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【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?② 「顆粒球」と「リンパ球」のバランス説


どうもSHIBAです。

前回に続き、「免疫力のバランスとは?」について考察してみます。

「免疫力は高すぎても低すぎてもダメ」という考え方には無理があるというお話しをしました。

そもそも「免疫力」という用語は存在せず、ここでいう免疫力とは、主に免疫細胞の活動力を意味するものと推測しますが、
免疫細胞には様々な種類があり全てが同じ働きをしているわけではありません。



「顆粒球」と「リンパ球」のバランス説


免疫細胞全体のうち大きな割合を占めているのは「顆粒球」「リンパ球」です。
この比率バランスがどちらかに偏ると病気になりやすいという説があります。

顆粒球は、病原体(主に細菌)が体内に侵入した場合に真っ先に駆けつけてこれを撃退しようとします。
しかし、顆粒球は炎症を起こすので、顆粒球が増えすぎると動脈硬化がんなどの引き金になるそうです。

また、リンパ球は、細菌よりも小さな異物(ウイルスや花粉、ダニなど)の駆除に対応します。
しかし、リンパ球が増えすぎると異物に対する過剰な反応、つまりアレルギー症状を引き起こしやすくなるそうです。


この構図は分かりやすく書くと

「顆粒球>リンパ球」 … アレルギー体質ではないが動脈硬化やがんになりやすい

「顆粒球<リンパ球」 … アレルギー体質だが動脈硬化やがんになりにくい


ということになります。


これは結構支持されている説ですが、この構図には少し誤解を招く可能性があります。

顆粒球が促進されるとリンパ球が抑制され、逆にリンパ球が促進されると顆粒球が抑制されるように見えますが、そうではありません。

実は顆粒球を活性化させるのはリンパ球の指令によるものなので、両者は密接な関係にあります。

顆粒球には「好中球」「好酸球」「好塩基球」の3種があり、それぞれ細菌やウイルス、寄生虫にアレルギーの素となる物質など対応する相手に違いがあります。

そして好中球なら「IL-17」、好酸球なら「IL-5」、好塩基球なら「IL-4」というサイトカイン(情報伝達物質)によって活性化されます(「IL」は「インターロイキン」の略)

これらサイトカインは全てリンパ球である「ヘルパーT細胞」が産生するので、リンパ球の働きが悪いと顆粒球も活性化されないということになります。


ちょっとここで、顆粒球の大半を占める好中球に注目してみます。

好中球は、主に細菌などの病原体を貪食することで身を守ってくれています。

上記のように「IL-17」よって、細菌の周りに好中球が集まってきますが、そのままでは細菌を食べてくれません。

好中球がしっかりと働くにはもう一つ条件がありまして、それは抗体が細菌の表面に結合することです。

抗体が細菌と結合することで好中球が食べやすくなるんですね。
細菌の表面に抗体がたくさん結合すれば、それだけ好中球の食欲が増進されるみたいなものです。
この「抗体が病原体に結合して食べやすくする」ことをオプソニン化作用といいますが、問題のその抗体はやはりリンパ球であるB細胞が産生しています。

抗体


ということで結局のところ、好中球が頑張り過ぎて炎症を起こし、動脈硬化やがんを招くほど活性化されるには、その裏でリンパ球の働きも相当あるはずで、「顆粒球が多すぎるからがんになりやすい」とは一概に言えないはずなんですね。

そう。問題なのは数ではありません。

いくら好中球が増加しても活性化されなければ炎症は起こさないはずで・・・


では、好中球が増加するのはどんな条件かといえば、それは細菌などの病原体が侵入してきた時。

白血球は骨髄で作られます。なので好中球も骨髄で作られるわけですが、細菌感染症になるとその細菌を除去するために好中球が動員されます。

最前線で戦死した分だけ好中球は骨髄で作られ補充されます。しかし敵の数が多ければ、その分だけ好中球も多く作られます。

これが好中球が増加した状態です。
よく血液検査で「白血球が多いですね」と言われたら、それは好中球が多いということだと思って構いません。

もちろん、好中球の数が多ければ、細菌を撃退する代わりにそれだけ炎症を起こす可能性も高くなりますが・・・

ここで注意しなければならないのは「細菌が多い=好中球が多い」とは限らないということ。

細菌の数が多すぎて好中球の増産が間に合わず「細菌が多い=好中球が少ない」ということもあり得るからです。

また、好中球が多いからといっても、それは「細菌に対応するするため増産はしたものの、リンパ球の働きが悪いために活性化されず、ずっと待機状態になっている」という可能性も考えられます。
又は、数は多くてもその中には、急いで増産されたためにまだ未熟な好中球も含まれている場合もあるでしょう。


・・・と。

このように見ていくと、単に数の比率バランスだけをみて

「顆粒球>リンパ球」 … アレルギー体質ではないが動脈硬化やがんになりやすい

「顆粒球<リンパ球」 … アレルギー体質だが動脈硬化やがんになりにくい


という構図は、当てはまる場合もあればそうでもないこともある・・・と言えそうです。


しかも、病原体が細菌ではなくウイルスの場合、好中球ら顆粒球ではなくリンパ球の出番になります。

つまり、全ての異物に関与しているのはリンパ球であり、注目するのはリンパ球の働き方ではなかろうか。


(SHIBA)


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