慢性期はバスソルトがおすすめ


患部に熱感はないが手や指先が冷えていて血行が悪くなっている慢性期には、バスソルトに入浴すると良いでしょう。

末梢血管まで酸素と栄養が行き渡らなくなっている状態なので、血行を促進することが条件ですが、このような状態の時には葛根湯が用いられるように、発汗を促し冷えによってこわばっている筋肉を緩めることが先決です(葛根湯は肩こりの緩和にも効果があるほど弛緩作用がある)

ただし、発汗を促した方が良いからといって、お風呂の温度を熱くすれば良いわけではありません。


そこでお勧めなのがバスソルト。

バスソルトは塩のもつ浸透圧の影響で、通常のお湯の約4倍も汗をかくとさえ言われるほど発汗作用があります。

つまり通常の温度でもしっかり汗が出ます。

しかもバスソルトにはマグネシウムが含まれていて、マグネシウムには筋肉の緊張を解く働きがあります。

筋肉は収縮するときにカルシウムが使用され、弛緩するときにマグネシウムが使用されているので、冷えによって筋肉がこわばっている人にはマグネシウムが含まれたバスソルトがお勧めなのはそういう理由によります。


さらにラベンダーやカモミールなどのリラックス効果のあるアロマ精油を垂らすとより効果が得られるはずです。



◆マッサージとツボ圧し


マッサージも効果があるとされていますが、患部に熱を持っていて腫れや痛みが強い急性期にマッサージをすると腱鞘炎が悪化します。

そんな時は肘まわりの筋肉をほぐすようにします(肘まわりの筋肉は手首とつながっている)

ある程度痛みが弱くなってから入浴中に湯に浸かりながらマッサージをするとよいでしょう(ただし入浴中は血流が良いので軽めでよい)


腱鞘炎に効果のあるツボもありますので、入浴中に圧すこともお勧めです。


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腱鞘炎に効果のある主なツボ

大陵(だいりょう) ・・・ 手のひら側の手首のちょうど真ん中
陽谿(ようけい) ・・・ 親指を反らしたときに浮き出る2本のスジの間のくぼみ
陽池(ようち) ・・・ 手首(手の甲側)にある横ジワ中央の小指よりのくぼみ
外関(がいかん) ・・・ 陽池から指3本分肘方向に離れた中央


手首にある「大陵・陽谿・陽池」は痛みを軽減させる作用があります。
「外関」は水分代謝に働く三焦経の経絡に属しているので、むくみの改善にも効果があるとされています。「水分の代謝=老廃物の排出」でもあり、外関は腱鞘炎の回復を早める作用があると考えられています。


ただし、患部に熱があったり痛みが強いうちは、これら患部に近いツボではなく肘まわりにある手三里(てさんり)曲池(きょくち)を圧すと良いでしょう。


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『症状別の入浴法』

 

【入浴】 「夜間頻尿」の入浴法 ~原因別で違ってくる~



夜間頻尿」とは病名ではありません。「夜間に1回はトイレに起きる」ことを定義とする症状のことです。

頻尿は加齢水分の過剰摂取などの生活習慣によってもなりますが、尿崩症糖尿病が原因となることもあるようです(尿崩症とは抗利尿ホルモンが減少したり働かなくなるために尿量が増えてしまう症状で、昼夜関係なくトイレの回数が増えます )


特に夜間の就寝中に頻尿になることを「夜間頻尿」といい、考えられている原因は以下のとおり・・・


「夜間多尿」・・・夜の水分の過剰摂取はもちろん、カフェインやアルコールの摂取も原因となる。心臓や腎臓の機能低下も多尿に関係し、高血圧や心臓病の薬による影響もある。

「膀胱畜尿障害」・・・機能的膀胱容量が減少し、膀胱に十分な尿を溜めることができなくなる状態。過活動膀胱、前立腺炎、膀胱炎などが原因となる。

「睡眠障害」・・・高齢者に多い。眠りが浅く、トイレに行きたくて起きるのか、目覚めたからトイレに行きたいのか自分でも分からない状態。不眠症の他、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群が関与している場合もある。



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◆夜間頻尿の場合


まずは生活習慣の見直しから始めましょう。

就寝時間は不規則になっていませんか?寝る時間が毎日バラバラだと体内時計が乱れるので夜間に起きてしまうことにもなります。

また、夜にお茶やコーヒー、お酒を飲む習慣がある場合も注意が必要です。カフェインアルコールを含むものは控えた方が良いでしょう。

体質も関係します。

夜だけ頻尿になる人の特徴として足のむくみが原因となることがあります。
これは寝るときに体が横になり、脚に溜まっていた水分が全身に回り腎臓に流れた水分が尿となるから。


