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【健康】 お風呂に入ると赤いブツブツができるのは蕁麻疹?それとも・・・


お風呂に入ると赤いブツブツができてビックリすることがあるかもしれません。

血行が良くなって肌が赤くなっているだけなら気になりませんが、痒みを伴うとそうもいきませんよね。

入浴中、あるいは入浴後に症状が出るようなら、それは蕁麻疹かもしれませんよ。
よく似た症状にあせも(汗疹)がありますがあせもは急に発疹することはありません。

蕁麻疹にもいろいろなタイプがありますが、お風呂で起こる蕁麻疹であれば「温熱蕁麻疹」「コリン性蕁麻疹」の可能性が高いです。

もちろん、他にも考えられるタイプはいくつもあるので、順番にその原因と対処法を考えてみましょう。

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1.温熱蕁麻疹


寒い所から温かい所へ移動したときの温暖差に反応して発症するのが温熱蕁麻疹
皮膚の温度が上がることによってヒスタミンが分泌されて蕁麻疹になると考えられています。

ヒスタミンには血管拡張と血管透過性を亢進する作用があります。プクっと膨れたり赤くなるのはそのためです。痒みはヒスタミンが神経を刺激することによります。

アレルギーの原因は何か特定の物質(アレルゲン)によるものではなく、物理的な反応(この場合は「熱」)によって引き起こされるということも特徴です。

温熱蕁麻疹がみられる皮膚部分の温度は40~50℃くらいになるので、入浴や運動の他、暖房器具によって温められた場合にも起こりやすいとされ、入浴による温熱蕁麻疹の予防法は熱いお風呂には入らないことです。

もし入浴中に温熱蕁麻疹が起こったら、冷水をかけるか冷たいタオルを当てて冷やすと良いでしょう。
間違っても痒いからといってかいてはいけません。より悪化します。

風呂上りには軟膏を塗るなどの保湿ケアも有効です(温熱蕁麻疹になりやすい人は乾燥肌や敏感肌である可能性が高いため)



2.コリン性蕁麻疹


発汗に反応して発症するのがコリン性蕁麻疹
運動や温熱の刺激によって汗腺支配交感神経からアセチルコリンが分泌されて蕁麻疹になると考えられています。
この場合のアレルゲンはアセチルコリンです(アセチルコリンはヒスタミンの作用を増強させる働きがある)


ここで少し話は脱線しますが、

 ■ 交感神経・・・ノルアドレナリンを放出
 ■ 副交感神経・・・アセチルコリンを放出


であるのが通常の自律神経ですが、体熱を下げるための発汗を司るエクリン汗腺を支配している交感神経は、一般の交感神経と異なり、ほとんどがアセチルコリンを放出するコリン作動性神経です。

 ■ エクリン汗腺支配交感神経・・・アセチルコリン放出


ところで、コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は原因が違うといってもそれだけでは自分では判断できませんよね。

症状の特徴で判断する場合、コリン性蕁麻疹の場合は「皮膚の温度は関係ない」ということが言えます(温熱蕁麻疹であれば発症している皮膚の温度は40~50℃)

または発症の持続時間が温熱蕁麻疹よりも短くて「通常は30分以内で消える」ことなどが挙げられます。

とはいっても素人が自分で区別するのは難しいでしょうし、また温熱蕁麻疹からコリン性蕁麻疹を合併することもあるでしょう。

ただ、赤いブツブツが何日も続くようであれば、それはどちらの蕁麻疹でもなく、あせも(汗疹)など他の疾患である可能性が高いです(しかもあせもは局所にあらわれるのに対し、蕁麻疹は広範囲にわたることもある)


さて、

コリン性蕁麻疹は発汗した汗に反応するといいましたが、中にはスムーズに汗がかけないために排出されるべき汗が汗管内に貯留し、それが刺激の原因となり発症するコリン性蕁麻疹もあります。
これを「減汗性コリン性蕁麻疹」といって区別することもあります。

コリン性蕁麻疹および減汗性コリン性蕁麻疹の詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、個人的な見解で申し上げますが、実はどちらも同じものと考えています。

もともと普段から汗をかかない人や一種の発汗障害のある人は汗腺機能が衰えています。
汗腺細胞には発汗の指令であるアセチルコリンを受ける受容体があるわけですが、この受容体が機能しないために結合できなかった過剰のアセチルコリンが肥満細胞(マスト細胞)を刺激し、ヒスタミンの放出を招いているという考え方が存在します。

