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【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑧「自律神経のバランス」との関係(後編)


免疫力バランスに影響を与える要素として、自律神経のバランスがあります。

「交感神経が優位だと顆粒球が増え、副交感神経が優位だとリンパ球が増える」
という理論が有力です。

それを裏付けるものとして、夜行性マウスの好中球が昼と夜では活性度が違うという研究報告があります。



夜行性マウスでの好中球の実験が意味すること


どういうことか言いますと、夜行性のマウスは夜が活発な時間帯ですよね。
つまり夜間は交感神経が優位な時間帯だということになります。
研究では顆粒球の代表である好中球の活動が夜間に活発だったということなので、交感神経と顆粒球に因果関係があると考えられています。

これを人間に置き換えると、交感神経優位な昼に顆粒球が活発化し、副交感神経優位な夜間に顆粒球の活性は下がることになります。

ここで「好中球が活性化される」とはどういう意味かということですが、
好中球はふだんは血管内をパトロールしていて、臨戦態勢になると血管から組織へ飛び出して外敵に備えます。

この時に、好中球を呼び寄せるのが戦場となる組織細胞から放出されるケモカインでしたね。

『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?⑥「Th17」と「Treg」の関係 』 参照


実はこの組織細胞へ達している交感神経の末端から放出されているノルアドレナリンによって、細胞が刺激を受けケモカインを放出しているようなのです。

つまり、交感神経が好中球に直接作用しているのではなく、好中球が活性化される環境を作り出していると考えられるわけですね。


さて。一方リンパ球は?と言いますと、

これまた交感神経がリンパ球に影響を及ぼすことが分かっています。

リンパ球は血管とリンパ管を循環していますが、基本的にはリンパ節と呼ばれる器官に多く存在します。

『【美容】 リンパを知る② リンパって何?』 参照


例えばリンパ球であるT細胞には、交感神経の末端から分泌されるノルアドレナリンを受けるアドレナリン受容体を持っていて、この刺激にはリンパ節から出ないで待機するようになる作用があります。


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リンパ節はいわば、リンパ球の基地みたいなもの。
樹状細胞ら抗原提示細胞は、病原体の情報をリンパ節まで運んで、リンパ球の司令官であるヘルパーT細胞に知らせます。
そのためヘルパーT細胞は最前線で戦っている好中球らを突破してくる病原体に備えて、リンパ節で抗原提示細胞らの情報を待っているんですね。

交感神経優位によりリンパ球が減少するというのは、血液におけるリンパ球が減少しているという意味です(実際はリンパ節に集結している)

これが「顆粒球が増加するとリンパ球が減少し、顆粒球が減少するとリンパ球が増加する」と言われるシーソーのような関係の真実です。

昼のリンパ球は、リンパ節で待機しているために血液中のリンパ球が少ないのであり、リンパ球の総数が減っているとはいえない可能性もありますよね。

なので、昼(交感神経優位)の場合、正確には数が「顆粒球>リンパ球」なのではなく活性度が「顆粒球>リンパ球」だと考える方が良い気がします。


まとめると

「交感神経が優位だと顆粒球が増え、副交感神経が優位だとリンパ球が増える」

ではなく

「交感神経が優位だと顆粒球が活性化し、副交感神経が優位だとリンパ球が活性化する」

という解釈ができます。


(SHIBA)


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