『【入浴】 「脚のむくみ」の入浴法 ~炭酸泉が効果あり~』 参照


それから意外と忘れられていることかもしれないのが「冷え」。

体が冷やされると、ヒトは体温を維持するために余分な水分を排出しようとします。
例えば鍋に張った水を温めたい時は、少し水の量を減らした方が早く温まりますよね。それと同じ。だから寒くなるとオシッコが近くなる。

そういうわけで、入浴で体をしっかりと温めることはとても有効なことなんですね。



◆膀胱畜尿障害の場合


過活動膀胱前立腺炎膀胱炎など膀胱に尿が溜められなくなる障害が原因なので、水分の過剰摂取とはあまり関係ありません。

過活動膀胱は神経因性による場合が多く、脳と膀胱をやり取りしている神経にトラブルがあって膀胱に尿が少ししかたまっていなくても尿を出そうとする病気です。

女性の場合は、神経のトラブル以外でも、加齢や出産によって骨盤底筋がゆるんだり弱くなることで排尿機能が低下し過活動膀胱になることがあります。
ときに尿もれを起こすこともあり、これを「腹圧性尿失禁」といい、重い物を持ったりくしゃみや咳をした時に腹圧がかかり尿もれを起こします。
この場合は骨盤底筋を鍛えてやることが有効であり、膣と肛門にキュッと力を入れて10秒後に脱力し、またキュッと引き締めることを繰り返すと良いそうです。


『【健康】 女性に多い「尿もれ」防止に効果!お風呂で簡単トレーニング』 参照


男性に見られる症状として「何度もトイレに行きたくなるけど尿があまり出ない、しかも残尿感がある」というような場合は、前立腺肥大からの過活動膀胱の併発が起こっている可能性が考えられます。
これは前立腺肥大によって尿道が圧迫されて尿が出にくい状態にもかかわらず、トイレに行くたび無理やり尿を出そうと膀胱に力を入れることを繰り返しているうちに、膀胱が過敏になって過活動膀胱になってしまうケースです。

入浴による過活動膀胱の対策としては、へそより下の血流を改善すること。
半身浴でもいいので、20~30分じっくり温めてあげましょう。


『【入浴】 「過活動膀胱」の入浴法 ~下半身を冷やさない~』 参照


膀胱炎は女性に多い病気です。

膀胱炎はお風呂に入っても大丈夫か?という疑問はよくありますが、問題はありません。
膀胱炎は細菌による炎症なので、免疫機能を高めるためにもむしろ入浴して体を温めることの方が有効です。


『【入浴】 「膀胱炎」の入浴法 ~水分をしっかり摂る~』 参照



◆睡眠障害


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よく眠れないと頻尿の原因となります(逆に夜間頻尿が睡眠障害の原因となる場合もある)

不眠症の原因は加齢心因性によるものだといわれています。心因性というのは自律神経の乱れ。不安やストレスが自律神経のバランスを乱し熟睡できなくします。

そういうわけですので、不眠症の改善策はストレスモードからリラックスモードに切り替えることなので、入浴法としては副交感神経を優位にする38~40℃のお湯でゆっくりすること。

浴槽に浸かる時間が短すぎると、このモード切替が不十分になるかもしれません。あえて少し長湯と感じる20~30分浸かりましょう。

就寝時間の1~2時間前に入浴することもポイントです。


『【入浴】 「不眠症」の入浴法 ~就寝の1~2時間前に入浴する~』 参照





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『症状別の入浴法』

 

【入浴】 「五十肩」の入浴法 ~積極的に肩を温めること~


40~60代に多く見られる五十肩。発症する年齢によっては四十肩・六十肩とも呼ばれますが、正式名称を「肩関節周囲炎」といい、その名のとおり肩関節の周囲が炎症を起こす症状です。

筋肉がこわばって血流が悪くなることで痛みを感じる、いわゆる肩こりとは違いますが、五十肩の人の多くは同時に肩こりにも悩まされていることが多いようです。

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五十肩の原因は分かっていませんが、治療法として温熱療法が有効とされています。

温熱療法とはホットパックで患部を温めたりすることですが、入浴もまた有効だと考えられています。要は肩回りを温めることです。

炎症と聞くと「患部を温めて大丈夫なのか?冷やすべきでは?」と思われるかもしれませんが、五十肩に関していえば「温める」で問題はなさそうです。

というのは、急性の炎症には「冷やす」、慢性の炎症には「温める」と言われるように、
例えば捻挫を起こした直後など患部(炎症しているところ)が熱を持っている状況では温めると腫れと痛みが増加するので冷やさなければなりませんが、五十肩はある瞬間からいきなりなる症状ではなく、どちらかといえば慢性の症状といえるから。

実際のところ、入浴すると五十肩の痛みが緩和されるという人は多いようです
それでも心配ならば、まず肩を温めてみて、それで痛みを増すようならば冷やしてみる。という感じでよろしいかと思います。



