一般の健診で血糖値が正常でも侮れないのがグルコーススパイク(血糖値スパイク)だと言われています。
グルコーススパイクとは、食後に血糖値が急上昇して、空腹時血糖値と食後血糖値の差が大きくなる状態のこと。
健康診断の血糖値は空腹時血糖値なので、いくらこれが正常値でも安心できるわけではありません。
空腹時血糖値は正常値なのに、食後血糖値が異常に高い人のことを「かくれ糖尿病」とも呼ばれます。
◆グルコーススパイク(血糖値スパイク)の何が問題?
糖質(または炭水化物)を摂取すると体内で消化され、ブドウ糖(グルコース)にまで分解され血中に流れます。
血液中のブドウ糖のことを血糖といい、食後はブドウ糖の血中濃度が高くなるので血糖値が上がります。
やがて血糖値を下げるためのホルモンであるインスリンが分泌され、ブドウ糖は体中の各細胞に取り込み、エネルギーとして利用されることになります。必要以上のブドウ糖は体脂肪として蓄えられていきます。
すると今度は、このインスリンの働きによって血糖値が下がり、血糖値は正常値へ戻ります。
この一連の流れは誰しも食後に起こる生理現象ですが、一度に糖質(または炭水化物)を摂り過ぎると急激に血糖値が上がります。
この状態をグルコーススパイクといい、境界型糖尿病(糖尿病予備軍または軽い糖尿病)にみられる特徴です。
境界型糖尿病では、インスリンの分泌が不足し始めているか、効きが弱くなり始めている可能性が高いと考えられます。
そのため食後の血糖値上昇をなかなか抑えられず高くなりがちになったり、高い状態が続いたりするようです。
そもそも血糖値が急激に上がることの何がいけないのか?・・・まずはそれを知らなければなりません。
<グルコーススパイクの問題点>
・血糖値が高いとブドウ糖が血管を傷つける
・インスリンが大量に分泌されるので血糖値が急降下し、今度は下がり過ぎて低血糖になる場合がある
・このような生活が続くと、すい臓がインスリンの分泌に疲れてそのうちインスリンの分泌がされなくなったり効きが弱くなったりして糖尿病になる
怖いのは糖尿病だけではありません。血管が傷つくわけですから動脈硬化のリスクだって高くなりますし、むしろ怖いのは動脈硬化によって突然死の原因となる脳卒中(脳出血や脳梗塞など)や急性心疾患(心筋梗塞など)です。
最近ではがんや認知症も糖尿病の合併症として認知されてきています。
『【健康】 糖尿病最新事情(前編) がん細胞の増殖も合併症?』 参照
◆こんな人は要注意!
このように急激な血糖値上昇は不調のもとになるわけですが、
グルコーススパイクに注意しなければならないよう要素は以下の通りになるそうです。
・加齢 ・・・ 加齢と共にリスク上昇
・BMI値 ・・・ 肥満な人ほどリスク上昇
・遺伝 ・・・ 親や兄弟に糖尿病患者がいるほどリスク上昇
・血圧 ・・・ 高血圧ほどリスク上昇
・喫煙習慣 ・・・ 吸う本数が多いほどリスク上昇
・運動習慣 ・・・ 運動不足ほどリスク上昇
また、朝食抜きダイエットをしている人もグルコーススパイクに要注意だとか・・・
食事をするたびに血糖値が上がりインスリンが分泌されるなら、一食(朝食)を抜くことで負担は軽くなり血糖値が下がりそうな気がするかもしれません。
しかし、ヒトの血糖値は常に一定に保たれる性質があるので、朝食を抜いて血糖値が下がりそうなときは血糖値を上げるホルモン(グルカゴンなど)が働いています。
そんな状態のまま昼食をとると、普段以上に血糖値が上がってしまいます。
これこそがグルコーススパイクに注意しなければならない理由です。
◆グルコーススパイク(血糖値スパイク)を回避する食べ方
一番簡単なのは摂取する糖質(または炭水化物)の量を制限することですが、それができるなら苦労はしませんよね。
