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【入浴】 「骨粗鬆症」の入浴法 ~体温を1℃上げる~


骨粗鬆症とは骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気。

骨粗鬆症は加齢とともに増加し、さらに女性は男性の約3倍多いのが特徴です。

特に80歳以上の女性は、半数近くが骨粗鬆症ではないかと言われています。

高齢者の女性に骨粗鬆症が多いのは理由がありまして、これはエストロゲンなどの女性ホルモンと関係があります。

正常な骨は常に、破壊(骨吸収)と修復(骨形成)を繰り返す新陳代謝によって維持されています。

エストロゲンは骨形成を促進し、骨吸収を抑制する働きがあるため、閉経後の女性はエストロゲンの低下により骨粗鬆症が進行しやすいんですね。

男性も高齢化とともに骨の強度は弱くなりますが、男性は女性と比べて元々筋肉も骨も強いので女性ほど顕著ではありません。


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◆入浴上の問題リスト◆


#1 腰背部痛がある
#2 疼痛や筋肉低下により、浴室で転倒する危険性がある
#3 圧迫骨折による痛みが強く、入浴が困難である



日常生活において、骨粗鬆症を予防、療法としては食事と運動が基本となりますが、実は入浴も効果的

骨粗鬆症の直接的な改善に繋がるわけではありませんが、血行を良くすることは骨粗鬆症にとって有効です。

骨にだって血液は流れているんですよ。

血行が改善されることで、骨密度にとって重要なカルシウムなどの栄養素が骨に行き渡ります

反対に血行が悪いことによる悪影響は、骨に栄養素が行き渡らないばかりではありません。

骨粗鬆症になると、破壊された骨に貯蔵されていたカルシウムが血液中に流れ出て(骨吸収という)、
このカルシウムが血管壁に沈着し、時間が経つと石灰化してしまい、動脈硬化へと発展する危険があるんです。

そういうわけで骨粗鬆症と動脈硬化は深い関係があるそうです。



◆入浴法◆


<入浴上の問題>#1 軽い腰背部痛がある

<入浴目標> 体温を上げて疼痛を緩和する



骨粗鬆症になると約8割の人が腰や背中に痛みを自覚していると言われています。
その感じ方は人それぞれで、痛みを感じる頻度や痛みの強弱は人により違います。

骨粗鬆症は骨が弱い状態なので、少し負担がかかるだけで背骨が潰れたり(圧迫骨折)、ちょっと転ぶだけで骨折することがあり、強い痛みを感じます。

しかし骨折する前から痛みが起こる場合もあります。
疼痛の原因は破壊(骨吸収)と修復(骨形成)のバランスの乱れにあるそうです。

骨粗鬆症の場合は骨の破壊(骨吸収)が活性化されていて、これにより炎症を起こしていると考えられています。

ですから痛み止め(消炎鎮痛剤)を用いても一時しのぎでしかなく、原因である骨粗鬆症には効果はありません。医療機関を受診する必要があります。


さて、痛みが強い場合は別として、「痛みが軽い」「時々痛むことがある」というような場合は、入浴して体を温めることは疼痛の緩和に効果があるとされています。

体が温まることで血行が促進され、栄養が患部に行き渡りやすくなるので、シャワーのみで済ますのではなく、しっかりと浴槽に浸かりましょう。

また、体が温まることは女性ホルモンであるエストロゲンを活性化することにも影響します。

体を冷やすとエストロゲンは減少するらしいので、「冷え」は骨粗鬆症の大敵です。

女性は更年期になると自律神経が乱れやすくそれにより冷えが起こりやすく、また骨粗鬆症になりやすい。
これらはエストロゲンの低下と密接な関係にあるということがよく分かりますね。


入浴の目標は体温を1℃上げること

体温が1℃上がると、血管の内皮細胞からNO(一酸化窒素)が産生されて、これが血管拡張に働いて血行が促進されることが分かっています。

体温を1度上げるには全身浴の場合、41℃のお湯に約10分入浴することが目安となります(40℃なら約15分)

半身浴にする場合はこれにもう5~10分足して下さい。


ここで入浴剤としてお勧めしたいのがバスソルト

バスソルトが骨粗鬆症に効果があるというエビデンスは確立されていないので、あくまでも提案という形になりますが、バスソルトに使用される天然塩やエプソムソルトにはマグネシウムが豊富に含まれており、マグネシウムはカルシウムやリンと同じくミネラルの一種で骨の成分となります。つまりマグネシウム不足は骨粗鬆症の原因となるんですね 。

血液中のミネラルが不足してくると、骨に蓄えられているミネラルが血液中に放出されて体内のミネラルバランスを保とうとしますので、マグネシウムもカルシウムと同様に、不足すると骨の中のマグネシウムを溶かして血液に流れ出てしまいます。
そこでバスソルト。マグネシウムは経皮吸収されるので、バスソルトはマグネシウム不足を防ぐ効果が期待できるというわけです。