1.温度は「ぬるめ」にすること


肩を温めると良いからといって熱いお湯はやめましょう。そこはやはり炎症患部ですから強い刺激は良くありません。

38~40℃のお湯で全身浴の場合は15分半身浴の場合は20分が目安です。
※あくまでも目安です。患部の具合に応じて入浴して下さい

半身浴の場合は肩にシャワーを当てると良いでしょう。

とにかく肩を温めることが肝要です。
入浴剤には保温効果の高いものが良いでしょう。一般に無機塩類系(主成分は硫酸ナトリウムなど)の入浴剤がお勧めです(炭酸ガス系入浴剤もお勧め)

保温効果の高い牛乳風呂、塩風呂(バスソルト)、みかん風呂で楽しみながら肩を温めるのも良いですね。

また、就寝の1時間前に入浴を終えるようにすると、肩を冷やすことなく就寝することができます。


なお、五十肩には運動療法も有効とされているので、入浴中か入浴後にストレッチをすることも効果的です。

ただし、急性期(発症から3カ月以内)は肩の安静を保つことが優先されますので、肩に負担のかかる動きは控えましょう。


<五十肩の経過>

●急性期(発症~3カ月) ・・・ 絶対安静
●拘縮期(3カ月~1年) ・・・ 無理のない範囲で肩を動かしてみる
●回復期(1年以降)   ・・・ 積極的に関節を動かしてみる(痛みの出たら中止で)



ストレッチ方法に決まりはありませんが、肩甲骨を広げたり寄せたり、あるいは回したりと様々な動きを取り入れて、徐々に可動域を広げていくようにしましょう。
くれぐれも無理はしないように。



2.五十肩に効くツボ


五十肩に効果があると言われているツボは体中にたくさんあります。

せっかくですから、湯船に浸かりながら試してみましょう。
というより試さない手はありません。

中でも簡単に場所が分かって自分でも圧しやすいツボをいくつか紹介します。

●肩周りのツボ
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●手のツボ

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●足のツボ

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関連記事

『症状別の入浴法』


 

【入浴】 「糖尿病」の入浴法② ~糖尿病患者の場合~

 

現在の糖尿病の治療方針は、糖尿病を治すことよりも血糖値をコントロールし、進展を抑制したり合併症の予防を目標としています。
 
糖尿病の合併症には網膜症、腎症、神経障害のいわゆる3大合併症の他、脱水やケトアシドーシス、免疫低下に伴う皮膚感染や尿路感染、それに動脈硬化による心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、下肢動脈硬化症など様々な症状に及びます。
 
これらは、高血糖により血管が傷つき血流が悪くなることが主な原因となっています。
 
入浴には、インスリンの作用を促進し、血流を改善する効果があるので、
 
・インスリンの効きが良くなる
・血圧が安定する
・動脈硬化の予防になる
 
といった影響が期待できます。
 
 
境界型糖尿病(予備軍)の場合は
 



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◆入浴上の問題リスト◆
 
 
#1 薬理作用に伴う低血糖により意識障害を生じる危険がある
#2 皮膚が乾燥し、感染症にかかりやすい
#3 血圧が高く、動脈硬化のリスクがある
#4 自律神経障害と水分不足により便秘を起こしている
 
入浴で改善されるわけではありませんが、少しでも糖尿病の進展や合併症の発症を予防するために適した入浴をしましょう。
ただし、糖尿病をコントロールするためには注意事項を理解し、現在抱えている問題に合わせた入浴法を実践する必要があります。
 
 
 
◆入浴法◆
 
 
<入浴上の問題>#1 薬理作用に伴う低血糖により意識障害を生じる危険がある
 
<入浴目標> 低血糖症状の出現しないタイミングに入浴する
 
 
インスリンは副交感神経の支配を受けています(ちなみにインスリンの分泌を促す要因は副交感神経だけでなくインクレチンという消化管ホルモンによる影響もある )
 
そのため40℃前後のぬるめのお湯に入浴すると副交感神経が働き、インスリンが分泌されやすくなります。

全身の血行も促進されるのでインスリンの効きも早くなる傾向にあります。

しかし、糖尿病患者の症状には個人差があり、いくら副交感神経が優位になってもインスリンの分泌が弱かったりインスリンの効きが悪かったりします(インスリン抵抗性)

なので薬物療法によって血糖値を下げるようにしているわけですが、ここで注意しなければならないのは入浴によって薬理作用を高めてしまうということです。

場合によっては薬が効き過ぎて低血糖を起こしてしまうことがあるので、その点においては注意が必要です。
恐いのは高血糖よりもむしろ低血糖です。
 
 
入浴中に低血糖症状が生じると、意識障害により転倒や風呂で溺れる事故を起こしかねません
 
 
一般的に血糖値が70mg/dL以下になると、ヒトの体はこれを低血糖状態と判断し、生体反応として交感神経を介して血糖値を上げるので血糖値はすぐに正常値に戻ります。
しかし糖尿病の人は低血糖になっても、血糖値を上昇させるホルモンの分泌力が低下しています。

