夏になるとよく耳にする言葉に「いい汗」と「悪い汗」があります。
「いい汗をかこう!」とか「悪い汗をいい汗に変える方法」とか言われますが、いい汗と悪い汗の違いを意識したことってありますか?
◆「いい汗」とは
一般に「いい汗」と呼ばれている汗は
・痩せる汗
・夏バテ予防、熱中症予防になる汗
・体臭予防になる汗
などと形容されています。
具体的には
<いい汗の特徴>
・無色無臭
・サラサラとして汗の粒が小さく蒸発しやすい
・弱酸性
ヒトは体が熱いと感じると、体熱を放散するために交感神経が刺激されエクリン汗腺から発汗します。
汗の成分は皮膚血管の血液から作り出されていますが、この成分には水分以外にもナトリウムなど体に必要な成分も含まれていますが、汗として排出される前に体に必要な分は再吸収される構造になっています。
なのでこのエクリン汗腺から出る汗の成分は、約99%が水であり、基本的に無色無臭です。
エクリン汗腺は体中に無数に分布しているのでひとつひとつの粒が小さくて蒸発しやすく、かいた汗が蒸発するときに皮膚の温度を奪っていくので(気化熱という)、体温が下がり調節されます。
健康な肌は弱酸性に保たれています。これはエクリン汗腺からの汗と皮脂腺から分泌される皮脂とが混ざり弱酸性となるからで、このおかげで細菌やカビから守られており、天然の美容液とも言われます。
◆「悪い汗」とは
反対に、悪い汗とは
<悪い汗の特徴>
・しょっぱい
・ベタベタとして大粒で蒸発しにくい
・弱アルカリ性
いい汗と真逆ですね。
ふだんから汗をかく習慣がないと、汗腺機能が徐々に衰えていきます。
働いている汗腺を「能動汗腺」といいますが、汗をかく習慣がないと能動汗腺の数が減少し、その分ひとつひとつの汗腺から出る汗の量が多くなってしまいます。
そのために汗の粒は大粒となり、ナトリウムなどのミネラル類も多く含みます。必要なミネラル類は汗として排出される前に再吸収されるとはいえ、その量に限界があるために多く流れ出るようです。
そういう訳で汗はベタベタと大粒でしょっぱく成分としては弱アルカリ性に傾きやすくなります。
弱アルカリ性になると肌に良くないのは、有害な菌が繁殖しやすいから(有害な菌はアルカリ性の環境を好む)
菌が汗の成分を分解し繁殖することで臭いが発生し、これが体臭の元となります。
◆本質的には汗に「いい」も「悪い」もない
本当に悪いのは「汗をかかないこと」であって「汗」そのものではありません。
悪い汗と呼ばれる汗だって、本当は意味があってかいているのであって、発汗には全て目的と理由があるものです。
発汗はなにも体温調節のみに作用するものではなくて、例えば緊張や不安、ストレスによっても起こります。
このような交感神経が優位になる状況下では、体温の上昇とは関係なく汗をかきます。
面接やスピーチ、怖い時、好きな人を前にした時、モスバーガーで「マックシェイク下さい」と言ってしまった時とか・・・
この場合の発汗は「精神性発汗」といい、体温調節のための発汗とは違い、手足から汗が出始めます。
これは戦闘時や逃避行動の際に、滑ることがないよう手足を湿らせておくという目的があって発汗するそうです。
よく「手に汗握る」と言いますよね。これはそういう意味だそうですよ。
◆悪い汗の改善方法
繰り返しになりますが、「悪い汗」と呼ばれる発汗は「汗をかかない習慣」によって起こるので、本当に悪いのは「汗をかかない習慣」です。
なので「いい汗」と言われる汗に変えるには「汗をかく習慣」を身に付けることです。
冷房に頼ってばかりいる人なら頼り過ぎないようにするとか、運動不足の人なら運動をする。それも有酸素運動。
体を冷やすことも原因となりますので、冷たい飲み物は常温にしてみるとか。
入浴も有効な手段となります。
特に半身浴。40℃以下のぬるめのお湯に20~30分間、じっくり汗をかくと効果が期待できます。
また、汗腺機能を鍛える入浴法として「手足高温浴」があります。
手足高温浴とは、43~44℃の高温のお湯が腰のあたりまで少なめに張られた浴槽に、両手の肘から先と下半身だけ浸す入浴法です。
パッと見、土下座をしているような姿勢になります。
時間にして10~15分間。全身の汗腺が働き、かなりの発汗量になると思います。
手足以外がお湯に浸かっていないのは、熱すぎるからというのもありますが、本来の目的はかいた汗を蒸発させるため。
かいた汗が蒸発することで気化熱を奪って皮膚温が低下し体温が調節されますが、ここまでが本来の汗腺機能の役目ですからね。そこまでしっかり働かせること。お湯が高温であるにもかかわらず10~15分間ものぼせることなく入っていられるのは、手足以外がお湯に浸かっていないためにかいた汗が蒸発できるから。
かくべき時にしっかり汗をかく。
これができるようなれば、「悪い汗」と呼ばれる汗は「いい汗」へと変わります。
そういうわけで本質的には「汗」にいいも悪いもないはずで、本当に悪いのは「汗をかかない」ことであり、もし「汗」そのものに「悪い汗」というものがあるとすれば、多汗症による必要以上の汗やワキガでしょうか。
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