肝炎とは文字通り肝臓が炎症を起こすこと。
主な症状としては、倦怠感や食欲不振、吐き気、嘔吐などがあります。
原因はアルコールや薬物、糖尿病や自己免疫よるものもありますが、主にウイルスによる肝炎(ウイルス性肝炎)であることが大半とされています。
ウイルス性肝炎にはA型・B型・C型・D型・E型と5つの型があり、日本で多いのはB型とC型。
どちらのウイルスも血液を介して感染することが多く、注射の針を共有したりすることで起こると言われています。
ウイルスに感染すると、免疫細胞が反応してウイルスを攻撃することで炎症が起こります。
肝炎がふつうの炎症と違うのは、免疫機能がウイルスのみを直接攻撃するのではなく、ウイルスの住み着いている肝臓の細胞ごと一緒に破壊してしまうこと。
そのため肝炎を発症すると肝機能が低下しますし、体が疲れたように感じたりだるくなるのもそうした理由によるものです。
肝機能が疲弊している時の入浴については、肝臓に負担をかけないように気をつけなければいけません。
ちなみに肝炎は入浴で他人に移るようなことはありません。
◆入浴上の問題リスト◆
#1 自覚症状に乏しく、予防する行動がとれていない
#2 全身倦怠感や食欲不振、悪心などを伴う
#3 落ち着きがなく、いら立ちやすい
肝炎には急性肝炎と慢性肝炎があります。
急性肝炎の場合は基本的に安静療法となりますが、入浴においては負担がかからないようにしましょう。
治療薬を使用している場合は、治療薬の副作用がみられることがあります。医師の指示に従って入浴して下さい。
また、肝炎は肝硬変へ移行することもあるので、精神状態が不安定になりがちです。
精神的なケアも含めて入浴をしましょう。
◆入浴法◆
<入浴上の問題>#1 自覚症状に乏しく、予防する行動がとれていない
<入浴目標> 指示された治療計画に必要な自己管理ができる
肝臓は沈黙の臓器。自覚症状に注意していても分からないことが多いもの。
医師からの指示通りの生活を送りながら治療を続けなければなりません。
おそらく「規則正しい生活を送るように」と指導されると思われます。
例えば1日7~8時間の睡眠をしっかりとるようにするならば、就寝時間の1~2時間前に入浴するようにしましょう。
入浴によって体温は上昇しますが、入浴後に徐々に体温が下がる過程でヒトは眠たくなる習性があります。
また、肝機能が低下すると貧血を認めることがあります。入浴中にふらついたり転倒がないよう注意しましょう。
<入浴上の問題>#2 全身倦怠感や食欲不振、悪心などを伴う
<入浴目標> 負担をかけない
肝炎には、全身倦怠感や食欲不振、悪心などを伴う場合があります。
そのため、入浴の際には負担がかからないように心がけましょう。
お湯の温度は38~40℃のややぬるま湯でじゅうぶん。
少なくとも42℃以上にもなれば血圧も上がりますから、熱い湯は厳禁です。
全身浴は水圧が強くかかりますから、負担を軽くするために半身浴でも良いでしょう。
入浴時間も5~10分間。余裕があっても20分間までにしておきましょう。
意外と入浴もエネルギーを消費します。
体が温まったら、風呂上りの直前に足に冷水シャワーをかけると、より血流が良くなりますよ。
運動直後の入浴は控えましょう。
運動ですでにエネルギーを消費しているわけですから、すぐに入浴するとさらに体力を消耗してしまいます。
そのため、運動後は1時間空けるのが良いとされています。
かいた汗を流したい気持ちは分かりますが、どうしてもという場合はシャワーで済ませましょう。
食後すぐの入浴も良くありません。
食事をすると、食べた物を消化・吸収するために胃腸の働きが活発になります。
この間は胃腸周りに血液が集まっているところ。
栄養を吸収・代謝している肝臓も例外ではありません。
特に肝臓は大量の血液を必要とします。
食後すぐに入浴すると胃腸や肝臓に集まっていた血液が全身に拡散してしまい、
これら消化器官に負担がかかってしまいます。
食後は1~2時間空けてから入浴することが望まれます。
なお、急性肝炎を起こしている時は倦怠感や食欲不振でかなり肝臓に疲労を感じているはずです。
肝機能も低下しているかもしれません。
このような状況で無理をして入浴をすると、疲れを助長してしまいます。
数日待って、症状が緩和してから医師と相談のうえ、入浴するようにしましょう。
<入浴上の問題>#3 落ち着きがなく、いら立ちやすい
<入浴目標> 心理状態が安定する
慢性肝炎になると、肝細胞が破壊と再生を繰り返すうちに線維化して肝硬変に移行する場合もあります。
治療や予後について不安になるのも無理はありません。
家族や周囲の人から理解や協力が得られないこともあるかもしれません。医師や看護師に相談できるといいですね。
せめて入浴タイムは不安を和らげるための時間にしましょう。
◆おすすめのアロマバス◆
アロマバスは精油の成分が経皮吸収され、やがては肝臓にまで達します。
肝炎の場合、肝臓に負担をかけてはいけないわけですから、使用する精油の成分には注意を払わなければなりません。
特に肝臓に対して毒性のあるフェノール類・フェノールエーテル類を成分に含む精油は使用しない方が良いでしょう。これらの成分を含んでいる主な精油は、オレガノ、クローブ、タイム、バジル、フェンネルなど・・・
反対に解毒作用を高めてくれる精油もあって、その代表がローズマリー・ベルベノン。
飲み過ぎた時に使用されるほど肝臓強壮に働く精油です。
アロマバスにはこのローズマリー・ベルベノンを単体で使用するか、好きな香りの精油を用いる場合にもローズマリー・ベルベノンをブレンドする方が良いでしょう。
アロマバスの例
★肝炎の入浴ケアに
天然塩 大さじ1
ローズマリー・ベルベノン 2~4滴
※妊娠中・授乳中・乳幼児の使用は控えましょう
★イライラしやすい、または不安になりがちな場合
天然塩 大さじ1
ローズマリー・ベルベノン 2滴
ベルガモット 3滴
(ベルガモットは肝臓のうっ滞を解消して気持ちを楽にしてくれる働きがある。気分が高まっている時は落ち着かせ、気分が沈んでいる時は気持ちを明るく高めてくれるので、ベルガモットはうつ病にも効果があると言われている)
※妊娠中・授乳中・乳幼児の使用は控えましょう。ベルガモットは光毒性があります。
(最終更新日:2017/04/12)
関連記事
『症状別の入浴法』