そうなんです。糖尿病ではインスリンの分泌能力も低下していますが、血糖値上昇ホルモンの分泌能力も低下しているんです。
だから糖尿病とは血糖値を下げられない病気というより、正確には血糖値をコントロール出来ない病気だと言えるんです。

また高血糖の状態から急激に血糖値が下がった場合、それが70mg/dLを下回らなくても、その急激な落差によって低血糖症状を引き起こす危険性も高くなります。

このようなことからインスリン注射や血糖値を下げる薬を服用直後に入浴すると、血流が良くなって薬理作用が効きすぎて低血糖を誘発するため、服用直後の入浴はご遠慮下さい。
また、食前の入浴も危険です。

ときに、「風呂に入ると逆に血糖値が上がる」という人がいます。

そのような人は熱いお風呂に入ってはいないでしょうか?熱い湯は血糖値を上げる要因となります。

例えば糖尿病の危険因子に「ストレス」があります。

ストレスの多い生活をしていると交感神経が過剰に働きます。
交感神経が活発化しているときは副交感神経の働きは抑えられています。
交感神経の支配を受けている血糖値上昇ホルモンが働き、副交感神経の支配を受けているインスリンの分泌は低下するので、 血糖値を下げることができなくなってしまうんです。

ストレスの多い人は糖尿病になりやすいのは、こうした理由によります。
 
そういう意味でもストレスを解消するためにリラックス効果を得るような入浴タイムにする必要があるんです。
 
 
 
<入浴上の問題>#2 皮膚が乾燥し、感染症にかかりやすい
 
<入浴目標> 感染の徴候を見逃さない
 
 
高血糖になると、自律神経のバランスが乱れて発汗が減少することによる皮膚の乾燥と、末梢の細い血管の血液の流れが悪くなる血流障害とによって、皮膚感染を起こしやすい状態になります。
 
皮膚の乾燥が感染症のリスクになる理由は、皮膚バリア機能が低下し、皮膚における有害菌の侵入を許しやすいことにあります。
末梢の血流障害が感染症のリスクになる理由は、酸素や栄養が十分に行き渡らず、感染した細胞において回復に時間がかかったり、免疫細胞や薬物の成分も届きにくい状態にあることが言えます。
 
また、高血糖状態になると、好中球(免疫細胞)の働きが低下すると言われています。
 
つまり糖尿病は、生体防機能が低下し、肺結核や尿路感染症、皮膚感染を生じやすい易感染状態になりますので、感染の徴候を見逃さないようにしなければなりません
 
皮膚の乾燥には特に入浴後の保湿ケアをしっかり行うことが重要で、入浴中においては角質を落とし過ぎないように気をつけなければなりません。
とりわけ、足の皮膚感染は潰瘍や壊死を生じる原因ともなるので、常に足を観察し、白癬、カンジダやタコ、うおの目などを発見した場合は医師に報告するようにしましょう。 
 
 
 
 

<入浴上の問題>#3 血圧が高く、動脈硬化のリスクがある
 
<入浴目標> 血行を促進し、血圧をコントロールする
 
 
糖尿病で気を付けなければいけないのは血糖値ばかりではありません。

その合併症の多さからも分かるように、常に合併症のことも意識しなければなりません。

合併症の中でも、特に注意しなければならない疾患のひとつに「脳梗塞」があります。
多くの場合は前触れもなく発症し、最悪死に至ることもあり、命は助かっても後遺症が残ることの多い恐ろしい疾患です。

問題は血圧です。

入浴でリラックスすると副交感神経を介して血管が拡張されますので血圧は安定します。

しかし熱いお湯は交感神経を刺激し、反対に血圧を上げてしまうので脳梗塞のリスクも高くなりますのでご注意下さい。
 
なお浴槽浴によって水圧がかかりますので、全身浴よりも半身浴をお勧めします。
 
 
また、糖尿病は動脈硬化になりやすく、脳梗塞含む脳卒中や心筋梗塞などの急性心疾患に注意しなければなりませんが、末梢血管においても同様に注意が必要です。

末梢血管はその細さのため、血糖にによって傷つきやすい傾向があります。
この場合の血管障害の多くは、血管内皮細胞が障害を受けることから始まると考えられています。

内皮細胞からは血管を弛緩させる一酸化窒素(NO)が放出されていることが知られており、NOの持つ血管拡張作用(降圧作用)が血管障害から守ってることになります。

そしてこのNOを作動させるのが副交感神経。というわけです。

よく「副交感神経は血管を拡張させる」といいますが、実は血管を支配しているのは交感神経だけであり副交感神経は直接血管に作用しません。
しかし副交感神経はNOを介して結果的には血管を拡張させる働きがあることには違いありません。

40℃のお湯に10分間の入浴でNOの産生が促進され、血管の拡張や血流の増加が認められている研究結果もあることから、入浴は末梢血管の障害を予防する効果も期待できます。