そう考えると、汗をかいているようにみえても実は一部あるいは大部分のエクリン汗腺において汗をかけず、それが蕁麻疹の原因となっている。
つまり、発汗によるコリン性蕁麻疹だと思われる蕁麻疹も本当はすべて減汗性コリン性蕁麻疹である可能性はないでしょうか。

要は「汗」が問題なのではなくて「汗腺機能の低下」(正確には汗腺細胞のアセチルコリン受容体の機能低下)が問題。

※正確には「ムスカリン受容体」というが、ここでは分りやすく「アセチルコリン受容体」と表現します。

コリン性蕁麻疹のアレルゲンがアセチルコリンであることからもそう考えるのが自然です。


コリン性蕁麻疹に抗ヒスタミン薬が効きにくいことがあるようですが、これはいくらヒスタミンを抑えても元凶である汗腺機能の低下が解消されない以上、受容体と結合できないアセチルコリンが存在する限り問題解決とはならないからかもしれません。

汗をかきやすい夏に悪化するイメージのあるコリン性蕁麻疹ですが、実はその逆で汗のかきにくい冬に悪化しやすいという事実があることからも合点がいきます。

さらに、コリン性蕁麻疹患者の体験談によると、入浴によって襲われる痒みやチクチク感を耐え抜いてしっかり汗をかいた後しばらくは、清々しいほど楽になるというではありませんか。

これはしっかり発汗することで汗腺機能が働き、アセチルコリンが受容体と結合できたからだとも考えられます。


そういうわけで、コリン性蕁麻疹の対処法としては、

「汗をかかないようにする」ではなく、むしろ「積極的に汗をかくようにする」ことだといえます。

入浴においてはこの状況で敢えて汗をかこうとするのは試練ですが、我慢を通り越したその先には開放感が待っているそうですよ(笑)

どうしても我慢ができない時は冷たいシャワーを当てるなりして脳から発汗指令が出るのを抑えましょう。


よくネットでは「交感神経」に注目して「精神的ストレスや緊張がコリン性蕁麻疹の原因となる」と書かれている場合がありますが、ストレスや緊張によって刺激される交感神経は殆どがアドレナリン作動性神経であり、アセチルコリンは放出しません
緊張によって発汗する精神性発汗アポクリン汗腺から分泌される汗であり、体温を下げるためのエクリン汗腺とは違います。
精神的ストレスで蕁麻疹を発症することもありますが、それはコリン正蕁麻疹とは別の蕁麻疹ではないかという気がしています。
アセチルコリンではなくノルアドレナリンが関係しているのであれば「アドレナリン性蕁麻疹」とでも呼んで区別するべきでしょうね。

また、「アセチルコリン」に注目して「お湯に浸かってリラックスすることがコリン性蕁麻疹の原因となる」と書かれてある場合もありますが、リラックスすることで刺激されるのは副交感神経であり、エクリン汗腺を支配する交感神経とは関係ありません。
副交感神経からアセチルコリンが放出されるのは間違いありませんが、コリン性蕁麻疹に影響しているアセチルコリンは汗腺支配交感神経から放出されたものであることを踏まえれば、副交感神経が放出するアセチルコリンは無関係であることが分かるかと思います。

同様の理由から「アセチルコリンを含む食べ物を控えた方が良い」という意見も疑問ですね(原因が汗腺機能の低下にあるとするならば)

ちょっとややこしいですね・・・



3.その他


温熱蕁麻疹でもコリン性蕁麻疹でもなく、お湯そのものがアレルギーとなっている場合もありえます。

浴槽に浸からなくてもシャワーで反応するならお湯が原因である可能性が考えられますね(極端な話「水」でも蕁麻疹の原因になることもある)

皮膚が弱い人、特に乾燥肌敏感肌の人はお湯そのものが刺激となりますので、一番風呂は避けた方が良いでしょう

体をゴシゴシ洗うことも刺激になりますので注意しましょう。

また、入浴剤の成分がアレルゲンとなることもあるでしょう。

入浴後しばらくしてから蕁麻疹が発症した場合は、時間的に体を拭いたタオル、若しくは体を拭くという行為が原因かもしれません。



このように原因はいくらでも考えられるのが蕁麻疹の特徴でもあります。

一度きりであれば気にする必要ありませんが、入浴のたびに繰り返すようなら皮膚科の受診をお勧めします。