女性の大敵でもある冷え性(男性もだけど)
入浴は冷え性対策に最適な方法でもありますが、意外と入浴法を間違っているために逆効果になっている場合も多いそうです。
ところで。
冷え性に悩まされている人は多いのに、意外と理解されていないのが冷え性ではないでしょうか。
例えば「寒がり」と「冷え性」の違い。同じことのように思えるかもしれませんが似て非なるものです。
この違い、説明できますでしょうか・・・
では「冷え性」と「冷え症」ではどうでしょう。
パッと見では気づきにくいですが「性」と「症」、この字の違いが意味するものは?
そしてよく間違えられるのが「低体温」と「冷え性」
この二つは決定的な違いがあります。
しかも、そもそも冷え性という病名は存在しません。
「???」となった人のために、まずはこれらと冷え性の違いを比べてみましょう。
●「寒がり」と「冷え性」の違い
「寒がり」とは、寒さが苦手で敏感な人のこと。厚着をしたり暖かい場所へ移れば解決するので問題にはならない。
「冷え性」とは、ホルモンバランスや自律神経などの乱れにより血行不良を起こし、手足の先など体の一部が冷えていると感じること。寒さのせいではないので夏でも冷え性はあるし、厚着をしても解決するわけでもない。
●「冷え性」と「冷え症」の違い
「冷え性」は冷えていると感じている主観的な感覚であり体質のことを意味する。
それに対し「冷え症」とは、症状の「症」だから、冷え性によって何らかの症状がでた状況を「冷え症」と呼ぶ。だからこちらは病名。と言ったり、医療機関で治療が必要だと診断されれば「冷え症」と呼ぶ。冷え性が悪化したもの。などと、いろいろな見解はあるが、実は冷え症に関してはどれも後付け理論の可能性があり、ここでは冷え性と同義とする。冷え性同様、冷え症という病名も実は医学用語にはない(東洋医学では冷えという概念はある)
●「低体温」と「冷え性」
「低体温」とは、体温が36℃未満の人のことを指す。低体温も病名ではないが、体温は常に36℃以上を保っていなければならないので低体温は異常事態の一種。冷え性は手足の先が冷たくても臓器などが集まる深部体温は保たれているので、低体温はより深刻な状況を意味する。原因はホルモンバランスや自律神経の乱れなどが考えられるので、改善策は冷え性と同じと考えてよい。
『【健康】 「冷え性」より怖い「低体温」(症状編)』 参照
『【健康】 「冷え性」より怖い「低体温」(改善編)』 参照
◆入浴上の問題リスト◆
#1 毎日入浴しているのに冷え性が改善されない
#2 しっかりと温まるために全身浴をしたいが体に負担を感じる
#3 手足の先は冷えていないが胃腸が弱い
#4 月経痛(生理痛)が気になって入浴できない
冷え性とは原因が血行不良など体の内にあり、いくら外部環境を変えても解決できるものではありません。
部屋を暖かくしようと、くつ下を重ね履きしようと、冷え性が改善されるわけではないということです。
手足の先が冷たいということは末端の毛細血管まで血の巡りが来ていないからですが、 それは臓器など体の大事な部分に血液が集まっているからなんですね。
体が熱を作りにくくなっているために、手足などを犠牲にしてでも臓器など深部体温を優先的に守ろうとしている状態が冷え性なんです。
なので、冷え性の改善策は、体の内から温まるようにする。
言い換えれば「体が熱を産生する状況を作る」、それは代謝する、カロリーを消費すること。
運動もそうだし食事もそうだし入浴もそう。
つまり生活習慣の見直しや体質の改善が本当の冷え性対策なんです。
◆入浴法◆
<入浴上の問題>#1 毎日入浴しているのに冷え性が改善されない
<入浴目標> 冷え性に対する正しい知識を持って改善する
入浴については気を付けなければならないことがあります。
それは冷え性だからといって熱い湯に浸かること。
熱い湯に浸かれば温まりそうなイメージはありますが、これこそ部屋を暖かくしたり厚着をしたりするのと同じ、外部から体を温めようする発想です。
そうではなくて適温でじっくり温まって血流を促進する。それこそ、外から温めようとするのではなく内から温める感じをイメージしましょう。
冷え性にも程度があるかもしれませんが、39~40℃のお湯に全身浴で15分の入浴が目安です。
半身浴の場合は20~30分。
冷え性だから半身浴では体が温まらないという意見もありますが、そんなことはありません。
それって、もしや浴室内が寒くなっていやしませんか?
あらかじめ浴槽のフタを開けておいたりシャワーを出しておいたりして、浴室内を温めておくことをオススメします。
冷え性でも半身浴で体は温まります。その理由がちゃんとあります。
身体を温めるには身体のどの部位を温めると効果的かご存知でしょうか?