なお、糖尿病には炭酸風呂に入浴する炭酸浴が適しています。

少なくとも糖尿病による合併症の末梢血管障害に対して効果を発揮すると考えられています。

血管拡張作用による血流改善もそうですが、炭酸浴には患部の組織に酸素の供給を促進する働きがあるため、血行障害の回復を早めるという報告があります。

自宅で炭酸浴をする場合は、一般的な浴槽(200リットル前後)のお湯に重曹を大さじ3杯、クエン酸を大さじ2杯入れて下さい。
これだけで炭酸風呂のできあがりです。


『【入浴】 家庭でできる「炭酸風呂」』 参照


ただし、水分補給は忘れずに行って下さい。

発汗により体内の水分が失われると血中の糖濃度が高くなるばかりでなく、血液粘度も高まり動脈硬化のリスクも高くなります。
 

 
<入浴上の問題>#4 自律神経障害と水分不足により便秘を起こしている
 
<入浴目標> 適切な水分摂取ができる
 
 
糖尿病になると、多量のブドウ糖を尿中に排泄するため脱水状態になりやすい傾向にあります。
 
水分が不足すると便秘になりやすくなりますが、糖尿病が便秘になりやすい理由はそれだけでなく、糖尿病により内臓の働きを整える自律神経の働きが低下するため、腸のぜんどう運動が鈍くなることも便秘の原因となります。
 
便秘に伴う排便時のいきみは血圧の急上昇を引き起こし、脳梗塞などの脳血管障害や目の網膜症といった合併症に及ぶことがあるため、便秘は合併症のリスクと考えられます。
 
便秘の症状があり、かつ著しい口渇感を生じている場合は、その原因が糖尿病と関係している可能性が強くなります。
 
入浴は特に体内の水分を失いやすいので脱水に気をつけましょう。

だからといって入浴をしないというのは違います。

入浴時にはしっかりと水分補給をして便秘の予防、改善に努めましょう

また、入浴により副交感神経を刺激することは腸のぜんどう運動を促進する働きがありますので、排便をコントロールするためにも入浴を有効に活用しましょう。
 
 
 

◆誤った入浴法


食後一時間以内に運動や入浴をすると、血糖値は抑えられるという話を耳にします。

これは入浴も汗をかくと、運動と同じようにエネルギーとして糖分が消費され、血糖値が抑えられるというわけです。。

しかし入浴は運動のような筋肉を動かすことによって消費される活動代謝とは違い、基礎代謝が活性化されるぐらいなので運動のような目立った変化は期待できないはずです。

 運動・・・筋肉を動かすのでブドウ糖の消費大
 入浴・・・せいぜい基礎代謝が活発化するだけ

ただ血糖値の上昇を抑えられるのは事実のようです。これはおそらく、入浴によって血液が体表面に集まり、代わりに胃腸の消化活動が低下しているために、食べた物がなかなかブドウ糖にまで分解されず、血糖値の上がり方が緩やかになっているのではないか?と考えることもできるのです。

つまりブドウ糖の吸収を緩やかにしていると・・・


では食後すぐの入浴は効果があるのか?

例えば糖尿病の治療薬にはインスリンとは関係なく、炭水化物が腸で消化吸収されるスピードを遅くし、血糖値の上昇を緩やかにするものがあります(炭水化物は吸収されるまでの過程でブドウ糖に分解される)

食後すぐの入浴は、それと同じように血糖値の上昇を緩やかにするかもしれません。

しかし薬は炭水化物のみをターゲットにしているのに対し、入浴による消化機能の低下は脂質やタンパク質も含めて消化不良を起こす可能性があります。
そこまでして血糖値の上昇を抑えるのはとても勧められたものではありません。

 薬 ・・・炭水化物の吸収のみ緩やかにする
 入浴・・・炭水化物以外の吸収も緩やかにする(単なる消化機能の低下)

なお、アルコールを飲んでの入浴は、糖尿病患者にとっては低血糖を招くリスクが非常に高くなります。

理由は肝臓がアルコールの代謝に働くため、グリコーゲンの分解がおろそかになって血糖値が上がらないために血糖値を下げる薬物療法が効きすぎる恐れがあるからです。そんな状態の時に入浴すればどうなるか。もう説明は不要でしょう。

というわけで飲酒後の入浴はやめましょう。



(最終更新日:2017/02/08)


 

【入浴】 「糖尿病」の入浴法① ~境界型糖尿病(予備軍)の場合~


血糖値と入浴の関係、予備軍を含む糖尿病に効果のある入浴法、そして注意点などを中心に紹介します。

結論から言いますと、40℃前後のお風呂は血糖値を下げる効果が期待できます(ただし42℃以上は逆効果)