しかもバスソルトによる効果は、単に骨の成分であるマグネシウムを補うということだけでなく、マグネシウムが持つ血行促進効果も期待できます。

冷えの改善と共にエストロゲンの分泌を助けることにもなりますよね。

『【入浴】 バスソルトとは』 参照


また、エストロゲンは睡眠不足だと分泌が低下することが分かっています。

ラットを使った実験で、睡眠不足が骨粗鬆症の発症と関係しているという研究結果があります。
ヒトについてもいずれは同じ研究結果報告がされることでしょう。

ですから、規則正しい時間に入浴することもポイントですよね。

そして規則正しい時間に就寝することで睡眠不足を解消。

快適な入浴は質の高い睡眠への誘因になりますから、入浴と睡眠はセットで考えると良いと思われます。

さらに、睡眠中は成長ホルモンが分泌される時間帯でもあります。

成長ホルモンは傷ついた血管や骨の修復をする役割があることも見逃せません。

快適な睡眠は、朝の目覚めにも影響しますからね。

実は起床後も入浴がおすすめ。といっても日光浴のこと。

朝陽のシャワーをいっぱいに浴びてビタミンDを活性化しましょう。

ビタミンDはカルシウムの吸収を高めるので骨にとって大事な栄養素です。



<入浴上の問題>#2 疼痛や筋肉低下により、浴室で転倒する危険性がある

<入浴目標> 安全に入浴する




骨粗鬆症が骨折の最大の危険因子であることは広く知られています。
特に気を付けなければならないのは転倒です。

大腿骨の骨折は寝たきりの原因になりますし、転んだ時に手をつくと手首の骨が折れやすいので、転倒事故の予防は重要です。

浴室は転倒事故の発生場所になりやすいので、脱衣所や浴室には手すりを付けたり、滑り止めのマットを敷くなどの工夫が必要になります。

浴室の腰掛イスは、丈の低い物よりも高い物を使用しましょう。深くしゃがみ込むと背骨に負荷がかかるので、高さのあるイスは姿勢が安楽になるだけでなく骨折の防止にもなります

また体を洗うときは、長めの柄のついたボディブラシを使用すると楽に背中が洗えますよ。

なるべく無理な姿勢をとらないことが転倒や骨折の予防になります。


見落としやすいのが室温の変化。

特に冬場に多いのですが、温かい部屋から寒い脱衣場・浴室へ移動することで起こるヒートショック現象

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が乱高下することです。
失神心筋梗塞などを起こしかねないとても危険な現象です。

このような形で転倒するとほぼ間違いなく危険な転び方をしますので、骨折リスクはかなり高くなります。

寒い日は入浴前にあらかじめ脱衣場や浴室を暖めておくようにしましょう。



<入浴上の問題>#3 圧迫骨折による痛みが強く、入浴が困難である

<入浴目標> 安静第一



骨粗鬆症の特徴として圧迫骨折を起こしやすいことがあります。

圧迫骨折は「折れる」というより「潰れる」という表現が合う骨折の仕方をします。
とても痛いです(痛みを感じない場合もある)
数週間は絶対安静です。

圧迫骨折を起こしたらしばらくはお風呂に入ってはいけません

最初が肝心で、ここで無理をしたら完治が遅くなりますので注意して下さい。

しかし困ったことに、圧迫骨折はぎっくり腰と似ているので皆さん結構間違えるようです。
どちらも症状は表面に出ず、腫れがあったりするわけでもないので、過去にぎっくり腰を経験している人だと「またか」と勘違いしてしまうらしい。

ぎっくり腰は1週間で痛みがひくことが多いのに対し、圧迫骨折は3~4週間は痛みが持続するものなので、ぎっくり腰だと思って放置していると大変なことになるので注意しましょう。

圧迫骨折をした場合は浴槽浴は諦めて、清拭足浴(足湯)で過ごしましょう。



◆おすすめのアロマバス◆



女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下すると骨粗鬆症のリスクが高まることから、エストロゲン様の作用のある精油を中心に鎮静・鎮痛作用のある精油をブレンドするのが基本となるかと思います。

エストロゲン様の作用がある精油は複数ありますが、なかでもエストロゲンと似た作用のある「スクラレオール」を成分に持つクラリセージは、鎮静・鎮痛作用も併せ持つのでPMSや更年期障害にも効果が期待できる精油の一つです。

クラリセージとブレンドするのに相性が良いのは柑橘系と樹木系です。

基剤には天然塩かエプソムソルトを用いてバスソルトにしましょう。


アロマバスの例


疼痛がある場合
 エプソムソルト(天然塩でも可) 大さじ2
 クエン酸 大さじ2
 クラリセージ 2滴
 サイプレス 2滴

 (樹木系のサイプレスにもエストロゲン様の成分がある。ミネラルの吸収を促進するクエン酸を加えてみる。これはバスソルトのマグネシウムの経皮吸収を促進するという意味ではなく、経口摂取したミネラルの吸収率を高めるのが目的)
 ※妊娠中の使用は控えましょう。



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『症状別の入浴法』