これまで「免疫力のバランス」とはどういうことなのかを考察してきましたが、
考えれば考えるほど複雑でありながらしかし、ヒトの体って上手にできているものだなぁと感心させられます。
ところで、免疫力のバランスに大きく影響するものは何か?と問われれば、
それはおそらく自律神経であろうと思われます。
自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが、免疫と大きく関係しているものと考えられています。
とはいえ、その「自律神経のバランス」というものを理解することもまた厄介なもの。
というのは、何か体調が悪いと「自律神経のバランスが乱れているから」と言えば片付けられることも多いほど、いろんな症状に関係しているからです。
なんとも曖昧で便利な表現ですね。
「自律神経のバランス」とは
自律神経とは意思とは無関係に働いている神経で、心拍や呼吸、消化や排泄などの機能を調節しています。
交感神経の末端からはノルアドレナリンが分泌され、心拍数や呼吸数の増加、血圧の上昇、消化機能の抑制に作用します。
副交感神経の末端からはアセチルコリンが分泌され、交感神経とは逆に心拍と呼吸を抑え、血管の拡張、消化機能の促進に作用します。
交感神経と副交感神経の働きは正反対なので、
自律神経のバランスとは「交感神経と副交感神経のどちらが優位に働くか」を意味します。
簡単にいうと
交感神経 ・・・戦闘(緊張モード)
副交感神経・・・休息(リラックスモード)
だとイメージすれば理解しやすいです。
日中、仕事をしている時は比較的交感神経が優位な時間帯で、仕事が終わって休んでいる時が副交感神経優位だと言えますね。
なので仕事などでストレス下にある状況では交感神経が刺激されています。
よく「ストレスは万病の元」と言いますよね。
あれはストレスが免疫力を下げるからだと考えられています。
と、こう書くと「では、交感神経は免疫力を下げるのか?」という意味に解釈できるのではないかと思いますよね?
「ストレスが免疫力を下げる」と考えられる理由とは・・・
それが理解できると自律神経と免疫力の関係が見えてきそうです。
白血球と自律神経の関係
これまで何度も話題に取り上げた好中球にしろT細胞にしろ、これら免疫細胞たちの主体は白血球です。
白血球は「顆粒球」「リンパ球」「単球(マクロファージ)」に大別できます。
なかでも多いのは顆粒球で、白血球全体の5~6割を占めています。
しかも顆粒球には好中球・好酸球・好塩基球の3種類がありますが、その殆どは好中球です。
なので、血液検査などで「白血球が多いですね」と言われたら、それは好中球が多いんだなと思って構いません。
自律神経と大きく関係していると考えられているのが顆粒球とリンパ球。
特に有力な説は「交感神経が優位だと顆粒球が増え、副交感神経が優位だとリンパ球が増える」というもの。
まあ説というより理論ですね。
顆粒球、といっても殆ど好中球ですが、この好中球は細菌を貪食し分解、つまり殺菌してくれる働きをします。
ただし、その時に活性酸素を武器にするのでどうしても外にも放出してしまうんですが、これが炎症の原因になるんですね。
殺菌してくれるのはありがたいけれど、過剰に働くとその分炎症反応を起こしやすいという側面があるんです。
これが炎症性の自己免疫疾患や動脈硬化の原因になります。
好中球が放出する活性酸素によって血管の壁が傷つけられると、傷口にかさ蓋ができます。
そこに血管内を流れている脂肪やコレステロールなどが付着して動脈硬化へ発展すると考えられています(もちろん他にもいろいろ理由はある)
よく「交感神経が優位になると血圧が上昇するから動脈硬化になりやすい」と言われていますが、免疫の働きによっても説明がつきますね。
さらには癌の原因にもなります。
癌化した細胞を叩いてくれるはずの細胞障害性T細胞やNK細胞はどちらもリンパ球ですが、顆粒球が増えてリンパ球が減っている状態では癌化した細胞の増殖を許してしまうと考えられているんですね。
では副交感神経を優位にして、つまりリラックス状態に浸ってリンパ球を増やせば良いのか?というとそんなに単純ではない。
リンパ球が増え過ぎると、細胞障害性T細胞やNK細胞が活性化されて、感染した細胞や癌化した細胞を処理してくれるのはありがたいけれど、過剰に働くとその分正常な自己細胞をも傷つけてしまう側面があるんです。
また、ヘルパーT細胞のTh2が過剰に働くとアレルギー症状を起こすのはもう説明不要でしょう。
ここまでの話は
『【健康】 「免疫力のバランス」とはどういう意味?② 「顆粒球」と「リンパ球」のバランス説』 参照
と重なるので難しくはないと思います。
問題は「なぜ交感神経が優位になると顆粒球が活発化し、副交感神経が優位になるとリンパ球が活発化するのか?」
ですね・・・
(SHIBA)
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