その理由を説明する前に血糖値のしくみを把握しておく必要があります。



◆血糖値のしくみと入浴の影響


人の血糖値は通常、一定の範囲内に維持されています。

食事や運動によって血糖値が変動する要因は多数あるにもかかわらず、一定に保たれるのは血糖値を調節するホルモンがあるからです。


血糖値を上げるホルモン・・・血糖値上昇ホルモン
 ・交感神経が支配
 ・肝臓におけるグリコーゲンの分解を促進

血糖値を下げるホルモン・・・
インスリン
 ・副交感神経が支配
 ・肝臓におけるグリコーゲンの分解を抑制
 

※血糖値上昇ホルモンにはすい臓から分泌されるグルカゴンや副腎髄質から分泌されるカテコールアミン(アドレナリンなど)の他にも、成長ホルモンやプロラクチン、甲状腺ホルモンなど多数存在する。

インスリンやグルカゴン、カテコールアミンなどの分泌は自律神経によって調節されています。
つまり交感神経を介してグルカゴンらが分泌されたり(血糖値上昇)、副交感神経を介してインスリンが分泌されます(血糖値低下)

また、肝臓は血糖値の変化に応じてグリコーゲンを分解して血中にブドウ糖を放出したり抑制したりしていますが、
このグリコーゲンの分解や合成も自律神経の支配を受けています。
交感神経を介して肝臓からブドウ糖が血中へ放出されたり(血糖値上昇)、副交感神経を介してブドウ糖が貯蔵されます(血糖値低下)

このように交感神経は総じて血糖値を上昇させる働きがあります。
(この時点で交感神経を刺激する42℃以上の熱いお風呂は糖尿病に良くないということが分かります)

逆に40℃前後のお風呂は副交感神経を優位にするのでインスリンの分泌を促進し 、また血管が拡張され血流が良くなるのでインスリンの効きも良くなると考えられます(入浴した場合はそうでない場合よりも1時間後のインスリンの分泌量が多いという実験報告もある)



◆境界型糖尿病(糖尿病予備軍)の入浴法


境界型糖尿病の人は数年後には慢性の糖尿病になる確率が高く、特徴として食後に血糖値が急上昇する食後高血糖がみられます。

食後は誰でも血糖値は上がるものですが、正常であればインスリンの働きにより血糖値は元のレベルに戻ります。
しかし境界型糖尿病の人は食後に異常に血糖値が上がり、しばらく高い状態が続きます。

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空腹時の血糖値がまったく正常であることもあり、これが「かくれ糖尿病」とも言われる所以ですが、その食後高血糖による血糖値の急騰ぶりから「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」と呼ばれ、最近ではその危険性が重要視されてきています。


『グルコーススパイク(血糖値スパイク)って何?』 参照


食後高血糖の原因はインスリンの分泌が不足しているか反応が鈍くなっているからです。
そのために血糖値の上昇を抑えられなかったり元に戻すまでに時間がかかります。


・境界型糖尿病の人はインスリンが効き始めるまで時間を要する。
・食後高血糖のピークは食後30分~1時間後。
・入浴した場合はそうでない場合よりも1時間後のインスリンの分泌量が多い


これらの事実を踏まえると、食前30分前の入浴がグルコーススパイク(血糖値スパイク)の危険を回避するための入浴法だと考えることができます。
証明されているわけではないので科学的根拠は弱いのですが、食事前に入浴することで副交感神経優位の状態にしてインスリンの効果を高めやすくしておくことは一考に値します。

さらに、食前の入浴は食欲を抑制します。
これは入浴によって体が温まることで熱を放散しようと血液が体表面に集まり、代わりに胃腸の血流が減り消化活動が低下するためです。
食べ過ぎを防ぐことも過度な血糖値上昇の予防になりますからね。


しかしこれには条件がありまして、それはインスリン注射や飲み薬の服用など薬物療法は行っていない場合に限ります
すでに糖尿病が進んでいて薬物療法を行っている場合は、食前に入浴することは低血糖症状を引き起こす危険性があります。

また注意点としては

●水分補給はしっかり行うこと
 ・・・血液中の水分が減るとブドウ糖の血中濃度が高くなります。
●42℃以上の入浴は逆効果
 ・・・交感神経を刺激すると血糖値が上がります。

にご注意下さい。
 

【入浴】 「緑内障」の入浴法 ~水はけを良くして眼圧を下げる~


緑内障とは眼圧が上がることで視神経が圧迫され、視野が狭くなる病気です(眼圧が正常でも発症することもある)


眼圧が上がる原因は、主に目の水分(房水)の量が増えすぎることにあります。

房水とは虹彩の裏側にある毛様体から分泌される液体のことで、房水は瞳孔を通って前眼房に流れ、排出路である隅角(ぐうかく)を通って虹彩付着部にあるシュレム管に吸収され眼球外に排出されています。

