便秘の対策法はよく語られますが、下痢についてはあまり聞きませんね。
これから夏本番に向けて、
うっかり水分を摂り過ぎて腹が下る可能性が高くなります。
下痢になった場合、入浴は何に気を付ければ良いでしょうか。
入浴は下痢にとっても有効です。
腸を温めてリラックスすることで、副交感神経に働きかけることが大切です。
これは便秘の時と同じですが、腸の働きを正常化させることが目的です。
1.冷えによる下痢
女性に多いのがお腹の「冷え」による下痢。
冷えると下痢になるのは余分な水分を排泄してお腹まわりを温めやすくするためです。
例えば鍋に張った水を温めたい時は、少し水の量を減らした方が早く温まりますよね。
それと同じで体も余分な水分は排泄して体温を維持しようとします。
体内の水分は摂取量と同じだけ排泄されていて、排泄は発汗、呼気、尿と便によって行われています。
しかし、困ったことに「冷え」が生じている時は発汗がありません。
よってその分だけ尿や便による排泄量が増えることになりますが、
普通はその度にイチイチ下痢にはなりません。
その代わり寒い時にオシッコが近くなるのはそのためです。
そうやって体の大切な部分(内蔵関係)の熱を維持しようと努めますが、
お腹まで冷えてしまうと下痢という形で水分を排泄し、お腹まわりを温めやすくしようとします。
というわけで、冷えによる下痢の場合の入浴法ですが、
これもやはりお腹を温めてやることが基本。
40℃以下のお湯にゆっくり入って血流を良くして温まる必要があります。
2.腸のぜん動運動が活発すぎることによる下痢
それから、便の大腸を通過するスピードが速すぎて水分の吸収が間に合わずピーになるパターンの下痢もあります。
これは大腸のぜん動運動が活発すぎることが原因です。
カプサイシンやカフェインなどには腸を刺激する作用があります。
これら香辛料などを摂取しすぎると、腸のぜん動運動が活発化し、
すぐに便が肛門まで送られてしまい、しっかりと水分を吸収されないまま下痢になることがあるのはそういう理由があるからです。
ここでひとつ。下痢に対する入浴法でよくある誤解を紹介します。
自律神経(交感神経と副交感神経)と腸は深い関係にあります。
交感神経が優位なら腸の働きは抑制され、副交感神経が優位なら腸の働きが活性化されます。
だから下痢の場合は熱いお湯で交感神経を刺激すれば良いと考えたくなります。
しかし熱い湯(42℃以上)は長い間浸かることができません。温まったと思っても体の表面ばかりが熱を持ち、実は体の芯までは温まっていないことがよくあるんです。
結果、上記のような「冷え」を助長したり、いたずらに自律神経のバランスを乱して以下に示すような過敏性腸症候群の引き金になる可能性もありますよ。
というよりも、下痢を止める止瀉(ししゃ)作用を入浴に期待するのではなく、腸の働きを正常化させる整腸作用に期待しましょう。
下痢止めなら止瀉薬を用いるべきです。しかし気を付けなければいけないのは、、そもそも下痢とは体の中の悪いものを排除するための防御機能であること。むやみに止めれば良いというものではありません。細菌性の下痢などの場合は市販薬に頼らず医療施設の受診をお勧めします。
ちょっとここで、下痢に関するありがちな誤解をひとつ紹介します。
それは、下痢の時は水分摂取を控える人が多いこと。
お腹が下っている時に水分を摂ると余計に悪化するのではないか?と思われがちですが、
実は逆で、冷えによる水分はしっかり補給した方が良いんです。
通常、摂取した食べ物は便になって排泄されるまでに、小腸で栄養素が吸収され、大腸で水分が吸収されます。ざっくり言うと。
下痢の時は、大腸における水分の吸収が不十分のまま排泄されているので、
これは脱水症状のひとつなんです。
冷えによる下痢の場合はそれほどでもありませんが、細菌性などの炎症を伴う下痢の場合は特に脱水しやすいので注意が必要です。
「そうは言っても、経験則ではお腹が下っている時に水分を摂ると決まって治りが悪いよ」
と思った方。
それは冷たい飲み物ではありませんか?
冷たいものはお腹を冷やしますからね。それが原因かもしれません。
そんな場合は温かいものを飲んでみるといいですよ。
3.過敏性腸症候群の場合
検査してもなんら異常が無いのに、緊張やストレスからくる便の不調もあります。
これには便秘にも下痢にもなり得ます。また交互に繰り返すことも。
正常な人ならリラックス状態の時に便意をもよおすものなんですよ。
外出先では全然感じなかったのに、家に帰るやいなや便意を感じることってありませんか?
それが、大事な局面にお腹が痛くなったりすることが常態化している場合は、
腸の状態が不調である可能性があります。
これは「過敏性腸症候群」といって、自律神経のバランスが乱れていると陥りやすいので、
この場合も入浴でゆっくりリラックスすることが肝心です。
『「過敏性腸症候群」の入浴法 ~腸脳相関に注目する~』 参照
お腹の血行を良くすることで腸の消化活動を正常化させること。
便秘にも下痢にもいえることで、入浴後には質の高い睡眠へと繋げたいところですね。
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『症状別の入浴法』