実は血管の太いところ。そこは血流が多いところなので、太い血管を温めてやれば全身に熱が行き渡りやすくなるわけ。
具体的には、首のところにある「頸動脈」、 脇の下にある「腋窩動脈」、 ヘソ下あたりにある「腹大動脈」、脚の付け根( 鼠径部)あたりにある「大腿動脈」が該当します。
なかでもお腹の腹大動脈は血管の中でも一番太く、お腹をじっくり温めてるとその熱が全身に行き渡ることが期待できます。
半身浴ではこの腹大動脈と大腿動脈を温めることになるので、上半身が湯に浸かっていなくても温まるわけです。
全身浴なら首の頸動脈も温まりますが、脳に近いために全身が温まる前にのぼせてしまう可能性もありますからね。
そういう意味では半身浴の方が確実に温まれるかもしれません。
しかし、必要以上の長湯はやめましょう。
「半身浴 = 長湯」はよくある誤解です。
長湯は体力を奪いますし、体内の水分が失われて血液がドロドロになり血流が悪くなれば逆効果になってしまいます。
冷え性改善には質の高い睡眠も重要です。
冷え性の直接の原因は血行不良によるものが大きいですが、
それは自律神経の乱れからきている場合が多いからです。
だから生活習慣の見直しが必要となるわけですが、
睡眠は自律神経を整えるのに大切な要素となります。
しかし冷え性の人は寝付きが悪いもの。
それは何故かといえば、ヒトは体温が少し下がっている過程で眠くなる習性があるからです。
眠たくなると体温が下がるのは代謝を下げてエネルギーを節約するため。
しかし冷え性の人は最初から冷えを感じているので「体温が下がる過程」を感じることができません。
また冷え性によって手足が冷えていることも熱を放出できない要因となっています。
体温を上げて体が火照っている状態にするために入浴が有効になります。
しかも入浴によって手足などの末梢まで血流が良くなることで熱を放出することができ、体温が下がりやすくなります。
一度体温を上げてから下げる。そうすることで入眠しやすくなるわけです。
一般に入浴後1~2時間後が入眠しやすいタイミングだと言われています。
寒い季節、さらに心地よく入眠するためには電気毛布よりも湯たんぽがオススメです。
腹大動脈の流れるお腹を温めてると良いでしょう。
湯たんぽの良いところは経済的だということよりも、そのうち冷めていくから。
電気毛布はずっと温かいでしょう。
これでは「体温が下がる過程」がありませんからね。
入眠しやすいタイミングが訪れにくいことになります。
また体温が下がらないと体の機能が休まりません。
結果、自律神経のバランスが乱れ、冷え性を悪化させてしまうこともありえます。
同様の理由で、くつ下を履いたまま眠る行為も冷え性の改善にはなりません。
(ただし、冷えが辛すぎる場合は対処法としてくつ下を履くのもアリ)
冷え性対策には誤解が多いのです。
<入浴上の問題>#2 しっかりと温まるために全身浴をしたいが体に負担を感じる
<入浴目標> 体に負担がかかりにくい入浴をして血流を改善する
半身浴より全身浴が好き。でも体が温まる前に湯疲れをして10分も浸かっていられない。または体に負担を感じるという人は「反復浴(分割浴)」をオススメします。
「反復浴(分割浴)」とは短時間の入浴と休憩を繰り返す入浴法です。
例えば3分間入浴して3分間休み、また3分間の入浴をする。5分間入浴して3分休んでも良いし、それは自分の調子に合わせれば良いでしょう。
この入浴と休憩を1セットとし、3回繰り返すのがひとつの目安です。
反復浴(分割浴)ならば1回あたりの入浴時間が短いので体に負担がかかりにくいですよ。
温泉へ行けば、40℃を超える所が数多ありますので分割浴を推奨している場合が多いはずです。
『【入浴】 反復浴(中温反復浴)とは』 参照
それから、少しでも短い時間で効率よく温まりたいのなら、入浴剤も工夫するとよいでしょう。
シュワシュワと気泡の出る炭酸ガス系の入浴剤は血管の拡張作用があるので、血行促進を促進する入浴剤として有用です。
また、重曹とクエン酸を混ぜると家庭の浴槽でも簡単に炭酸風呂に変身するので、体調に合わせて効き具合を調整したいのであれば市販の入浴剤ではなく、自作の炭酸風呂で血行促進を図るのも良いでしょう。
『【入浴】 家庭でできる「炭酸風呂」』 参照
薬用の入浴剤も冷え性に効果がありますよ。
漢方では冷え性には当帰芍薬散が用いられるように、入浴剤の成分に当帰(とうき)や芍薬(しゃくやく)が含まれたものはもちろん、川?(せんきゅう)や生姜(しょうきょう)を含んでいる薬用入浴剤がお勧めです。
これら血行促進に優れた入浴剤を用いることで、体が温まるまでの時間を短縮することができます。ぜひ活用してみて下さい。
<入浴上の問題>#3 手足の先は冷えていないが胃腸が弱い
