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【入浴】 「過敏性腸症候群(IBS)」の入浴法 ~腸脳相関に注目する~


過敏性腸症候群(IBS)とは、胃腸に異常が見当たらないのに便秘や下痢など便通に異常が起こる状態のことです。

症状によって便秘型下痢型交替型(便秘と下痢を交互に繰り返す)の3タイプと、いずれにも該当しないタイプとがあります。
いずれにも該当しないタイプには、おならが止まらなくなるガス型などが含まれます。
腹痛膨満感を伴うこともあるそうです。

腸のぜん動運動が低下すれば便秘に、過剰に動けば下痢になりますが、いずれにしても腸の機能障害によるものです。

原因ははっきりしていませんが、不安やストレスといった心因性の症状だと考えられています。
食生活や睡眠などの生活リズムも関係しているようです。

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腸は自律神経によって支配されているといっても過言ではありません。

不安やストレスによって自律神経のバランスが崩れると腸の機能にも悪影響を及ぼします。
また、「腸は第2の脳」と言われるほど腸と脳の関係が深い(腸脳相関)ことも知られています。

そのため、「便秘」ひとつを取ってみても、それが過敏性腸症候群によるものだとすれば、自分で市販の薬を買って使用しても効かない場合があるかもしれません。処方すべき薬が違う可能性もあるので、「治らないな?」と思ったら一度受診されることをお勧めします。



◆入浴上の問題リスト◆


#1 腹部に明らかな異常はないが、慢性的な腹痛や腹部の不快感が続いている
#2 温冷交互浴(温冷交代浴)を行っても症状が改善されない



「腸脳相関」と言われるとおり、腸と自律神経は深い関係にあります。
自律神経系の乱れは消化管機能の乱れ。そんなわけですから入浴法としては、腸の働き及び自律神経のバランスを整える入浴を心掛ければ良いということになります。
ただし注意が必要なのは、消化管の機能低下が自律神経の乱れを招いている可能性もあるということ。



◆入浴法◆



<入浴上の問題>#1 腹部に明らかな異常はないが、慢性的な腹痛や腹部の不快感が続いている

<入浴目標> リラックスしてストレス解消をする



心因性による過敏性腸症候群の入浴法は、リラックスすることが重要です。

38~40℃15~20分、ゆっくりと湯船に浸かりましょう。

時間が長いので半身浴がお勧めです。


どうせなら湯船に浸かりながら「腸もみ」を試してみると良いかもしれません。

自分でお腹を押してみて、張っているところそうでないところがあれば揉んでみることで改善されるかもしれません。


便秘を伴う場合は、お腹に手のひらを当て「の」の字を描くようにさすることも有効です。


また、過敏性腸症候群に効くといわれているツボがありますので、
代表的な2つのツボを自分で刺激してみるのも良いでしょう。

一つは、人差し指と親指の骨が交差する部分の手前にあるくぼみで、手の甲側にある「合谷(ごうこく)

もう一つは、人差し指の爪の生え際で、親指に近い方にある「商陽(しょうよう)」です。

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イタ気持ちいいと思えるくらいに逆の手で摘まんでみて下さい。



では下痢を伴う場合はどうでしょう。


自律神経というのは交感神経と副交感神経からなります。

交感神経は、例えば運動や不安、興奮など活発な行動や緊張状態の時に強く働きます。

副交感神経はその逆で、睡眠中やリラックスした状態の時に強く働きます。

胃や腸などの消化管は副交感神経が優位の時に活発に働きます
運動中や仕事中などは食べたものを消化している場合ではありませんからね。

つまり
○交感神経が優位な時・・・腸の働きを抑える
○副交感神経が優位な時・・・腸の働きが活発になる


ちなみに
○便秘・・・腸のぜん動運動を活性化させる必要がある
○下痢・・・腸のぜん動運動を落ち着かせる必要がある


ここで気を付けることがあります。

普通であれば、下痢の場合は交感神経を優位にすれば良いということになりますよね。
熱めの湯(42℃)は交感神経を刺激しますので、腸の働きが抑えられ下痢の症状が改善されると思われるかもしれません。

ところが過敏性腸症候群による下痢はそう単純ではありません。

ストレスなどが原因で自律神経のバランスが乱れているのが過敏性腸症候群の特徴。

運動中や仕事中などは交感神経が優位になって胃腸の働きが抑制されなければいけないのに、そんな時でさえ腸のぜん動運動が活発に働いてしまうのが過敏性腸症候群による下痢です

これが過敏性腸症候群が心因性によるものだと考えられている所以で、
ストレスが自律神経を介して腸に伝わり運動異常をきたしている状態なんですね。

で、この便秘や下痢による不調が脳にストレスを感じさせ、このストレスがまた自律神経を・・・の繰り返しが過敏性腸症候群。

そういう訳で、過敏性腸症候群による下痢に対しては交感神経を刺激するような熱いお湯はダメで、
結局のところ、リラックスを得られる38~40℃が良いということになります。

根本的な原因はストレスなどの心因性なのでリラックスすることが最優先になるわけです。

過敏性腸症候群による下痢には単なる下痢止めの薬を飲んでも症状が改善されないのと同じことですね。


なお、食後すぐの入浴は控えましょう。

食後は血液が胃腸に集まり消化活動を促進しますが、食後すぐに入浴すると血流が全身に分散し、消化活動の妨げとなってしまうからです。

そのため、食後の入浴は少なくとも1時間は空けましょう



<入浴上の問題>#2 温冷交互浴(温冷交代浴)を行っても症状が改善されない

<入浴目標> お腹を温めて腹部の血流を促進する



自律神経の乱れが過敏性腸症候群の原因となるのであれば、自律神経系のバランスを整える「温冷交互浴(温冷交代浴)」は最適な入浴方法だと考えることができます。

温冷交互浴とは、熱いお湯と冷たい水(温度差30℃くらい)を交互に浴びて身体を刺激する入浴法です。
自律神経系の交感神経と副交感神経が交互に刺激されることで自律神経機能の正常化が期待できるのがメリットです。


『【入浴】 温冷交互浴(温冷交代浴)とは』 参照


過敏性腸症候群の改善のために、実際にこの温冷交互浴を実践されている方も多いと思われます。

しかし、症状の改善が認められないケースも多いようです。

腸の働きと自律神経の働きは深い関係にある(腸脳相関)ということは先述しましたが、これは自律神経の乱れが腸の機能低下になっているばかりでなく、腸の機能低下が自律神経の乱れを招くことでもあるということです。

「腸脳相関」というくらいですから、どちらかが調子悪いと悪循環にはまることになるわけです。


もし、何らかの理由で便秘や下痢を起こしている状態が続くことで自律神経が乱れているのだとすれば、お腹を温めて腹部の血流を促進し、まずは消化管の機能を正常化させることが優先されます

温冷交互浴で症状が改善されない人は、原因が自律神経ではなく腸の不調が先にある可能性も考えられますので、40℃以下のお湯にゆっくり入って血流を良くしてお腹を中心にして温まりましょう。



(最終更新日:2017/04/28)


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『症状別の入浴法』