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映画レビュー『くちづけ』

どうもSHIBAです。
 
当館では今月から3か月に渡って障がい者を描いた映画を1作品ずつ上映します。
 
第1弾となる今月は知的障害がテーマの『くちづけ』
 
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(あらすじ)
 
知的障害を持つ娘のマコ(貫地谷しほり)を、男手ひとつで育てる愛情いっぽん(竹中直人)は、かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年がたっている。知的障害者のためのグループホーム「ひまわり荘」で住み込みで働き始めたいっぽんと、そこで出会ったうーやん(宅間孝行)に心を開くようになったマコ。しかしそんなある日、いっぽんに病気が見つかる(Yahoo映画より)
 

主演は竹中直人さんと貫地谷しほりさん。
 
知的障がい者が集まるグループホームを舞台に、障がいを持つ親の苦悩を通して知的障がい者を取り巻く様々な社会問題を提起しています。
 
と、こう書くと「なんだお堅い物語か」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
逆にこれは喜劇かと思わせるくらい笑わせてくれるので、自然と魅入ってしまいます。
 
障がいを描いた作品として『くちづけ』を選んだ理由は、
障がいというとてもデリケートなテーマを扱った作品にもかかわらず、
障がい者に対する偏った描き方をしていない点です。
 
「2○テレビ」など障がい者を取り上げるドキュメントやドラマでは、度々視聴者の反感を買うことがありますよね。
あれは作品に制作側の思いのバイアスがかかり過ぎているからです。

障がい者に対する偏見はいけないと視聴者に訴えながらも、障がい者を「可哀想な人」として描かれているのも制作側の偏見ではないだろうか?
 
紹介される障がい者は頑張っている人が多く、その障害を克服しようと頑張っている姿を描くことで感動を誘っているようにも見えます。

しかし実際には障害を受け入れられないでいる人、頑張れない人も多い。
 
障がい者に対する認識不足な視聴者には感情で訴えるのが一番良い方法であり、視聴率とう観点からも「お涙頂戴」の演出をするのは仕方がないのかもしれません。

しかし、そのようなテレビの事情によって「障がい者は頑張っている人」または「頑張らなければいけない人」であるかのような誤解を生んではいないでしょうか?
 
現実はそんな単純ではありません。
 
『くちづけ』は、障がい者を好意的に描きながらも美化はしていません。
美化するというのは、それはやはり健常者側からの視点ですからね。
グループホームを舞台に描くことで、観る者が障がいを特別のことではなく個性にすら思えるように作り込まれている工夫が感じられます。
なんだか自然なんですよ。
「障がい者に対して社会はこうあるべき」というような主張もありません。
 

ネタバレになるので詳しいことは言えませんがハッピーエンドとは言えない結果が待ち受けています。
というか悲劇です。
 
前半がコメディタッチで楽しい物語だっただけにその悲しみも大きい。
 
そんな結末に賛否両論を呼んだ作品ですが、「障がいを克服して感動を誘う」という美談にしなかったという点で勇気がある作品だと感じました。
 
「障がいに対してしっかり向き合って頑張る」ということができない障がい者も多いという現実を描くことで、障害者問題に対して先入観なく客観的に考えることができるのではないでしょうか。
 
泣いて笑って、最後には考えさせられて・・・とにかくお勧めの作品です。
 
当館では今月の偶数日が上映日です。
 

http://urx3.nu/rMAO
2月上映スケジュールカレンダー
 
(SHIBA)