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正常な場合は房水の分泌量と排出量が一定に保たれているので眼圧が安定しているものですが、房水の出口にある隅角(ぐうかく)が塞がると眼の中の房水が過剰となり眼圧が上がります。

このように隅角が塞がることで緑内障になるタイプを「閉塞隅角緑内障」といいます。

つまりは
「房水が排出できない = 眼圧が上がる = 視神経を圧迫、傷つける = 視野が狭くなる」 というのが閉塞隅角緑内障。


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緑内障には他にも種類がありますが、いずれにしても視神経が傷つくことで発症します。




◆体質別の入浴法


緑内障の治療は薬物療法やレーザー療法、手術療法がありますが、私生活においても自分でできる対処法はいくつか存在します。

なかでも入浴は緑内障にとって効果があると考えられています。

例えば緑内障の人には末梢血管の循環が悪いと言われ、冷え性の人が多いようです。
血流が悪いと視神経の細胞にも栄養が行き渡らなくなるので血流を改善することが優先されます。


『【入浴】 「冷え性」の入浴法 ~誤解だらけの冷え症対策~』 参照


また、むくみやすい人も要注意。むくみやすいということは、水はけが悪いということで漢方でいうところの「水毒」にあたります。

余分な水分を排出することで眼圧は上がりにくくなりますから、入浴による発汗作用、または浴槽浴による水圧効果などはむくみ対策として期待できます。
入浴自体に利尿作用がありますからね。それに冷え性からくるむくみもありますので、冷え性と併せて改善しましょう。


『【入浴】 「脚のむくみ」の入浴法 ~炭酸泉が効果あり~』 参照


さらに高血圧も緑内障の危険因子と考えられています。

高血圧と眼圧に直接的な関係は認められてはいませんが、緑内障患者には高血圧を持っている人が多いという報告があります。

なぜ高血圧との関係が医学的に説明されていないのに緑内障になるのかといえば、これは交感神経と関係しているとも考えられます。

例えば自律神経の交感神経が優位になると血管は収縮します。そのため血圧は上がります。
いつも緊張やストレスにさらされている人は交感神経が優位になりやすく、結果として高血圧になりやすい。

また、交感神経が優位な場合、瞳孔は散大になりがちです(逆に副交感神経が優位だと瞳孔は縮小する)

実はここが問題で、瞳孔が大きく開くということは、虹彩筋は縮んで短く太くなっている状態です。

この太くなることが隅角の隙間を狭くする要因となるわけです。もともと狭隅角の人は塞がってしまうことも。

これにより眼圧が上がって緑内障になる・・・というわけです。

高血圧だから緑内障になるというよりも、ストレスによる自律神経の乱れが高血圧や緑内障を引き起こしているとも考えられるんですね。

そういう意味でもリラックス効果のある入浴は有効です。

リラックスすると副交感神経が優位になり、ストレスが解消され、眼圧を下げることになります。
また副交感神経優位によって血管は拡張されますので、血流も改善され視神経にも酸素や栄養が行き渡ります。


『【入浴】 「高血圧」の入浴法 ~安全な入浴法と症状別の工夫~』 参照


加えて低血圧もまた緑内障の危険因子となります。

血圧が低過ぎることも血流が悪くなる原因となりますので、血圧は高すぎても低すぎても緑内障にはよくありません。



◆入浴時に意識すること


上記のように、低血圧の場合を除くいずれの危険因子を持つ体質の場合でも、基本は38~40℃のぬるま湯でなければなりません。

副交感神経が優位になるような入浴によって、冷え性やむくみ、高血圧などが緑内障の要因になることを防ぐためです。

湯船に浸かるときは、のんびりリラックスすることを心がけましょう。

入浴剤には血行促進効果の高い炭酸ガス系がお勧めです。
生薬入り薬用剤ならば、これまた血行促進作用のあるトウキやセンキュウなどが配合されたものがお勧めです。

また、湯船に浸かりながら目の周りをマッサージすると効果があるかもしれません。
なぜなら目の周りには「攅竹(さんちく)」「 晴明(せいめい)」「太陽(たいよう)」といった眼圧を下げるツボがあるからです。


なお、注意すべき点があるとすれば、シャワー時は長い時間頭を下に向けて洗髪しないこと
長時間下を向いていると眼圧が上がりやすいからです。


このようなわけで、入浴は緑内障にとって効果があると考えられます。

ただし手術療法を受けた場合は、術後数日間は入浴も洗顔も禁止されていますので医師の指示に従ってください。



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『症状別の入浴法』



 

【入浴】 「更年期障害」の入浴法 ~気持ちを安定させる~


女性の更年期障害に対する入浴法です。

女性の更年期とは閉経を挟んだ前後10年間のことで、主に40歳~60歳。

閉経に伴い女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が低下することと関係しているようです。

更年期症状としては、ほてりのぼせ、発汗、冷え、肩こり、睡眠障害、動悸、頭痛、めまいといった身体的なものから意欲低下、物忘れ、イライラといった精神的なものまで実に様々な症状があり、また人によっても違います。

