交感神経による伝達物質ノルアドレナリンは、心拍数や呼吸数の増加や血圧の上昇などに深く関係していて、免疫システムにおいては顆粒球を活性化し、私たちの体を守る上できわめて重要な働きをしています。
ただし、この傾向が過剰になると炎症性の疾患(炎症性自己免疫疾患・動脈硬化・癌など)の原因にもなるということが分かっています。
その理由は前回と前々回にお話しした通りです。
『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑦「自律神経のバランス」との関係(前編)』 参照
『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑧「自律神経のバランス」との関係(後編)』 参照
ではここで問題。
上記のような状況は、免疫力が高すぎるのか、それとも低いのか?
どちらだと思いますか?
実は同じようなことを、このテーマの第1回で触れています。
免疫力は高ければ高いほど良さそうなものだが、
免疫力が高すぎると免疫細胞が過剰な反応をしたり(アレルギー反応)、暴走したり(自己免疫反応)するという考え方が存在するという。
だから免疫力は高すぎても低すぎてもダメだというわけです。
『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?① 「高める」との違いは? 』 参照
この考え方が正しいとすると、先の例(交感神経が過剰に働いて自己免疫疾患などを起こす場合)では、免疫力が高すぎたということになりますよね。
果たしてそんな考え方で正しいのか?
実はこの考え方には落とし穴があります。
「交感神経が過剰に働くと免疫力が高くなりすぎる」と考えてしまうのは、顆粒球の視点に立った見方をしているからなんですね。
でもリンパ球の視点から見れば話は別。
交感神経が優位な状態では「顆粒球>リンパ球」の関係ですから、リンパ球はむしろ抑制されています。
顆粒球もリンパ球も免疫細胞なので、交感神経によって免疫力が高くなりすぎるという考え方には合致しません。
ストレスは敵?
交感神経が優位な状態とは戦闘モード、つまり緊張や不安な状態であり、これは相当に強いストレスを受けていることを意味します。
「ストレスは体に悪い」というのは常識ともいえる認識ですが、
実はストレス自体は体に良いと考えることができるんですよ。
例えば適度な運動は体に良いですよね。
運動は交感神経を刺激しますからストレスがかかっているはずなんですよ。おかしいですね。
思い出して欲しいのは、交感神経が優位な状況では、顆粒球が前線で活発に働くと共にリンパ球はリンパ節で待機する傾向があるということ。
なぜリンパ球がリンパ節で待機するのかというと、抗原提示細胞がリンパ節まで持ち帰って来る「病原体の情報を受け取る」ため。
リンパ節はリンパ球の基地みたいなもの。
そこに集まった情報を元に抗体を作ったり各免疫細胞たちに指令を出すためにはリンパ節で待機した方が効率良いわけです、リンパ球にとっては・・・
つまり、ストレス下でのリンパ球は休んでいるわけではありません。
リンパ節でスタンバイしているのであり、これは考えようによっては理に適っていることだと考えられます。
問題なのはストレスが慢性化すること。
ずっと交感神経優位な状態が続くと、つまりストレス負荷がかかりっぱなしになるとリンパ球は待機しぱなっし。
ひたすら待機状態で本来の仕事ができません。
一方、顆粒球は働きっぱなし。しかもリンパ球からの適切な指令を受けることができず、これまた力が発揮できません。
こうして抵抗力がなくなってしまうわけですね。
と、いうことはストレスは免疫力を高めるのではなくて低下させてしまうと考えられませんか?
正確には「適度なストレスは免疫力を高め、過度なストレスは低下させる」ということができます。
先程の運動に例でいえば「適度な運動は体に良くて、過度な運動は体に悪い」ということ。
「ストレスの溜め込みは免疫力を下げる」というのは本当のようです。
「病は気から」と言われるのも、これで説明がつきますね。
(SHIBA)
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