<入浴目標> 自律神経のバランスを整えて改善する
全身の血流が悪くなると代謝が悪くなり内臓が冷えてしまいますが、ヒトの体というものは内臓の機能を維持するために深部体温(体幹部分の熱)が皮膚血管より放熱されるのを防ぐため、細動脈を収縮させて皮膚末梢血管の血流を少なくして深部体温を維持します。
そのため体温は維持されますがその代わり手足の先が冷たく感じる。それが冷え性なわけですが、そのときに働くのが自律神経の交感神経です。
交感神経が必要に応じて働き、細動脈を収縮させているわけですね。
しかし、自律神経の機能が低下していると、交感神経と副交感神経の切り替えが正常に働きません。
全身が冷えているのに交感神経が働かない場合、血流を制限できずに手足の先から放熱されてしまい、どんどん内臓が冷えていってしまいます。
このような、手足の先に冷えを感じていないが内臓が冷えているタイプを「内蔵型冷え性」といい、主に自律神経の機能が低下していることが原因となっています。
内臓が冷えていると当然胃腸の働きも悪くなり、便秘や下痢の原因にもなります(これを過敏性腸症候群という)
『【入浴】 「過敏性腸症候群」の入浴法 ~腸脳相関に注目する~』 参照
また、代謝が悪くなるので疲れやすくなったりもします。
つまり、血圧をコントロールしている自律神経が正常に機能しないことが内蔵型冷え性の原因となっていることがあるんですね。
このような場合に最適な入浴法が「温冷交互浴(温冷交代浴)」
「温冷交互浴(温冷交代浴)」とは熱いお湯と冷たい水(温度差30℃くらい)を交互に浴びて身体を刺激する入浴法。
普通の湯と水風呂を交互に浸かる全身浴のやり方と、
シャワーなどで主に下半身へ熱い湯と冷たい水を交互浴びせるやり方とがあります。
心臓に負担がかからないようにするなら後者がおすすめです。
温めると血管が拡張、冷やすと収縮します。
温と冷、交互に刺激を与えるとそのたびに血管が伸縮するので、
ポンプ機能作用が促進され血流が良くなるというわけです。
ちなみに最後は冷で終えましょう。
皮膚の毛穴をキュッと締めて体内の熱を閉じ込めます。
サウナ後の水風呂に保温効果があるのと同じ理屈です。
この温冷交互浴は元々、冷え性や肩こりなど血流を改善する療法として利用された入浴法ですが、
筋肉においてはより酸素や栄養が供給され老廃物は排泄されるので疲労回復や筋肉痛の緩和に効果あるとして、現在ではスポーツの分野でも取り入れられている入浴法です。
『【入浴】 「筋肉痛」の入浴法 ~温冷交互浴とHSP入浴~』 参照
ただし、温冷交互浴は体への負担が大きい入浴法です。
高血圧や心臓への不安を抱えている人は、半身浴や分割浴をオススメします。
<入浴上の問題>#4 月経痛(生理痛)が気になって入浴できない
<入浴目標> 足浴(足湯)を活用するなど工夫する
◆おすすめのアロマバス◆
冷え性には体の芯から温まる作用のある精油、例えば「加温」「体液循環促進」「血管拡張」作用のある精油がアロマバスに向いています。
●ジンジャー
体が温まる精油の筆頭候補。便秘など消化器系の不調にも効果があるため、内蔵型冷え性にもお勧めです。
●マージョラム・スイート
血管拡張作用があるので血流改善に期待ができる。高血圧による冷えのぼせ型の冷え性(冷えがないのに手足の先は冷えているタイプ)にも期待できますが、反対に低血圧による冷え性の人には適していない精油です。
●オレンジ・スイート
体を温める作用があります。ストレスや緊張、不安などを感じている場合にはオレンジの香りで一息入れましょう。
アロマバスの例
★とにかく温まるブレンド
天然塩 大さじ2
ジンジャー 1滴
ローズマリー・シネオール 1滴
オレンジ・スイート 2滴
(加温作用のあるジンジャーと体液循環作用のあるローズマリーでバスソルト。内蔵の血流を促進するブレンドなので半身浴でもしっかり温まります。内蔵型冷え性にもお勧め)
※妊娠中・授乳中・乳幼児・敏感肌の使用は控えましょう。高血圧の人には向いていません。
★冷えのぼせ型の冷え性には
重曹 大さじ2
クエン酸 大さじ1
マージョラム・スイート 2滴
ラベンダー 2滴
(重曹+クエン酸で炭酸風呂に。炭酸風呂には血管拡張作用がある。ラベンダーで心を落ち着かせ安眠へとつなげたい)
※妊娠中・授乳中の使用は控えましょう。低血圧の人には向いていません。
★冷えを伴う月経痛(生理痛)があるときの足浴
ゼラニウム 1滴
オレンジ・スイート 2滴
(ゼラニウムには鎮痛作用とホルモンの調整作用がある。月経量が少ない場合はクラリセージやマージョラムに変える)
※妊娠中・授乳中の使用は控えましょう
(最終更新日:2017/04/24)
関連記事
『症状別の入浴法』