帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水疱瘡(みずぼうそう)の時のウイルスが、再び活性化してあらわれる疾患です。
神経節に密かに潜んでいたウイルスが、加齢や過労などによる免疫力の低下を契機に活性化し、痛みをともなう赤い斑点や水ぶくれなど発疹が帯状にでてきるのが特徴のようです。
帯状疱疹の場合、お風呂に入っても良いのか?
そんな疑問を感じる理由には「入浴は帯状疱疹にとって問題はないのか?」と「お風呂のお湯で人にうつらないか?」の2点があるのではないでしょうか。
◆入浴上の問題リスト◆
#1 疼痛がある
#2 皮膚病変から二次感染リスクがある
#3 疼痛や掻痒感によって睡眠不足や食欲不振が出現している
入浴は帯状疱疹にとって問題ありません。患部を温め血行を良くすることで疼痛は緩和します。
皮膚病変の性状によっては二次感染を予防するためシャワー浴を行います。
帯状疱疹がお風呂で他の人に感染するリスクは低いとされています。
というのは帯状疱疹の感染経路は、直接接触するか手や器具を介して間接的に感染する「接触感染」です(ごく稀に飛沫感染もある)
水疱瘡は感染力が強くて空気感染もあることから、帯状疱疹にも同様の心配があるのは当然ですが、帯状疱疹は水疱瘡のような感染力は無いので、基本的にはお風呂でうつることは無いと思われます。
ですが、まだ水疱瘡にかかっていない子どもは、うつる可能性があるので注意が必要です。
大人でも水疱瘡にかかったことの無い人も、水疱瘡ウイルスに対する免疫力がありませんからうつる可能性があります。
妊娠中の人も胎児に影響する可能性があるので同じお風呂には入らないほうが良いようです。
これらの条件に当てはまらなければ、感染の心配はないようですが、心理的にはどの家庭でも帯状疱疹の人が最後に入浴することになるでしょうね。
◆入浴法◆
<入浴上の問題>#1 疼痛がある
<入浴目標> 患部を温めて血行を促し、疼痛緩和を図る
帯状疱疹による疼痛は、多くの場合、皮疹出現の1週間~数日前(2週間以上前からのこともある)から、神経痛様の疼痛や知覚異常が先行します。皮疹が先行する場合もあります。
痛みを和らげるためには患部を温めた方が効果があるので、ぜひ入浴で温まり血行を促進しましょう。
ただし、皮膚病変を刺激しないようにします。皮膚病変への刺激は疼痛、掻痒感を増強させてしまいます。
熱い湯は避けることと、身体を洗うときはゴシゴシ洗わないこと。
風呂上りの身体を拭くときも優しく。
<入浴上の問題>#2 皮膚病変から二次感染リスクがある
<入浴目標> 皮膚病変の清潔を保持し、回復を遅延させない
皮疹部位を清潔に保つことは、二次感染リスクを低減するために必要なことです。
二次感染とは、「同じ人が、ある感染症に続いて別の感染症にかかること」と「他の人に感染すること」と両方の意味があります。
皮膚病変に水泡が出現して、特に水泡が破れたり、びらん、潰瘍がある場合は、ばい菌がそこから侵入し、二次感染が起こりやすいそうなので注意しましょう。
二次感染は皮疹の回復を遅らせてしまいます。
この段階での身体の保清は基本的にはシャワー浴です。
皮膚病変には石けんを使用せず軽く洗浄し、消毒後、医療機関で出された外用薬を塗布しましょう。
頭部や顔に皮疹がある場合は石けんを使用せずに洗浄しましょう。
爪を切り、爪を滑らかにしておくことも、無意識に皮疹や水泡を爪で傷つけてしまうことを防ぎ、二次感染を予防します。
<入浴上の問題>#3 疼痛や掻痒感によって睡眠不足や食欲不振が出現している
<入浴目標> ストレスを緩和する
疼痛や掻痒感により睡眠がとれなかったり食欲が出ないことがあります。
苦痛や不安がある場合は医師に遠慮なく相談するようにしましょう。