身体的な症状は生理の変化、つまりエストロゲンの変化や低下が自律神経中枢のある視床下部に影響していて、自律神経が乱れることで生じます。

また精神的な症状は、ストレスが大脳辺縁系に影響し、気分の落ち込みや情緒不安定になることで生じます。

自律神経を司る視床下部は大脳辺縁系の制御を受けているので、更年期障害の対策としては自律神経のバランスを整えるだけでは不十分で、気持ちを安定させることの方が重要になってきます。

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入浴法としてのポイントは、気持ちを安定させる入浴法。具体的には脳への血流を促進すること

例えばうつ病患者は健常者と比べると脳の血流が不足していることが分かっています。
脳の血流が悪いと意欲の低下や気分の落ち込みを招き、それが自律神経の乱れにも繋がっていきますから、なによりも脳への血流改善が求められます。

エストロゲンには血管拡張作用があるので、更年期になるとこの作用が弱くなってどうしても血流が悪くなりやすくなりますから、自分で血流を促進させていくしかありません。



1.毎日決まった時間に入浴し、睡眠すること


脳の血流と睡眠は密接な関係にあります。

睡眠中は副交感神経が優位になり血管が拡張され血行が良くなります。
脳内においては、睡眠中に老廃物が洗い流されていて、これが物忘れや認知症の予防とも関係していると考えられています。

また、睡眠中は心拍数も下がり体温も下がっている状態ですが、これは体温が下がらないと質の高い睡眠が得られないことを意味します。

体温は末梢の皮膚血管から放熱されることで下げられますが、血行が悪いとうまく放熱ができずなかなか寝付くことができません。

そこで就寝1~2時間前の入浴はとても有効になります。
お風呂で血行を促進し、入浴後に一度温まった体温がゆっくりと放熱されて下がっていく過程でヒトは眠たくなります。

そういうわけで入浴と睡眠はセットで考えましょう。


また、気持ちを安定させる方法のひとつに生活のリズムを安定させることが挙げられます。
不規則な生活は気持ちをも不安定にしますからね。

できれば毎日同じような時間に入浴して、同じような時間に入眠すると良いでしょう。



2.38~40℃のぬるめお湯で15~20分間


入浴には言うまでもなくリラックス効果があります。

熱いお湯は逆効果になりますから、ぬるめ(38~40℃)のお湯でシャワー浴ではなくじっくり浴槽浴に浸かって15~20分間

時間を長めに設定しているのは、ぬるめのため時間が短いと体が温まらないことと、リラックス効果をしっかりと得るためです。

でも20分間はさすがに長いので、体に負担を感じるようなら半身浴にしたり、「10分+10分」の2回に分けた分割浴でも良いでしょう。

入浴中、あるいは入浴後に簡単なストレッチを取り入れるとさらに効果が見込めます。


また、更年期障害の入浴剤としてクラリセージのアロマ精油が有名です。

数滴湯船に垂らすだけ。

クラリセージはハーブ系の香りで心を落ち着かせる効果がありますので、苦手な香りでなければ試してみると良いでしょう。



3.キーワードはオキシトシン?


更年期障害の症状にほてりやのぼせ、発汗があると言いましたが、これは「ホットフラッシュ」といって局所的に大量の汗が出る多汗症に似た症状で別名「更年期の多汗症」とも呼ばれています。

多汗症もまた体温調節中枢のある視床下部のみならず、その上位である大脳辺縁系に問題があると考えられ、そのため情動が不安定なために発汗する精神性発汗が汗の主体となっています。

『【入浴】 「多汗症」の入浴法 ~情動の安定をはかる~』 参照


そのせいか、更年期障害と多汗症は共通している部分が多いと考えられます。

多汗症との違いがあるとすれば、その原因が更年期であるということ。エストロゲンの減少ですね。

減少する女性ホルモンであるエストロゲンは更年期である以上、自分で増やすことはできませんが、このエストロゲンの働きを助け、かつエストロゲンの働きに類似したホルモンなら自分で増やすことは可能だと言われています。

そのホルモンとは「オキシトシン」

オキシトシンは視床下部で産生される別名「幸せホルモン」とか「愛情ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質のひとつで、大脳辺縁系の情動を司る扁桃体に作用してストレスを打ち消すと考えられています。

しかもストレスを抑えるどころか幸福感を感じ、心拍や血圧を調整し、骨や筋肉の形成にも関与しているというから、まさにエストロゲンの代わりです。

オキシトシンはスキンシップで増えるので、好きな人と一緒にお風呂に入ると効果があるかもしれません。いや冗談抜きで。

また、先に述べたアロマ精油なども自分に合った物であればオキシトシンが増えると考えられています。要は幸福感が得られるような入浴タイムにすれば良いわけです。

 

関連記事

『症状別の入浴法』