同じ食事量でも血糖値の上がり方に変化をもたらす方法としては、食べる順番が有名です。
一度は聞いたことがあるとは思いますが、米やパン、麺類といった炭水化物のものを先に食べるより、野菜など食物繊維を含むものから先に食べる方が血糖値の上がり方は緩やかになります。
ちなみにタンパク質や脂質は血糖値に影響しませんので食べる順番は
1.野菜
2.タンパク質・脂質
3.炭水化物
が理想的だと考えられています。
まあ、そんなことぐらいは承知されているとは思いますが、もうひとつ工夫できることとして低GI値の食品を取り入れることが挙げられます。
GI値とは、ブドウ糖の数値100を基準とし、食後の血糖値の上昇スピードを数値化したもので、同じ糖質を摂るにしてもGI値の低い食品をうまく食事や間食に取り入れることで血糖値の急激な上昇を抑えることができるというわけです。
例えば同じコメでも玄米は白米よりもGI値が低く、白米を玄米に変えるだけで血糖値の上がり方が少し緩やかになるはずです。
白米のGI値 : 85
玄米のGI値 : 56
同じ野菜でも芋類や豆類は比較的GI値は高めですが、きのこ類やナッツ類はGI値が低い食品として注目されています。
一般的に食物繊維を多く含む食品が好ましいでしょうね。海藻類も食物繊維が豊富です。
食物繊維以外では、長いもやオクラのようなネバネバ成分を含む食品も血糖値の急激な上昇を抑える作用があるので有効です。
長いもは決してGI値が低いとはいえませんが、ネバネバ成分を多く含むため逆に効果のある食品とされていて、GI値が全てでもない例だと言えます。
長いものGI値 : 65
オクラのGI値 : 28
また、果物もおすすめです。甘いイメージが強いのでGI値が高そうに思えるかもしれませんが、特にブドウ糖よりも果糖を多く含む果物のGI値は低めです(果糖は血糖値に影響しない)
りんごは果糖が多いのでGI値は低く、またカリウムやペクチン(食物繊維)も多く含まれているので優秀です。
果糖よりもブドウ糖の多いバナナは、リンゴと比べると若干GI値は高くなりますが、見た目のGI値以上に豊富な食物繊維や善玉菌のエサとなるオリゴ糖による恩恵が大きく、腸内環境を整える食品として優秀です(だからといって食べ過ぎはもちろんダメ)
りんごのGI値 : 39
バナナのGI値 : 55
意外なところで酢やオリーブオイルの使用も血糖値の上昇を抑える工夫です。
酢は体内でクエン酸となり糖質の代謝を活発化し、オリーブオイルのオレイン酸にはインスリンの分泌を助ける作用があります。
ダイエットのためといって野菜にノンオイルを使用する方が健康に良いとは限らないのです。
最後に、トクホ(特定保健用食品)にも指定された難消化性デキストリンも紹介しておきましょう。
難消化性デキストリンとは、消化しにくいデンプンのことで、水溶性食物繊維の一種とも言われています。
デンプンはブドウ糖がたくさん結合したものなので、デンプンは体内で消化されると通常はブドウ糖にまで分解されます。
ところが難消化性デキストリンはブドウ糖にまで分解されないので血糖値を上げることはありません。
『【美容】 ダイエットに注目度高い「レジスタントスターチ」と「難消化性デキストリン」』 参照
補足ですが、早食いをしないことも重要なポイントです。
噛まずに飲みこむほど血糖値は上がりやすく食べ過ぎも招きやすくなりますからね。
よく噛んで食べることや、少量を複数回に分けて食べることは、血糖値の急上昇から回避する良い方法です。
食べたい物を我慢ばかりするのはストレスにもなりますから、少しでも賢く食べていきたいものですね。
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