入浴やシャワー浴は感染予防だけでなく、気分転換にもなるのでストレス緩和にとても効果的です。
睡眠不足でお悩みであれば、日中はできるだけ眠らないようにして、夜の就寝1~2時間前に入浴すると入眠しやすいと思いますので是非試してみて下さい。
◆治った後におこる神経痛に注意
帯状疱疹が発症してから3ヶ月以上経っても痛みが継続する場合があります。
「帯状疱疹後神経痛」という名の坐骨神経痛です。
そもそも帯状疱疹にあらわれる最初の症状は坐骨神経痛です。
なので最初のうちは「腰痛かな?」と帯状疱疹だとは気付きにくく、後に疱疹が出てから帯状疱疹だと分かることが多いようです。
治療の開始が遅れるほど、治った後にも神経痛が残る可能性が高いと言われています。
神経痛と共に疱疹があらわれたら、すぐに皮膚科で受診する必要があります。
◆おすすめのアロマバス◆
帯状疱疹の入浴ケアとして用いる精油は、
①帯状疱疹の皮膚病変
②帯状疱疹後神経痛
の二つに分けてアプローチする必要があります。
①帯状疱疹の皮膚病変
皮疹などの皮膚病変は痛みやかゆみを伴います。
これらの不快症状には鎮痛作用や抗掻痒作用のある精油で対処し、
抗ウイルス作用や抗炎症作用のある精油で皮膚症状の治癒を促進します。
また、痛みやかゆみからくる不眠やストレスなどを緩和する鎮静作用も有効です。
加えて傷ついた皮膚の修復を促進する作用のある精油があれば理想的ですね。
②帯状疱疹後神経痛
抗ウイルス作用はあまり意味が無く、鎮痛作用に特化したブレンドで傷ついた神経の回復を待つ。
帯状疱疹に有効な精油
●ペパーミント
高い鎮痛作用を持つ。ミント系の入浴剤があることからも分かるようにアロマバスとしても活用できるが、刺激が強いので用量には気を付ける必要がある。ペパーミントに触れた部分の皮膚は冷たさを感じるが、あれは実際に冷えているのではない。メントールの成分が皮膚の冷覚受容体に結合する性質があって、それに脳が冷たいと勘違いを起こし、体温を上げようとして血行を促進させることが本来の目的である。
●カモミール・ローマン
抗ウイルス、抗炎症、鎮痛、鎮静作用を持ち、肌の保湿にも効果のある精油。
●ラヴィンサラ
よく似た名前の「ラベンサラ(ラベンサラ・アロマティカ)」という精油とは成分も香りも別物ですが、帯状疱疹に対して有効な抗ウイルス作用やストレスを緩和させる鎮静作用は共通しているのでどちを用いても良いのではないでしょうか。
●ユーカリ・シトリオドラ(レモンユーカリ)
同じユーカリでもグロブルスやラディアータのような気持ちがシャキッとする香りではなく、シトリオドラは精神を安定させて落ち着かせる香りであるのが特徴で、痛みによるストレスを緩和する。主成分のシトロネラール(アルデヒド類)には高い抗炎症作用と鎮痛作用がある。
アロマバスの例
★かゆみが強い場合
キャリアオイル(植物油) 小さじ2
ティートゥリー 2滴
ラベンダー 2滴
カモミール・ローマン 1滴
(ティートゥリーには高い抗ウイルス作用がある。かゆみを抑えて不快な気分を鎮める定番ブレンド)
※妊娠中・授乳中の使用は控えましょう
★痛みが強い場合
キャリアオイル(植物油) 小さじ2
ラヴィンサラ 2滴
パルマローザ 2滴
ユーカリ・シトリオドラ 1滴
(鎮痛・鎮静に優れ、治癒を促進する組合せ)
※妊娠中の使用は控えましょう
★帯状疱疹後神経痛が残った場合
キャリアオイル(植物油) 小さじ2
ペパーミント 1滴
ユーカリ・シトリオドラ 1滴
ゼラニウム 3滴
(麻酔のように痛みを軽減する作用に特化したブレンド)
※妊娠中・授乳中・乳幼児の使用は控えましょう。ペパーミントは皮膚刺激があります。
(最終更新日:2017/4/2)
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